健康教室2025/06/10 健康教室2025年7月号 p60-4
応急処置アップデート THE MOVIE II 04
骨折の処置
目次
はじめに
今回は骨折の処置です。動画の後半では捻挫と骨折の見分け方を扱っています。
動画
001
けがの場合は、もっとも目立つ傷口だけに目が行きがちです。他の部分にけがはないか確認しましょう。頭を打っていた場合は意識消失の確認を必ずすること。

002
骨折部を動かさないように搬送します。患児が動けない場合には多人数で抱えて移動させます。

003
固定は上下2つの関節を含めます。これにより骨折部の動きを抑えることができます。写真は前腕部の骨折の場合で、肘と手首を含めて固定します。

004
下腿の場合は、膝と足首を含めて固定します。

005
出血は圧迫します。

006
骨折しているかどうかの見分け方です。簡単なのが「介達痛」の確認です。骨折していると思われる場所から少し離れた場所を押すと骨折部を痛がるというものです。

007
捻挫の場合はくるぶしから離れた場所を押すと、骨折では折れているところを痛がり、捻挫では痛みがありません。ただこの「介達痛」は骨折の目安にはなりますが、あったからすぐ骨折でもないし、なかったから大丈夫ともならないところが辛いところです。

008
単なる打撲と思っていても、1週間経って腫れや痛みが軽減しない場合には骨折の可能性がありますので病院を受診させましょう。
解説
1.骨折処置の流れ(009)
大きな骨が折れている場合は、内出血や外出血でショック状態になる可能性があります。
(1)人を呼びます。一人では搬送もできません
(2)全身状態を確認します。必要により心肺蘇生、気道確保、止血を行います
(3)大きな骨の骨折では救急車を呼びます。
(4)骨折部を固定します。
(5)移動し救急車を待ちます
2.固定(010)

今の状態を悪化させない固定を目指します。つまり、骨折部が動くことなく患児に苦痛を与えない固定です。病院で行うような完璧な固定は不要です。
(1)そのままの形で固定し救急車を待つのが原則です。
(2)救急車が早く到着できるようなら、現場で手で維持して救急車を待つのも良いでしょう
(3)変形が激しく固定も移動もできないようなら、末梢側を引きながら骨折部をまっすぐにします。
(4)固定は骨折部の上下の関節を含めます。
3.骨折しているか疑わしいときは(011)

