260131応急処置アップデート THE MOVIE II 03 捻挫

救急の周辺

健康教室2025/05/10 健康教室2025年6月号 p60-2



応急処置アップデート THE MOVIE II 03
捻挫

東山書房 / 『健康教室』2025年6月号「応急処置アップデート THE MOVIEⅡ」#3

目次

はじめに

今回は捻挫の処置として、認識が広まってきているPRICEを取り上げます。

これらの処置は見直しが進んでいて、効果不明の項目もあります。

A.動画

001

負傷したのが足首だけなのか確認しましょう。出血やもっと大きな骨の骨折が疑われる場合にはそちらを先に処置します。

002

「RICE」は広く普及しています。今回は最初にPを付けた「PRICE」を紹介します。

003

P:Protection(保護)

この場合は、創部を保護することを指します。移動中はシーネなどで動きを抑えるようにします。

004

R:Rest(安静)

E:Elevation(挙上)

安静にし、捻挫した部位を挙上します。

005

I:Ice(冷却)

ここでは氷を使っていますが、氷だと冷やしすぎる可能性があります。水道水や冷却パックなどを用いましょう

006

冷却は短時間だけ行います。

007

C:compression(圧迫)

包帯で巻きます。腫れを防ぐのと、患部の動揺を抑える効果があります。きつく巻き過ぎると循環障害を起こしますので注意しましょう。

B.解説

RICEは以前から効果不明1)でした。

1.Restは有害(001)

過度の安静により関節が固まって回復に時間がかかるのは理解できるでしょう。現在では一刻も早く運動負荷をかけて関節を動かすことが勧められています。

1)可動域が減り復帰が遅れる1)

受傷早期から足首を左右前後に動かす運動をすると、Restを続けた症例に比べ経過のどの段階でも可動域が広くなります。18ヶ月後の調査ではRestを行なった群に比べ病欠期間が短くスポーツへの復帰が早くなりました

2)病欠期間が長くなり病院へ行く回数が増える1)

3)Restの有無で痛みは変わらない2)

Restを続けた群と早期に運動を始めた群では、安静時の痛み・活動時の痛み・腫れは差はありませんでした。

2.Iceは痛いとき短時間だけで(002)

冷却については2023年9月号のこの連載で取り上げています。

・冷却は痛みを取るだけ

・冷やすと回復が遅れる

・温めた方が回復が早くなる

3.Compressionは無意味3)(003)

包帯で患部を巻くと腫れと痛みが軽減すると思われていますが研究で否定されています。研究で分かっているのは、非圧迫性ストッキングをするよりは回復が早くなるかも知れないということだけです。

1)疼痛は減少しない(001)

何もしない、包帯で圧迫、包帯を軽く巻く、シーネでの固定、足関節装具を使った固定の5種類の方法を比べた結果、患部を包帯で巻いても痛みは他の方法と差はありませんでした。

2)腫れも減らない

何もしない場合に比べて、普通の包帯で巻いたくらいでは腫れは抑えられません。普通の包帯ではなく弾力包帯を使えば腫れが減るという報告は1本だけありますが、メタアナリシス(同類の報告を混ぜて一つの報告とするもの)では否定されています。

3)関節可動域は足関節装具と同じ

包帯を巻くだけだから足関節はよく動くのかと思っていましたが、報告では足関節装具と同じだけしか動きません。痛いからでしょう。

4)運動選手の場合は回復は早くなる可能性がある4)

運動選手に限った場合には、ジャージを創部に巻くよりは圧迫包帯を巻いた方が、元の運動に復帰する時間が短縮されるという報告がありますが、運動選手を含めた大多数になると、有意差は消失します。

C.養護の先生が経験した事例

症例①

中3男子。体育の授業中に、体育館でフットサルをしていたときに、ボールを蹴ろうとした相手の足にひっかかってしまい、勢いよく転倒して右足首を痛めたと来室しました。友人の肩につかまらないと歩けないほど歩行が困難で、静止時も痛みがあり、介達痛もみられました。受傷部位を確認すると、右足首はやや腫れていましたが、変色や変形はみられませんでした。痛みが強かったので冷やして様子をみましたが、痛みも腫れも変わらなかったので、家庭連絡をして整形外科を受診したところ、右足関節捻挫と診断されました。介達痛=骨折と思っていたので、捻挫でも起こるのだと勉強になりました。

症例②

中2女子。体育の授業中に、体育館でマット運動をしていたところ、片付けの指示が出たのに、最後に1回だけと慌ててバック転に挑戦したら、後方にきちんと手をつかなかったため頭からマットに衝突。片付けの最中にバック転をしたことが先生に知られると怒られると思ったため、首の痛みを我慢していたが、とうとう痛みで首を動かせなくなってしまい来室しました。受傷部位を確認すると、腫れや変色はみられませんが、圧痛はありました。全身状態、バイタルは正常時と変化はありませんでした。頸部のけがの場合、救急車を呼ぶのが賢明なのか、どんな体位で安静にすればいいのか、後遺症のことが頭に浮かび焦ってしまいましたが、生徒が楽だと言った頭部を支えるようにした起座位にして、すぐに家庭連絡して受診をお願いしたところ、診断結果は頚椎捻挫と胸椎骨折の疑いでした。

文献

1)J Athl Train 2012 Aug::47(4):435-443

2)BMJ 2010 May 10;340:c1940

3)一般社団法人日本蘇生協議会:JRC蘇生ガイドライン2020。pp368-9、医学書院、東京、2021年

4)Am J Emerg Med 2014 Sep;32(9):1005-10

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