月刊消防2019/12/1, p103
月に行きたい
「悪口を気にするのはバカらしい」
上司はコロコロと意見を変え、部下は「 トップは現場のことは何もわかっていない」と反発する。 そんな板挟みの毎日に神経をすり減らしているのは、 きっと私だけではないだろう。先輩の係長に相談したら、「 消防士は消防士長のように、 消防士長は消防司令補のつもりで仕事をしなさい」「 君ももうすぐ係長なんだから、 上と下の意見を調整して現場が円滑に動くように勉強するいいチャ ンスじゃないか」とアドバイスをいただいた。
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確かに私の周りでは、衝突を避けるために、 誰にでも頭を下げられる調整役のパイプ役が出世する傾向にある気 がする。先輩は、 頭を下げるという技の影響からか救急係以外からの仕事もたくさん 依頼されている。とてつもなく忙しそうだけど、 任されるということは期待されているということ。 誰よりも先に頭を下げられるレベルまで極めれば、 ゴマすりも立派なスキル。 先輩はきっとこのまま出世していくんだろうな。
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一方で、「私が組織に求めるのは、調整役の“パイプ役” ではなく、組織のブレを防ぐ“ビス役”です」そう断言するのは、 元東京都知事の猪瀬直樹さん。著書、「突破する力」 の中で上司が方針を二転三転させたり、 部下がそれぞれ勝手なことをする理由をこう説明している。「 上司や部下がブレるのは、日本が100点主義だからです。 困難な状況を打破するために新しいプロジェクトを始めるケースが 多いのだから、 失敗する確率の方が高く70点でも取れれば上出来なはず。 にもかかわらず、悪意のある人たちはたりない30点に目をつけ、 難癖をつける。 それに上司や部下が影響されて右往左往してしまうのだ」と。
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トップの方針と現場の事情の両方に精通する係長が一緒になってブ レていては、現場はまともに機能しない。 そこでいかに冷静になって、 ビス役としてブレを無くすことができるか。 課長や係長に求められるには、その力量ということなのだろう。
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それでも気弱な私は、上司や部下に挟まれて、 上から下から悪口を言われるストレスに耐えられるのだろうかとつ い心配になってしまう。周りからの悪口について猪瀬さんは、「 心がけてほしいのは、悪口に強くなることです。 周りは70点でも悪口をいうのだから、 それを気にするのはバカらしい」とあくまでも強気。「 同僚であるということは、 後ろを向いたときに刀で刺さないという意味だと僕は思っている」 と。
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昨日まで自分に賛成してくれていた上司や部下が、 あっさりと裏切るなんてよくあることだ。 そういえば昨日まで一緒にタバコを吸っていた係長と署長が、 今日は時間をずらしていると噂になっていた。 悪口を言われるのは気持ちのいいことではないのは誰でも一緒。 しかし、周りの顔色をうかがう私の先輩(パイプ役) と組織の舵取りをする猪瀬さん(ビス役)ではどちらが有意義か。 上司と部下の板挟みで気を使うより、 むしろ自分が上司や部下を引っ張っていく。 その意識を持って臨めば、 係長というポジションはきっと面白くなりそうだ。今の私なら、 多分ビス役に挑戦するだろう。大量の胃薬を蓄えて。
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