260722救急隊員日誌(257)知命(50歳)にして思うこと

救急隊員日誌
月刊消防 2026/01/01, 48(01)通巻559号 p82
いそじ

今年、50歳になります。
自分ではまだまだ若いつもりでいました。
現場でもどんな資器材でも担いで走るし、夜中の出動も全然平気。
後輩には「まだまだ負けない」と笑っていた。

……ところが、ある日ふと身体の異変。
肩の痛みが抜けない。眠りが浅くなる。なんとなく息切れがする。
「まあ、疲れが溜まってるだけだろう」
いつものように、“大丈夫”で片づけかけたけれど、
ふと頭をよぎったのが、居酒屋のトイレの張り紙「親父の小言」的なあの言葉。

「体は資本 無理は利息 倒れりゃ元本消えるだけ」

最初に見たときは笑ったけど、よく考えると深い。
健康も体力も、預金みたいなもので、若いときは多少引き出しても問題ないけど、
利息(=疲労)を積み上げすぎると、気づいたときには元本(=体)が消えてる。
そういう人、これまでの人生でも何人も見てきた。

「若いころは平気だった」と言って無理する人も多い。
けれど、今の自分の“体力残高”は、そのときとは違う。
無理の先にあるのは、後悔と通院、そしてしばしば“もう戻らない日常”。

それにしても、我々救急隊というものは、他人の身体の変化にはすぐ気づくのに、
自分の身体の不調には、なかなか鈍いものだ。
「顔色悪いな」「バイタルおかしいな」「言っていることがおかしいな」
傷病者さんには気づけても、自分のこととなると見て見ぬふりをする。

医者の不養生ならぬ、救命士の不養生


笑い話ゃなく、そろそろ笑えない歳になってきました。

というわけで、同志諸君。
身体を労ってください。
若いと思ってる今こそ、丁寧に、慎重に。
壊してからゃ、回復には倍の時間がかかります。

そして何より、自分自身が“大丈夫”かどうかを、ちゃんと認める力と姿勢も忘れずに。

年齢を重ねると、「体力」はもちろん、「気力」や「回復力」も少しずつ変化していきます。
だからこそ、無理をしない習慣を今から身につけておくのが本当の“備え”なのかもしれません。
自分を過信せず、でも悲観もせず、ゆっくりでも前に進む。
それが、この仕事を長く続ける秘訣だと、ようやく気づき始めました。

いつかまた、後輩から「元気ですね」と言われたとき、
「ちゃんとメンテナンスしてるからな」と胸を張れるように。

そうして積み重ねた日々こそが、“生涯現役”を支えてくれるはずです。

健康管理も技術のひとつ。
体調を整えることは、出動に備える大切な準備行動です。
なにより、健康でなければ誰かを助けることはできない。
だから、まずは自分を大事にするところから始めていきましょう。

体力も、気力も、そして仲間との笑顔も――全部、大切な“資本”なのです。

明日はストレッチに詳しい後輩に柔軟を教わろうと思います。
意地も筋(す)も、張りっぱなしでは切れてしまう。


だからこそ――
ベテランの“意地”を通すために、“筋”はしっかり伸ばしておくのです。

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