251230最新救急事情(263)体外循環補助を用いた心肺蘇生法

最新救急事情

月刊消防 2025/04/01号 47(04), 通巻550号 p70-1

体外循環補助を用いた心肺蘇生法

目次

はじめに

体外循環補助を用いた心肺蘇生(extra corporeal cardiopulmonary resuscitation, eCPR)については以前この連載で取り上げている。その時には、eCPRの効果はまだ定まっていないと結論した。それから2年以上経った現在の評価はどうなっているだろう。

eCPRとは

突然の心停止で人が死ぬのは、心臓の持つポンプ機能が失われ、次いで身体中の酸素が足りなくなるためである。これに対応すべく、ポンプ機能だけのものは人工心臓、血液の酸素化だけを行うものが人工肺と言われ、この二つを合わせたものが人工心肺である。蘇生に用いられるのは小型化した人工心肺であり、どこへでも持っていける。

eCPRの歴史は古く、初めての報告は1966年である。報告者は1957年から1965年の9年間で8例にeCPRを導入し、7例で蘇生に成功したと述べている1)。そのうちの1例は神経学的な後遺症も認めなかった。その後は症例が徐々に増えていtたが、2009年になっても100例未満であった。件数が劇的に増えたのは、2009年のインフルエンザ大流行によるとされている2)。

病院内心停止では有効

2021年に出た総説2)で取り上げている院内心停止eCPR研究は3編。それぞれ評価方法は異なるが、46例を対象とした報告が最も成績が良く、脳機能カテゴリー*1もしくは2で退院できた割合がeCPRで30.4%に対して通常の心肺蘇生では15.2%であった。最も例数が多い報告では、195例を調査し、30日後に脳機能カテゴリー1もしくは2であった割合はeCPRで23%、通常の心肺蘇生では9.7%としている。

*脳機能カテゴリー(Cerebral Performance Category, CPC):脳機能を点数化するもの。1から5まである。1は正常。2は中等度障害(介助なしで日常生活可能)

病院外心停止患者では無効

明らかにeCPRが有効な病院内心停止に対し、病因外心停止てはeCPRを使っても良い結果は得られていない。韓国で2009年から2013年までの治療効果をまとめた後ろ向き研究3)では、eCPRを受けた患者は320例であり、これを通常の心肺蘇生を受けた36227例と比較している。eCPRではCPC 1もしくは2で生存退院した割合は9%、通常の心肺蘇生では2%であった。数字では大きく離れているようだが有意差は認められず、傾向マッチング分析でも同様であった。パリ大都市圏で院外・院内をまとめてeCPRを525例集めて生存退院率だけを評価した報告4)では、cCPRで8.4%、通常の心肺蘇生で8.6%と、eCPRの方が成績が悪くなっている。

適応患者は

2020年の論文5)では・年齢65歳以下・心停止目撃あり・重大な併存疾患なし・心停止から1時間以内にcCPR導入可能、の4つを全て満たすことで脳カテゴリー1もしくは2の生存退院を通常の心肺蘇生の2倍にできるとしている。

eCPR導入で総費用は1500万円超え

eCPRの最大の問題はその費用だろう。浦添総合病院からの報告6)では、eCPRを導入した場合の総費用は最初の心電図が心室細動で生存退院した患者で1500万円、心停止患者では3200万円であった。これだけ費用をかけても生存退院できればまだ良いが、CPC1-2の生存退院率は最高でも30%なのだから、この数字の裏には、これだけの費用をかけても死亡する患者や植物状態になる患者がこの2倍以上いることになる。

従来の心肺蘇生は、もう助かる見込みがないと判断できれば中止できるし、開始から中止までの時間はどんなに長くても1-2時間だろう。一方、eCPRでは人工心肺が動いている間は生存の可能性はあるため、最終的に生きるか死ぬかわからない患者をずっと集中治療室に閉じ込めて病院のリソースを使いづづける。患者がどういう状態ならeCPRを止めるのかガイドラインは存在しない2)。

人を選び施設を選ぶ

以上見てきたように、厳選された病院が患者を厳選すればeCPRは通常の心肺蘇生を大きく上回る成績を残せるようだ。しかし、費用は莫大で効果も限られるから、あちこちで行われるようには絶対ならない。大きな救命センターや大学病院で徐々に症例が増えていくものと思われる。

文献

1)JAMA 1966 Aug 22;197(8):615-8.

2)Intensive Care Med. 2021 Sep 10;48(1):1–15

3)Resuscitation 2016 Feb:99:26-32.

4)Eur Heart J 2020 Jun 1;41(21):1961-1971

5)Intensive Care Med 2020 May;46(5):973-982.

6)Resuscitation 2019 Jul:140:74-80.

 
 

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