雑誌 健康教室 2023年1月号31-2
特集 医師がAnswerで助言! 最近きになる医学のQUESTIONS
ガングリオンを見てもらう診療科は
【高校の養護教諭の先生から寄せられたQuestion】
ガングリオンを診てもらうのは、整形外科ですか? 外科ですか? 皮膚科ですか?
A:整形外科です
解説
ガングリオンは関節や腱鞘から粘液(「滑液」というネバネバした液体)が漏れて線維性結合組織に溜まるもので(001)、若年から中年の女性に多く発症します。発生が関節や腱からなので、受診科は整形外科になります。まれに関節や腱鞘と関係なく、結合組織自体が粘液を作って膨らむことがありますが外からはわかりませんので、やはり整形外科を受診してください。
好発部位は手首が最多で、次に手の小関節になります(002)。
手を使う頻度と発生に関連はありません。症状はできた場所によります。通常は皮膚が膨れるくらいですが、腱を押せば運動制限を、神経を押せば痺れや筋力低下をきたします(003)。
出来上がったコブは丸いですし、大きくなったり小さくなったりしますので、袋があってその中に水が溜まってくると思うでしょう(私も医者になる前はそう思っていました)が、組織学上ちゃんとした袋があるのはまれで、ほとんどは袋のないところに液が漏れて溜まった形を取ります。
腫瘤の性状や発生部位から多くは容易に診断できますが、まれに癌や肉腫のことがありますので、手術後は顕微鏡で確定診断します。
治療は、自覚症状に乏しければ穿刺して粘液を吸い出します。一回の穿刺で消滅することもありますが多くは再発しますので、また穿刺吸引するか、手術をするか選択します。運動障害や痺れが出ている場合は手術による摘出術が勧められます(004)。
46歳女性、手背側手関節にできたガングリオンを示します。1年前に手関節のこぶに気づきました。大きさは大きくなったり小さくなったりしていました。指の動きに引っかかる感じがあったため手術を希望したものです。整形外科医の書いた手術記録を005に示します。ガングリオンは手関節伸筋腱伸筋支帯に茎を出して付着していました。大きさは直径1.5cmでした。顕微鏡では中心部は粘液を溜めた空洞で、その周囲は線維性結合組織でした(006)。46歳女性のガングリオンを007に示します。空洞が粘液を溜めている部分、周囲は線維性結合組織です。上皮はありません。
ガングリオンの手術はほとんどが局所麻酔で出来るため、日帰り手術となります。自覚症状があるなら整形外科を受診することをお勧めします。
旭川医療センター病理診断科
玉川進
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