英語の文献を見ると、病院外難治性心停止という表現が出てくる。Refractory out of hosiptal cardiac arrestの訳で、定義は「10分以上の心肺蘇生もしくは3回以上の除細動が必要とする心停止」のことである。5年前の2018年に出た総説1)によれば、難治性心停止に対しては機械による心肺蘇生、対外式心肺蘇生法、標的温度管理、早期侵襲的治療を行う必要があるとしている。今回はこの総説に従って、何を行うべきか、5年間で進展はあったのか紹介したい。
Load and go
この総説が出たのは2018年である。前半の方で「パラダイムシフト」と称して、Stay and play(現場で何でも行う)からLoad and go(すぐ病院へ行く)への転換を勧めている。現場で粘って薬剤投与と除細動を繰り返すことはやめて、すぐ医療機関に行くことである。日本でも一時期は現場で何でも行う流れがあり、このことを戒めたものだろう。
患者に人工心肺を取り付けて蘇生を行うというもの。人工心肺なので、脳さえ大丈夫なら心臓がなくても肺がなくても生きていける。2021年12月20日発行のプレホスピタルケアで取り上げた時点では、生存率も神経学的に良好な患者の割合も高くなるとしていた。 2023年1月には世界最高の臨床医学雑誌であるNew England Jounal of Medicineに新たな論文が発表された2)。難治性心停止患者に対し、対外式心肺蘇生70例、通常の心肺蘇生64例を検討した前向き無作為割付試験である。結果として、30日後の神経学的に良好な患者の割合は体外式で20%, 通常で16%と有意差はなかった。 この研究によって、体外式心肺蘇生も評価は「金食い虫だが効果はある」から「金食い虫で効果もない」と変わる可能性がある。
1)Curr Cardiol Rev 2018;14(2):109-14 2)N Eng J Med 2023 Jan 26;388(4)299-309 3)Belur AD: Cardiol Ther 2022 Dec 17 online ahead 4)Cureus 2022 Nov 18;14(11):e31636 5)Resuscitation 2014 Nov;85(11):1533-40 6)Ann Intensive Care 2022 Dec 19;12(1):114
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