211108_VOICE#65_多様性を成果に結びつける

 
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主張

月刊消防 2021/06/01, p65

月刊消防「VOICE」

ただ、経営概念として本来のダーバーシティは、多様な人材を受け入れ、個々の能力を最大限活用し、組織の成果につなげていくことを指します。つまり、単に人材を多様化するだけでは、道半ばなのです。
 
ダイバーシティを高め、それを組織的成果に結びつけていくうえで、組織力は2つの段階で大きな挑戦を受けます。第1段階が、人種や性別などの違いの背後にある、考え方や価値観、生き方などの多様性を受容する力です。一人ひとりのニーズや価値観、生き方などを受け入れ、可能な限り尊重する組織を作るということです。「インクルージョン」とも呼ばれています。
 
より難しいのは第2段階です。多様な視点や考え方を一人ひとりの人材に表出してもらい、それを組み合わせ、イノベーションや高いレベルの目標達成へと結びつけていく組織力が必要になります。ダイバーシティ活用の本丸といってもよいでしょう。ここがうまくいかないと、ダイバーシティは単なるコストになってしまいます。
 
例えば、多様な人材にどう意見を表明してもらい、それを全体で受け止めて、まとめ上げていくか。さらに、対立や葛藤が起きた時に、双方の視点を活用しながら、どう対立を解消していくか、といった組織力です。個別人材の交渉力や紛争解決能力ではなく、組織全体として、ダイバーシティから成果を生んでいく力といえるでしょう。
 
ちなみに私が考える理想の組織は、異なる価値観、考え方を認めつつ、コンフリクト(衝突)が起こり、視点や選択肢が広がって既存の概念を見直すことができて、イノベーションが推進される組織です。



かつて消防学校の初任科では、有事の際、指揮命令を着実に遂行でき得る画一的な職員を作り上げる教育が主流でしたが、現代のような変化の激しい時代では、多様性を取り込んだ組織の必要が高まっていると思います。

 
画一的な職員ばかりでは、異質な考えを受け入れず、排他的で選択肢が狭く、伝統や慣習から抜けられない固定概念に縛られ、市民ニーズに柔軟に対応していくことのできない組織になってしまいます。
 
ダイバーシティを受け入れ、それを活用して成果につなげていく力は、組織全体で培っていくべき重要な組織力です。価値観の多様性は表面から見えにくく、また組織というものは本来的に異質な要素を排除し、多様性を低減する傾向が強いので、多様な考え方や価値観の受容性を高めるには相当の努力が要ります。異質性を成果に変換していく力は、これまで多くの組織が持ち合わせてこなかったタイプの組織力であり、積極的な構築が必要だと考えています。
 
読者の皆さんの組織で本来のダイバーシティは成果に結びついていますでしょうか?
 
名前:渡部 和也

よみがな:わたべ かずや

所属:大阪府 堺市消防局 救急部 救急ワークステーション(4月以降未確定)

出身地:大阪府堺市

消防士拝命:平成9年4月1日

救命士合格年:平成18年3月

趣味:仕事

主張
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