250520_資器材をもう一度学ぼう!_#3_聴診器_北海道留萌消防組合小平消防署_深滝大斗

基本手技

 

目次

1.はじめに


連載の第3回を担当させて頂きます留萌消防組合小平消防署の深滝大斗と申します。連載3回目は「聴診器」です。

2.聴診器とは


傷病者の皮膚に当てて体内の音を聴き取るための道具であり、主に呼吸音や心音を聴くのに用いるものです。

3.聴診器の種類と構造


①「シングルタイプ(膜型)」(写真1、写真2)

写真1(シングルタイプ)

写真1(シングルタイプ)

写真2(シングルタイプのヘッド部)

写真2(シングルタイプのヘッド部)


膜型は、高音の聴取に優れ、血圧測定時のコロトコフ音、呼吸音、腸蠕動音、心音など幅広い聴取に適しています。
聴診の際は、チェストピースと皮膚に隙間ができないよう押し当てます。              

②「ダブルタイプ(膜型・ベル型)」(写真3、写真4)

写真3(ダブルタイプ)

写真3(ダブルタイプ)

写真4(ダブルタイプのヘッド部分)

写真4(ダブルタイプのヘッド部分)


ベル型は低音の聴取に優れ、特に心尖部の過剰心音を聴く際に適しています。
聴診の際は、強く押し当てすぎると低音が減弱するため、ベルを皮膚に軽く密着させます。
ダブルタイプでは、膜型とベル型の切り替えをシャフトを回して行います。ベル型を用いる際はシャフトをカチッと回して、穴が開いている状態で聴診します。(写真5、写真6)

写真5(膜型で聞くときの確認箇所)

写真5(膜型で聞くときの確認箇所)

写真6(ベル型で聞くときの確認箇所)

4.使用方法


①聴診器の付け方

耳管部を両手でしっかり持ち、イヤーピースが前(ハの字)になるように持ちます(写真7)。


イヤーピースを外耳道の方向(10~15度前方)に合わせて装着し、耳にフィットさせます(写真8)。

写真7
イヤーピースが前になるように持つ
写真8
外耳道にフィットするように装着する
正しい例(写真9)耳管部が前方を向いている



悪い例(写真10)耳管部が後方を向いている


ポイント!!


イヤーピースを間違った方向に入れると外耳孔にしっかりと密着させることができず、音も聴取できなくなります。また外部雑音の遮断も不十分です。


②聴診部位

呼吸音(前胸部)呼吸音を聴取する場合の場所

呼吸音(前胸部)呼吸音を聴取する場合の場所



ポイント!!


・聴診は上から下に向かって行い、左右交互に行うのが原則となっています。
・上気道の狭窄を疑う場合は前頸部(①と②)、呼吸音の左右差をみるときは両腋窩部(③と④)を聴診すると呼吸音を聴取しやすくなります。
・肺雑音が微弱で聞き取りづらい場合は傷病者に息を吸ってもらった後、強く息を吐いてもらうことで聞こえやすくなります。(強制呼気)


心音(写真12)

写真12
心音を聴取する場合の場所

ポイント!!


心音の聴診は、第Ⅰ音(房室弁の閉鎖音)は心尖部(③)、第Ⅱ音(半月弁の閉鎖音)は両側第2肋間(①と②)の高さの胸骨縁で、最もよく聞き取ることができます。第Ⅰ音は鈍く低い音、第Ⅱ音は鋭く高い音が聞こえます。

5.聴診に際しての注意点


急に聴診器を傷病者の皮膚に当てるとチェストピースが冷たくて、傷病者が不快な思いを抱く可能性があります。そのため、聴診器を当てる前に、必ずチェストピースの部分を手などで温めてから聴診を行うことが重要です。
また、車内での聴診は、車の走行による振動やサイレン音などの雑音により正確な音を聴きにくいため、可能なら現場で聴診します。

 

 


著者

氏名:深滝大斗(フカタキダイト)
所属:北海道留萌消防組合小平消防署
出身:北海道紋別郡遠軽町
消防士拝命:平成25年4月1日
趣味:野球・バレーボール

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