月刊消防 2021/08/09, p80
月刊消防「VOICE」
自律
氏名 河原 利之(かわはら としゆき)
所属 堺市消防局救急部救急課
課長補佐
出身 大阪府堺市
経歴 平成 元年 消防士拝命
平成 7年 救急隊員
平成16年 救急救命士
平成18年 気管挿管認定
平成21年 薬剤認定
平成27年 ビデオ挿管認定・拡大2行為認定
平成29年 指導救命士認定
趣味 読書
消防職員は救急隊や消防隊として、心肺停止傷病者のもとに駆け付けます。救急現場で傷病者に心肺蘇生を実施するとともに、半自動式除細動器やAEDのパッドを貼り心室細動という不整脈に電気ショックを実施します。
除細動は何回実施すれば良いか覚えていますか。救急隊の活動やPA連携の消防隊の活動は、地域のメディカルコントロールで決められプロトコルとして指示されています。その中には、現場で○回まで実施、搬送開始後、病院到着までの救急車内で×回まで実施、難治性の心室細動の場合は△回しか実施してはいけない、など詳細に記載されています。このプロトコルに従い適切に活動することで、病院前救護の質が担保されているところです。
私たちはプロトコルを正しく理解しているでしょうか?
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救急医療の書籍には「プロトコール」と書かれているものも拝見します。フォーマルな場面で使われる外交儀礼や条約議定書の意味では「プロトコル」と書かれているみたいです。もともとの語源は古代ギリシャ時代に始まり、最近ではIT用語として使われていると知りました。多くの意味で使われる「プロトコル」ですが、救急現場では医師からの指示書として使われています。私が知っているプロトコルは病院前救護の初期対応を年齢別に区分けし多くの傷病者を救うために必要な手順が書かれています。手順に従い迅速な活動を実施することで、傷病者の予後に寄与する活動ができるものと確信し努力しているところです。
私たちは手順通りに活動するだけで良いのでしょうか?
除細動を実施する回数は救急現場によって違います。救急現場は様々であり、迅速に車内収容ができる場合もあれば、傷病者の症状に合わせた処置をするためや動線の確保のために現場に滞在する場合もあります。医療機関までの距離によって搬送時間は異なり、道路状況により一時停止し動けない場合もあります。プロトコルで定められた除細動の回数を必ず実施しなければならないのでしょうか。ECPR(体外循環式心肺蘇生法)ができる医療機関が近くにあるのに、定められた回数の除細動を実施するまで現場を離脱してはいけないのでしょうか。遅延せず実施できる機会があり、大きな波形の心室細動に除細動を実施しなくても良いのでしょうか。除細動については心筋への負荷を考える必要もあることから、プロトコルに従い活動することは必須と考えます。しかし、救急現場の状況により、プロトコルを踏まえたうえで傷病者の予後を良くすることができるのであれば、私たちは考え行動を起こさなければならないと思います。
プロトコルについて、同僚から「回数や時間は数値を決めてほしい」という意見を聞いたことがあります。一方、地域メディカルコントロールの医師には「救急救命士は自分で判断しなければならない」と指摘を受けました。私たちはプロフェッショナルとして自律しなければならないと強く感じています。
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