(1)介達痛を確認する
骨折部から離れた場所を押したり叩いたりすると折れているところを痛がるものです。骨折の目安として重宝しますが、あくまで目安であることに注意しましょう。私の経験からは介達痛があればまず骨折ですが、これは医者としてしつこく痛みを確かめているからであって、養護の先生はそこまで追求出来ないでしょう。
(2)経過を見る
捻挫や打撲と異なり、骨が折れている限り骨折部から出血しますので、痛みや腫れが長引きます。1週間経っても腫れや痛みが引かない場合は骨折の可能性ありますので病院を受診させます。
養護の先生が経験した事例
<症例①>
・「今、跳び箱でケガした高校3年生の○○が保健室に行くから」と、体育館から一本の電話が入りました。1階の体育館と2階の保健室は同じ棟の端と端にあります。歩いて来るとのことなので、手首や肘の捻挫を想定しながら生徒を迎える準備を整え、保健室の入り口でドアを開けて待っていると、左前腕部を大事そうに抱えた長身の生徒が歩いてきました。
迎えに行こうと近づくと、「これは、やばい!」トレーニングウェアの上からでもわかる、上腕部分の変形が確認できました。「確実に折れている!」と確信した私は、慌てて駆け寄り、声をかけながら保健室へ誘導し、処置台に腰を掛けさせました。状況を確認しながら副木(商品名:ソフトシーネ)で固定し、三角巾で保持していたところ、みるみる顔色が悪くなり、蒼白に。ショック症状が出ているようでした。すぐに処置台に横に寝かせ、救急車を要請し、医療機関へ搬送しました。
受診したところ、骨折部位に良性腫瘍があり、骨がもろくなっていたため、骨折に至ったとのことでした。その後、手術やリハビリが行われました。
本事例では、体操の授業で跳び箱を行っており、かなりの高さに挑戦していました。助走のタイミングが合わず、踏み切り板の手前で飛べないと思った生徒は、跳び箱の踏み板でジャンプせずに走り抜け、跳び箱の側面に手をついて減速したところ、鈍い音とともに痛みを感じたとのことです。すぐに体育教員に状況を伝え、保健室に向かうことになりました。
この生徒のケガを通して学んだことは、高校3年生のしっかりした生徒でも、保健室へ一人で行かせることの危険性(途中でショック症状を起こす可能性)があるということです。担当の体育教員は、跳び箱の手前でジャンプせずに減速し、跳び箱の側面に手をついて負傷した様子から、それほど大きなケガではないと判断し、一人で保健室に向かわせてしまったようです。
余談ですが、振興センターの災害給付制度は、最初の請求から10年間有効であり、この生徒は卒業後、ボルトを抜くための入院・手術の際にも給付申請を行い、見舞金を受け取ることができました。私個人的には、卒業後も申請の都度、話をすることができ、ケガの予後を見届けることができるこの制度に改めて感謝しています。
*さらに余談ですが、固定の際に使用した商品名:ソフトシーネは、レントゲンを撮る際に外す必要があり、痛みを伴ったとのことです。「今後は、装着したままX線撮影できる副木をお願いします」と生徒に頼まれ、装着したままX線撮影ができると説明書に記載されている商品名:サムスプリントをすぐに購入しました。
<症例②>
・中3女子。体育のバスケットボールの試合中、走っていたところに思わぬ方向からパスボールが飛んできて顔面を強打。はじかれた眼鏡は歪んでおり、擦り傷と鼻出血があったため、教科担当や周りの生徒、本人が止血をしながら保健室へ移動。出血だけでなく、鼻周りの腫れと歪みが見て取れた。冷却と止血をしながら保護者に連絡し、目や頭部の異常が確認できなかったため耳鼻科を受診。骨折の診断を受け、大きな病院で鼻の歪みを戻す手術が必要となった。
<症例③>
・中1男子。体育祭のリレー中接触し転倒、右手の甲側から地面についた。転び方や痛み方から骨折も疑い、アームスリングで吊り冷却をしながら経過観察をした。しばらく経っても腫れがあまり見られず、本人が痛みが少し引いたと最後まで見学することを希望したため保護者と相談し、翌日月曜日に受診した。橈骨と尺骨を骨折していた。
<症例④>
中1女子。体育でバスケットボールの試合中にディフェンスをしていたところ、オフェンスの生徒の頭部と本人鼻が衝突しました。鼻血がでたため、本人が止血し、2分程度で血が止まりました。その後保健室で冷却しながら様子を見ていましたが、明らかな変形が見られたため、保護者へ連絡し、耳鼻科を受診したところ、鼻骨骨折と診断され、整復手術が必要となりました。
<症例⑤>
中2男子。体育で50m走を走っていたところ、股関節に痛みを訴え、途中で走るのをやめました。すると歩くことが困難になったため、同級生が抱えて保健室まで運んで来室しました。もともと股関節に違和感があったことや最近股関節のストレッチをしていて痛みがあったこと等を踏まえ、保健室でもう少し様子を見るか迷いましたが、保護者へ連絡し、整形外科を受診したところ、股関節骨折と診断されました。
<症例⑥>
小6男子。昼休みにドッジボールをして遊んでいて、とっくみあいの喧嘩になり、顔を足で数回踏みつけられ、鼻出血しました。保健室に来室し、5分程度で血は止まり、患部を冷却して様子を見ていましたが、鼻が腫れ始めたため、骨折を疑い、保護者へ連絡しました。鼻だけではなく、顔面全体を踏みつけられたようだったので、整形外科を受診したところ、打撲と診断されました。
<症例⑦>
小5の女子、Aさん。
休み時間にバスケットボールをして遊んでいた際、リバウンドをとろとして着地したときに転倒し、右手を床に打撲した。腫れはなかったが痛みが強く、冷却、シーネで固定。保護者へ連絡し、受診したところ、骨折だった。(ヒビが入っていた)

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