260718最新救急事情(272)アドレナリン点鼻薬ネフィー(R)

最新救急事情

月刊消防 2026/01/01号 48(01), 通巻559号 p64-5

アドレナリン点鼻薬ネフィー(R)

目次

はじめに

救急現場で欠くことのできないアドレナリン。救急隊員にとっては心停止時の蘇生薬であり、アレルギーを持つ人にとってはアナファイラキシーショックの時に自分を救ってくれる大切な薬である。このアドレナリン、執筆時点では静脈内投与か筋肉内投与しかできない。

注射でしか投与できない薬が、飲んだり点鼻で効くのならどれだけ楽だろう。今回紹介するネフィー(R)は、アナフィラキーショックの時のエピペン(R)に代わる薬剤として日本でも製造販売承認を受けたアドレナリン点鼻薬である。薬価収載は2025年11月とのことなので、この原稿が出る頃には入手可能になっているだろう。発売前で救急隊員や教職員への使用許可は出ていないが、発売されれば医師以外の第三者も使えるようになるはずだ。今回はネフィー(R)についてお伝えする1)。

ネフィー(R)

 

大きさは5.72×4.45×1.91cm。手のひらに入る大きさである。専用のケースもある。形は注射器で、指をかける翼を大きくしたものだが座薬のようにずんぐりしている。注射器の内部にはアドレナリンが入っている。注射器の先端を鼻腔に入れ、押し子を押すことでアドレナリンが鼻腔内に噴霧される。

自分で投与する場合は右手を使うなら右の鼻腔に、左手を使うなら左の鼻腔に噴霧する。これは薬を頭のてっぺんに向かって噴霧するというう縛りがあるためである2)。鼻閉、鼻出血があれば効果が減弱するので、通っている方の鼻腔に投与する。次に119番通報して消防にネフィー(R)を使ったことを告げて救急車到着を待つ2)。

エピペンと同じく、追加投与も認められている。1回の投与で効果がない、もしくは一旦緩和した症状が増悪してきた場合には初回投与から10分後に同側の鼻腔からもう1本投与する。同側の鼻腔に投与した方が反対側の鼻腔に投与するより血中濃度が上昇するのがその理由である。

適応は体重15kg以上。15kg未満の患者への投与も添付文書では「救命を最優先し、患者ごとの症状を観察した上で慎重に判断すること」となっており投与も可能のようだ。容量によって2種類が認可されている。アドレナリン1mgを含有製剤は体重30kg未満の患者に、アドレナリン2mg含有製剤は30kg以上の患者に投与する。いずれも常温保存で有効期限は2年である。

効くのか

エピペン(R)は筋肉に注射するからすぐ効くのはわかるが、ネフィー(R)はちゃんと効いてくれるのだろうか。血中濃度を測定すると、エピペン(R)では注射直後に血中濃度が急激に上昇し、その後ゆっくり低下していく。ネフィー(R)では立ち上がりがゆっくりで投与30分後に最高血中濃度となり、その後エピペン(R)と同じカーブを描いて低下していく。血圧のデータではエピペン(R)では投与後5分後に最も血圧が上昇し、その後低下していく。ネフィー(R)は投与後20分まで血圧が上昇し、その後低下していく。

実際にアナフィラキシー患者15例に投与した結果では、投与後15分までに主症状が改善した患者割合は1mg製剤で83.3%(5/6例)、2mg製剤で66.7%(6/9例)。副作用発生頻度は40%(6/15例)であり、主な副作用は振戦3例(20%)、鼻粘膜障害2例(13.3%)であった。

エピペン(R)との使い分け

このネフィー(R)、添付文書ではたった15例だけの検討なので、アナフィラキシーに効くのは間違いないだろうが、その切れ味、投与してすぐ目に見えて患者が楽そうになるのかが全然わからないアナフィラキシーショックでは重症喘息により発症から数分で死亡することもあるが、そのような劇症例では鼻粘膜の血流も低下するだろうから、薬の吸収が症状に負けてしまわないだろうか。一方でエピペン(R)は注射してすぐ患者が楽になるのがわかるし、劇症例への効果も確立されている。

ただ、注射不要で小さくて簡単に持ち運べるのは大きな利点である。エピペン(R)では必要とはいえ注射を嫌がる患児を押さえつける必要があったが、ネフィー(R)は小児であっても自分で使えるし救急隊や教職員が使う時も誰かに頭を固定してもらうだけで良い。症例が蓄積していけばエピペン(R)との使い分けもわかってくるだろう。

インスリンはまだか

この100年間、経口投与や鼻腔投与が待ち望まれてきたのがインスリンである。患者数の多さや薬剤の重要性からもインスリンの経口薬が欲しい。だがまだ研究段階に留まっている。ナノテクノロジーの進歩により経口薬誕生の可能性も出てきた3)ようなので、こちらも期待したい。

文献

1)ネフィー(R)添付文書 https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071844

2)ARS Pharma https://www.neffy.com/

3)Angew Chem Int Ed Engl. 2020 Nov 2;59(45):19787-19795.






 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました