月刊消防 2020.5, p10-12
「化学テロ・災害対応大幅改変します」
埼玉県消防・行政職員有志セミナーを開催
事務局
車田祐介*
長谷川大典
*のりたゆうすけ
坂戸・鶴ヶ島消防組合鶴ヶ島消防署
報告者プロフィール
氏名:車田祐介(のりたゆうすけ)
所属:埼玉県坂戸・鶴ヶ島消防組合
出身:埼玉県川越市
消防士拝命年:平成18年
救命士合格年:平成26年
趣味:世界遺産巡り(世界遺産検定2級)
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目次
【はじめに】
2020年2月12日に『もう待てない!化学テロ・災害対応大幅改変します~より多くの傷病者を救うために~』と題し「埼玉県消防・行政職員有志セミナー」を開催した。
本年2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックは埼玉県内(さいたま市・朝霞市・和光市・新座市・川越市・狭山市)も会場となっており、テロ災害への対応が急務となっている。加えて厚生労働省から「化学災害・テロ時における医師・看護職員以外の消防職員等による解毒剤自動注射器の使用に係る医師法上の解釈等について」が通知されたことを受け、現場で活動する消防職員において必須である解毒剤自動注射器等について早急に学ぶ必要があると感じたことが今回のセミナー開催のきっかけとなった。
講師は厚生労働省「化学災害・テロ対策に関する検討会」構成員であり藤沢市民病院副院長である阿南英明先生にお願いした(001)。
001
セミナー開催通知
【会場・募集方法】
セミナー場所は、東京オリンピック2020ゴルフ競技会場のある川越市内とした。定員は会場の都合上100名と定め、Googleフォームを利用した。(図1)QRコードを用いてSNSで周知した結果、締切日を待たずに定員に達した。
【結果】
参加者については、埼玉県内27消防局・本部のうち13消防局・本部と1市役所の計100名が参加した(002)。
阿南英明先生からは、化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院前)活動に関する提言、時間概念の協調や神経剤に対する解毒剤の自動注射器などの説明があった(003-007)。
アンケートの自由意見からも、本セミナーに対する満足度が非常に高かったことが見て取れる(008)。
002
参加者内訳, n=100
003
講演する阿南英明先生
004
参加者100名
005
講演スライドの一部。化学テロ等発生時の多数傷病者対応(病院前)活動に関する提言
006
講演スライドの一部。時間概念の協調
007
講演スライドの一部。神経剤解毒剤自動注射器
特殊災害というくくりで考えてるからこそ苦手意識や難しいというイメージが先行しているのだと実感しました。 許容範囲を設定することで出来ることも迅速性も上がってくるのでとても勉強になりました。 人命救助をする上で大切なことをまた学べた気がします。ありがとうございました。 |
非常によかったです!現場の気持ちを代弁していただいてよかった!この考えを周知していきたい! |
除染に関する知識を覆す内容でビックリしましたが、講演を聞いて、今後の訓練等に対する取組みを少しでも変えれればと思いました。 |
自所属でも着手までと除染に時間がかかり過ぎていると考えていたところで非常に有意義な講義となりました。 運営に多大な労力をいただきありがとうございました。 また機会がありましたら是非参加させて頂きたいです。 |
抜本的な改革が本部全体で必要と感じた。 これから大変な仕事が待ってます。 |
集団災害の勉強会は多数あり、参加したこともあったが、全く違う考え方・活動方針でとても勉強になった。このような勉強会を開いて頂いてありがとうございました! |
所属では特殊災害隊に所属していますが、現在、活動マニュアルについて試行錯誤中です。 しかし、いざBC災害があった場合、迅速な救出が出来ないマニュアルになりかけています。 今回の研修をフィードバックして、少しでも社会復帰が出来る人を増やせる活動を目指したいと思います。 |
医療現場の最前線で活動する先生の率直な意見が聞けて貴重な時間になりました。講演会等が今後開催される際は参加してみたいと思いました。 開催していただきありがとうございます! |
今の活動に危機感を持つような講義であった、ここからどう動いていけるか、このような思いをもつ仲間が増えるよう、今後も講演を開催して頂きたいと思いました。 |
病院の方がここまで現場の事を考えてくれてる以上、自分たち常に現場に出る人間の行動・考えを改める必要があると感じました |
ストレートな内容で非常に興味深かった。組織にどう落とし込むかが課題であると感じた。 |
私自身MCLSを勉強しておりますが、テキストだけを指標にしてました。CSCATTTや日本の安全管理は非常に高い水準です。しかし、例にもあったように多少の2次被害は許容していかないと、人命が失われるため、個人の考え方だけではなく、組織的な改革が必要であると感じました。 貴重な公演を開催していただきありがとうございました。 |
救急隊の目線から聞かせて頂きました。先生がおっしゃっていたように、今の対応では、誰も救えないと思いながら日々仕事をしていました。今回の講義を聞き、化学剤を正しく恐れることで、必要最小限の装備で迅速に救出することが出来るんだ!と強く感じました。除染に関してもただやるのではなく、必要な除染の意味が理解出来ました。特殊災害と呼ぶのは好きではない。という先生の言葉が印象的でした。 |
このような短い時間で、私達がやっていた訓練の意味のなさ、傷病者のことを考えた活動ができていなかったことに気づかされた。どんな現場でも安全第一で活動しなければならないが傷病者を必ず助けるのであれば、活動要領も変えて行かなければならないと思った。色々とストレートに言う先生だったので、全然飽きなかった。 |
貴重な話が聞けてとても有意義な時間となりました。テロについての考え方が変わり今後、活動する上での基盤となると思います。この講義を期に職場の方針も少しずつ変わって行けばいいなと思いました。 |
凄く実績のある、そしてプレホスピタル救護の中心にいるような方の講演を聞く事が出来ました事に感謝致します。化学テロ災害対応の改変する内容を根拠も併せて聞く事ができて大変勉強になりました。 |
008
アンケート。自由記載
【考察】
我々消防職員は市民の生命・身体・財産を守り、発生した傷病者を適切に搬送しなければならない職務にある。これらを滞りなく的確におこなうためには、想定の幅を可能な限り広くし有事の際は日常の救急・救助業務として対応することが求められる。そのためには、時代の変化に対応し常に最新の情報・知識・処置等を学び、自らをアップデートしなければならない。アンケート結果からは、リスクマネジメントとして参加者一人一人がしっかりと考えることができた非常に有益な時間であったと考えられる。また、最新の知識と対応を学び万全の準備をすることで人為的災害を起こす側の抑制にもつながる可能性があるのではと感じた。
【今後の課題】
参加者を会場の都合上100名と定めたため参加ができない方も多くいた。今後はより収容人数の多いい会場での開催を考えたい。また、少人数ながら本部・行政職員の参加がみられたことは、現場で活動する我々の動きを知るきっかけになったと思う。自然災害のみならず、人為的災害にあっても行政との連携は必要不可欠であるため、今後はより多くの行政職員やさらには消防以外の職種の参加を促したい。
さらに、今回個々で学んだことを各所属でどう生かしていくかをそれぞれが考えていかなければならない。
【結語】
埼玉県の有志セミナーとして今後起こり得る化学災害・テロ災害について、その分野の第一人者でもある阿南英明先生のセミナーを開催した。
最新の知識を得ることは、一つでも多くの命を救うこと、また現場で活動する我々の命を絶対に失わないことにもつながる。
今後も高い「有意識」の概念で職務に取り組んでいく。
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