月刊消防 2022/09, p61
月刊消防「VOICE」
皆さんは「CRM(Crew Resource Management)」という言葉を聞いたことはありますか?私が初めてその言葉を耳にしたのは、平成27年、県の航空隊に派遣されたときです。そもそもは、航空分野で開発された概念で、安全な運航のために利用可能な全てのリソース(人的資源や情報など)を有効に活用するという考え方です1)。平たく言えば、機長も整備士も隊長も隊員もそのヘリコプターに搭乗する全員の立場に上下関係がなく互いをリスペクトし、コミュニケーションを図っていくということです。消防防災ヘリコプターの運航に関する基準が令和元年9月に制定され、令和4年4月からは、航空隊はこのCRMに関する訓練を実施するようになっています。
この考え方は航空隊のみならず地上消防隊にも通常に適用されるのではないでしょうか?私が当時航空隊にいた際、整備士さんから聞いた話が強く記憶に残っています。それは、整備士さんが、以前所属していた会社での話です。あるとき、ヘリコプターに乗り込んだ際、いつもの着陸状態よりは、ヘリコプターが沈んでいるような違和感を感じたようですが、気のせいかなとも思っていたようで、言葉に発しなかったとのことです。そして、機長が通常の離陸を試みたところ、ヘリコプターはスキッド部分が通常よりも埋まっており、テールローターガードが破損するという事故が発生してしまったという話です。整備士さんはその事故を受けて、気になることは必ず言葉で発しているとのことでした。この話も聞けば、当たり前のことかも知れません。逆を言えば、なぜその時、言葉を発することができなかったのでしょうか?気のせいだと思ったからでしょうか?機長のミスを指摘できなかったのでしょうか?話をしにくい雰囲気だったのでしょうか?対人関係が影響しているのでしょうか?
私自身積極的に発言をする人間ではありませんでしたが、この話を聞いて積極的に発言しようと心掛けています。それでもプレッシャーで言えなかったり、発言することで怒られたり、発言しなくても未だによく怒られますが(笑)。
それはさておき、人間はミスをする生き物です。それは、隊長であれ、隊員であれ一緒です。完璧な人間なんてこの世に存在しません。災害現場では、気付いたことは発言し、情報共有を図りましょう。最終判断は隊長がすれば良いだけのことです。平時においては通常のコミュニケーションを図り、ミーティング、会議等、何でも良いので積極的に発言しましょう。最終判断は〇長がすれば良いだけのことです。私自身、上司の言葉、同僚・後輩の言葉にどれだけ助けられたことでしょうか。
発言することで気付くことがあります。発言することで道が作られます。発言することで変わる未来があります。だからこそ、互いをリスペクトし合い、人として組織として成長していきましょう。
引用
1)https://ja.wikipedia.org/wiki/クルー・リソース・マネジメント
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