近代消防 2024/08/11 (2024/09月号)p82-4
今さら聞けない資機材の使い方
電動ストレッチャーで従来型ストレッチャーと変わらない胸骨圧迫が行える
目次
1.目的
当消防局では2021年4月に日勤救急隊が創設されました。産休育休後の女性職員が職場復帰しやすいようにするのが目的で、現在の日勤救急隊には女性に加えて再任用職員も在籍しています。2021年12月に救急車購入の際には、職員の体力を補填するためストライカー社製の電動ストレッチャーを導入しました。
今回は電動ストレッチャーを用いた際の胸骨圧迫の質を従来型のストレッチャーと比較するとともに、実際に隊員の負担を軽減させているか検証しました。
2.材料と方法
対象ストレッチャーを表1に示します。従来型ストレッチャー(以下従来型)はファーノ社製エクスチェンジストレッチャー4080-S(001)、電動ストレッチャー(以下電動)はストライカー社製パワープロ(002)です。従来型に比べ電動は重量は2倍あり、車内収容時の座面高は10cm低くなっています。
評価は高崎中央消防署の職員31名と消防局の日勤救急隊員3名で行いました。属性を表2に示します。
JRC蘇生ガイドライン2020に準拠して、高研社製セーブマンプロに対して胸骨圧迫30対人工呼吸2を2分間行いました。測定項目は深さ、リコイル、手の位置、リズムの適正率です。この測定を車内(003)と車外(004)で行いました。
その後胸骨圧迫を行なった職員にヒヤリングを行い、各ストレッチャーのメリット・デメリットを探りました。
表1
対象ストレッチャー
表2
評価者の属性
001
従来型ストレッチャー。ファーノ社製エクスチェンジストレッチャー4080-S
002
電動ストレッチャー。ストライカー社製パワープロ
003
車内収容時での胸骨圧迫
004
車外での胸骨圧迫
3.結果
車内収容時(005)、車外(006)のいずれの項目も差は見られませんでした。
それぞれのメリットを表3に、デメリットを表4に示します。
電動のメリットは、昇降がボタン操作で行えるため、膝や腰への負担が減少しているなどの身体的負担が有利な点だった。デメリットはストレッチャーの重量が重く、道路状況によっては曳航がしにくいこと、トラブル対処に備え訓練が必要であることです。
006
胸骨圧迫の評価。車内収容時
007
胸骨圧迫の評価。車外
表3
各ストレッチャーのメリット
表4
各ストレッチャーのデメリット
4.考察
電動ストレッチャーでも従来型ストレッチャーでも同様の質で心肺蘇生が実施可能であることが分かりました。ヒヤリングの結果では、電動型は体重の重い傷病者搬送に有利であることから女性職員からは有用性が高いと評価されていましたが、一方で操作面で複雑であるとの意見がありました。しかし今後、電動ストレッチャーが普及し、操作する機会が増えれば問題は解決されると考えられます。
救急活動は隊で行うため、今後は隊員3名で心肺蘇生を行い、搬送中や曳航中も含めて検証を行ったり、検証内容に胸骨圧迫率も入れて有意差がないかを検証していきたいと思います。

名前:糸井 祐弥
読み仮名:いとい ゆうや
所属:高崎市等広域消防局 高崎中央消防署
出身地:群馬県前橋市
消防士拝命年:平成23年
救命士合格年:平成23年
趣味:Disney
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