250731_VOICE#104_対応力

主張

月刊消防 2024/09/01, p24

月刊消防「VOICE」

 


「対応力」

私たち消防職員は、災害現場で臨機応変に対応する『対応力』が求められていると思います。一言に『対応力』と言っても、言葉では簡単ですが、実際の活動になると難しいことが多々あります。私は日頃から物事を分解して考えるのが好きです。では、私なりに『対応力』を分解、考えてみると『対応力』=「共通認識」×「技術」×「経験」となります。
例として救急活動の『対応力』を考えてみます。「共通認識」はプロトコルや知識、「技術」は訓練や研修、「経験*」は個人体験や症例検討会で得た他人体験でしょうか。イメージしやすいよう標準『対応力』を数値化すると『対応力』=「共通認識」×「技術」×「経験」=1×1×1=1となります。
『対応力』は、「経験」をどう取り込んでいくかで変化しやすいと私は考えます。普段から「共通認識」や「技術」の向上については皆さん研鑽していると思うからです。

例を挙げて考えてみます。例えば、大動脈解離の症例です。


例1「急な背部痛」の救急要請です。傷病者宅に到着する前、救急車内では「共通認識」=「背部痛の移動?血圧の左右差?神経痛?」、「技術」  =「血圧の左右差測定、心電図変化の確認、安静搬送」を隊員間で確認します。そこに私しか体験したことがない、私の「経験」をプラスします。私の「経験」=「血圧の左右差は微妙でも、左右にSpO2計を装着し、SpO2値に大きな差があると大動脈解離だったことが何度かある」を隊員間で共有します。もしそうした症状があれば、より大動脈解離を疑う活動に繋がります。


例2「突然の下肢の脱力」の救急要請です。救急車内では「共通認識」=「食欲不振?脳卒中?腰痛?」、「技術」  =「外傷、瞳孔異常や麻痺の確認」を隊員間で確認します。同じように私しか体験したことがない、私の「経験」をプラスします。私の「経験」=「突然の両下肢脱力は腹部大動脈解離だったことがある」を隊員間で共有します。
この「経験」を数値として、例1+0.5、例2+0.5とすると大動脈解離に関しての『対応力』=1×1×(1+0.5+0.5)=2と考えられます。


単純には言えませんが、「経験」を隊員間で共有し活動できれば、救急隊の『対応力』は大きく変化すると思いませんか。
ここでの「経験」は個人体験や他人体験のどちらでも構いませんが、「経験」を共有するタイミングが重要と考えます。ポイントは、活動直前に「経験」を共有です。「経験」を活動直前でインプット。すぐに活動中でアウトプット。日々、これが記憶に残りやすく効果があると感じています。

今回は私の「経験」が例でしたが、『対応力』は仮に私が不在時にできれば2、できなければ1とし、2になるまで繰り返すことで、私の「経験」が隊員に理解されたかどうかも分かります。当然、私も後輩の「経験」を教えてもらう場合もあります。『対応力』を考える、一つのアプローチとして日々の活動に取り入れてみてはいかがでしょうか。


*「経験」は頻回要請者対応等を除く。

                          

プロフィール
・名前:木嶋 浩之(きじま ひろゆき)
・所属:高崎市等広域消防局 高崎東消防署群南分署 係長代理(消防司令補)
・出身地:群馬県前橋市荒子町
・消防士拝命:平成18年4月1日
・救命士取得:平成26年救急救命士国家試験合格
・趣味:ダンス、散歩
主張
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