231020最新救急事情(237)ユニバーサル蘇生終了ガイドラインを改良する

 
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最新救急事情

月刊消防 2023/02/01号 p70-1

蘇生の中止基準
231020最新救急事情(237)ユニバーサル蘇生終了ガイドラインを改良する
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最新事情

目次

はじめに

救急隊は轢断や死後硬直など明らかな死亡以外は患者を病院に運ばなければならない。日本の65歳以上の人口は絶対数としては2042年の3677万人がピークであり、人口の割合なら2065年の38.4%がピークとなる1)。当然のことながら心肺停止で発見される人はこれらのピークまでは増え続けるだろう。そこで、救命処置中止の判断である。
私はプレホスピタルケア2020年4月号でユニバーサル蘇生終了ガイドラインについて取り上げた。2021年に発表されたJRC蘇生ガイドライン2020でもこのガイドラインが取り上げられている2)ので、再び論じる。

蘇生中止基準

日本では、救急隊は一度蘇生術(CPR)を始めたら医師が死亡宣告するまではCPRを中止できない。それでは限られた資源の無駄遣いということで、アメリカなどでは国際蘇生中止基準(Univarsal Termination of Resuscitation, Universal TOR)を定めた。運用開始は2002年なのですでに20年以上経過している基準である。JRC蘇生ガイドラインによるとこのTORには二種類あって(表)、一次救命処置(Basic Life Support, BLS)対象のTORをユニバーサルTORと呼んでいる。

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蘇生中止基準2)
下記の全てを満たす場合に蘇生を中止する

A.一次救命処置(BLS*)対象**
(1)電気ショック適応のない心電図リズム
(2)救急隊員による目撃のない心停止
(3)現場での心拍再開がない

B.二次救命処置(ALS***)対象
BLSの3条件に加えて
(4)市民による目撃のない心停止
(5)バイスタンダーCPR****なし

*BLS:Basic Life Support
**このAの基準をUniversal Termination of Resuscitationと呼ぶ
***ALS:Advanced Life Support
****CPR:Cardiopulmonary resuscitation
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表を見ると、関係者に話を聞いてAEDをつけて胸骨圧迫をしていればこの基準に合致するかわかる。

特異度99.5%

2006年のユニバーサルTORの報告では、心停止患者1199例に対して感度(実際に死亡した人のうち、この基準に当てはまった症例の割合)は64.4%、特異度(生き残る人がこの基準に当てはまっていない割合)は99.5%と報告されている3)。この文献ではAED2分サイクルを最低3回、つまり6分以上の蘇生を行ったのちに確認している。他の文献を読んでも、6分以上の蘇生は行っている。

日本からの提案

どんな条件をつけても、例外は必ず出て来る。ユニバーサルTORについては、この基準を満たしても生き返る人が出て来ることを指す。生存するかもしれない人への蘇生を放棄するのは人道的によろしくないため、条件をいろいろ変えた論文が出ている。一例として、金沢大学の後藤由和(よしかず)先生のTORガイドラインを紹介する。そのガイドラインは5項目からなる。(1)最初に心電図で心静止(2)バイスタンダーの目撃のない卒倒(3)年齢81歳以上(4)救急隊の到着前にバイスタンダー心肺蘇生もしくは除細動がない(5)救急隊員による14分間の心配蘇生によっても自己心拍再開なし。これを日本のウツタインデータ、病院前心停止54万例に当てはめたところ、1ヶ月後までに死亡する特異度は99.2%, 陽性的中率PPVは99.7%であった。このガイドラインを現場に適応することができれば、病院への患者搬送は1割減少させることができるとも述べている。

精度を上げれば合致する症例が減る

後藤先生のTORガイドラインなら確かに精度が上がる。死亡が予想される症例は「間違いなく」と言い切れるほどの確率で死亡する。ただ、表に示したユニバーサルTORガイドラインより条件は厳しい。そのため条件に合致する患者数はかなり減ってしまう。内容を見ても、心電図でよく見る無脈性電気活動PEAだと範囲外だし、そもそも81歳を超えての目撃のない心停止なら、医者なら蘇生開始をためらうだろう。
いろいろ文献を読んでみたが、それぞれでTORガイドラインを定めていても厳格な運用を行っているところはなくて、結局は現場の判断のようだ。生死の予測は難しい、というのが本稿の結論である。

文献

1)内閣府 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_1_1.html
2)日本蘇生協議会:JRC蘇生ガイドライン2020. pp449-55
3)N Eng J Med 2006 Aug 3;335(5):478-87
4)J Cardiol 2019 Mar; 73(3):240-6

 

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