260612応急処置アップデート THE MOVIE II 08 溺水

救急の周辺

健康教室2025/09/10 健康教室2025年10月号 p56-9

東山書房 / 『健康教室』2025年11月号「応急処置アップデート THE MOVIEⅡ」#8

目次

はじめに

今回は溺水です。

溺水の転帰は2つに分かれます。引き上げられて何ら後遺症を残らないか死亡するかです。ライフガードが救助した溺水者であっても28%から40%は医療処置が不要であった1)一方で、長時間沈んでいる人を生き返らせるのはほぼ不可能です。このことから、溺水への対策は予防が最も効果的です。

動画を作成している岡田哲也さんは潜水士の資格をお持ちです。四万十の美しい自然を背景とした渾身の動画をどうぞご覧ください。

確認と処置

001

溺水は重大な結果をもたらします。少しでも体調がすぐれない場合には水泳を取り止めましょう。川や海でも同じです。

002

溺れる時は一瞬で溺れます。後述の「養護教諭の先生が経験した事例」では2例で「バタバタ」という表現が出てきますが、自分がバタバタしているだけであって、周りの人には分かりません。せいぜい「遊んでいる」と取られる程度です。バタバタしても顔は水面上に出せず、力尽きで沈んでいきます

003

沈んでいる児童生徒を発見したら、引き上げてすぐ人工呼吸をします。酸素欠乏で意識を失っているので、人工呼吸が救命のカギとなります。

004

移動中も人工呼吸を続けます。心臓マッサージは陸に上がってから開始します。

005

大事故です。冷静な行動は無理です。119番の指示に従いましょう。

006

まれに、救出後に手足のしびれを訴えることがあります。首の怪我の可能性がありますので、患児に首を動かさないように命じて救急隊を待ちます。以前は患者が首を動かさないように他人が頭を手で固定するようにしていましたが、却って首の神経を痛める可能性が高いことがわかり、今は固定しなくなりました。

解説

1.統計

1)人数と場所2)

令和5年の水難事故は全体で1392件1667人。人数では未就学児童35人、小学生89人、中学生53人、高校生63人となっています。

中学生以下の水難死亡・行方不明者の発生場所は河川が16人で約6割、ついで川7人、湖沼池とプールが2人でした。中学生以下の水難者の行為別統計では、水泳が11人で4割、水遊び10人、魚とり魚釣り2人となっています。

2)性別3)

女子に比べて溺れかける人は男子で2倍、溺死する人は4倍です。

2.一瞬で静かに溺れる4)(007)

溺れている人は、水中に潜り、一瞬だけ浮かび上がってすぐ沈みます。「バタバタ」より「ジタバタ」の表現が当たっています。

3.水面で人工呼吸する(008)

水面から引き上げてすぐ、陸に上げる前に人工呼吸します。回数は文献よって5回であったり12回であったりします。水面人工呼吸を受けた患者19例中10例(52.6%)が良好な神経学的転帰を得たのに対して、受けなかった27名では2名(7%)しか神経学的に良好な転帰とはなりませんでした4)。

4.心肺蘇生でも人工呼吸をする

成人の場合、現在は胸骨圧迫のみ人工呼吸なしの心肺蘇生を行なっています。しかし溺水では人工呼吸をした方が生存率が高くなると報告されています(人工呼吸あり30%:人工呼吸なし18%)5)。

5.溺水を防ぐために(009)

ほとんどの溺死は防ぐことができます。教育機関に当てはまるガイドラインを示します。W:世界保健機関WHO6)、C:アメリカ疾病予防管理センターCDC 7)です。

1.未就学児を水から遠ざける(w)

2.水に近づけないようにバリアを作る(w)(c)

3.6歳になったら水泳と安全の教育をする(w)(c)

4.水の危険性を学ぶ(w)(c)

5.心肺蘇生法を身につける(w)(c)

6.見守る人・仲間と泳ぐ(w)(c)

7.ライフジャケットを着る(c)

8.持病を知る(てんかんなど)(c)

9.薬剤の副作用を考慮する(c)

10.過呼吸や長時間の息止めをしない(c)

3.養護教諭の先生が経験した事例

(1)溺れた経験1

小さい頃の話です。全く泳げなかったわけではないのに、川に流されて、気づかないうちに背丈より深いところに移動していました。立とうと思ったら立てなかったので、バタバタとなって、体が何回も回転している感覚になりました。多分父親が抱き上げてくれて、落ち着いて呼吸できましたが、焦るとどうしていいか分からず、バタバタしてしまい、鼻から口から水が入ってきたという記憶です。

(2)溺れた経験2

自分が小学生の頃に溺れた事があります。市民プールで足が着かないところまで入り込みました。手足をバタバタさせていたのを周りは遊んでいると思ったようです。気づいた親が引っ張り上げて、ぐったりしているのを座らせて思い切り背中を叩いて咳をさせた(水を吐き出させた)そうです。自分はむせたのと鼻からも水が出てメチャクチャ苦しくて意識が戻った記憶があります。

(3)中学生の例

水泳部の男子生徒が、両足攣って溺れそうになったことがありました。屋上のプールだったので、痛い~っという声がご近所中に響き渡りました。私が「足つった生徒がいる」と呼ばれて私がプールサイドに行った時には、自力で上がってました。生徒は「片足つって、大丈夫かもと思ってたら、もう片方もつり出した」と言っていました。今考えると、自分で判断できた生徒だったので良かったです。

(4)質問

水難事故については、「just 4  minutes」と本で読んだことがあり、それを先生方にも伝えてきました。これって、間違いないですか?情報が更新されてたら、教えてほしいです。

回答:「溺水の4分間」についてはネットで調べたところ1つの動画8)しか見つかりませんでした。この動画では、水没者は発見からの4分間でどこまで処置ができるかというシナリオ本の紹介をしています。4分間の根拠はなさそうです。

文献

1)Int J Aquatic Research and Education 2021 May;13(2):Article 5

2)令和5年水難の概況 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r05_suinan_gaikyou.pdf

3)https://www.redcross.org.uk/stories/health-and-social-care/first-aid/five-things-to-know-about-drowning-in-open-water

4)Resusc Plus 2023 Jun 8:14:100406

5)Resuscitatin 2017 Jun:115:39-4

6)https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/255196/9789241511933-eng.pdf?sequence=1

7)https://www.cdc.gov/drowning/prevention/index.html

8)https://www.facebook.com/reel/1213220463614440

 

 

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