060706日本版救急蘇生ガイドライン

 
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060706日本版救急蘇生ガイドライン


手技

速報+日本版 アルゴリズム 気道確保と人工呼吸 心臓マッサージと除細動 小児・乳児 応急処置 訓練・口頭指導・一般への普及

最新救急事情

心マ:呼吸=30:2 現場についたらまずCPR 心マなくして蘇生なし 変わる救命講習 新しい応急処置 日本版救急蘇生ガイドライン


 今年4月から日本版蘇生ガイドラインの骨子が五月雨式に公表されている。またこの文章が本に載る7月には単行本として出版されている予定となっている。同じILCORから派生したものなので内容は当然ながらAHAやヨーロッパ版とほぼ同じである。今回はAHAなど先行しているガイドラインと現在まで発表になってる日本版ガイドラインの骨子との相違点を述べる。

一般人向けBLS

 乳児から成人まで一つのアルゴリズムにまとめられた。呼吸の確認の項目では「心肺蘇生法を指導する際には、喘ぎ呼吸とはどのような呼吸かを具体的に示し理解を得る必要がある」として、救命講習において死戦期に見られる呼吸様運動を見分ける指導をするように求められている。呼吸確認後の最初の2回の息吹き込みは省略可能とされていて、このあたりはAHAとヨーロッパの中間のようだ。
 面白いのは「CPRの開始手順」の項目で、マウスツーマウスに対して長文の但し書きが載っている。つまり、「人工呼吸(特に口対口呼気吹き込み)は、心肺蘇生を行なう際の精神的、物理的な障壁となることがある」と述べ、顔についている吐物を拭いたりフェイスシールドを取りに走る時間があったら「人工呼吸を省略して直ちに胸骨圧迫を開始すべきである」としている。また指導上の留意点として 「救助者が混乱している場合やCPRに自信がない場合には、躊躇せず胸骨圧迫のみのCPRを口頭指導するのが合理的である」と述べている。この提案の理由として日本では心マのみのCPRのほうが呼吸+心マより蘇生率が高かったことを文献を挙げている。骨子で文献が上がっているのはこの項目の他は2本だけであり、ガイドライン作成者が心マのみの蘇生にどれほど注目しているかが伺える。
 心マの1サイクルあたりの回数である30回については、「30回はあくまで目標であり、回数の正確さにこだわる必要はない」と述べている。さらに心マのテンポについても「数え歌や童謡を応用する方法は有効」としている。一般人へ少しでも抵抗なく心マをしてもらうための配慮だろう。15:2のときは「あったまてかてーかー」「そうだ、アンパンマン」「幸せは、歩いて来ない」などいろいろな歌が使われたのだが、さて、30回になるとどんな歌があるのだろう。
 除細動のエネルギー量はAHAと異なっている。単相性の場合、AHAでは放電回数に関係なく360Jだったが、日本では最初に200Jで放電、二回目以降のエネルギー量は最大量を360Jとしている。つまり、現在ICLSで教えている200J-300J-360Jそのままでいいようだ。これには単純化を図る面からは少し疑問を感じるのだが、アメリカ人と日本人の体格の差を考慮したものだろうか。二相性でも二回目以降の放電エネルギー量は初回エネルギー量と同等か多くするとしている。

医療者向け成人BLS

 小児と成人の区分について詳しく述べている。一般人向けは1歳から8歳までを小児としている。これに対して医療者向けでは1歳から15歳程度の思春期までとしており、いろいろ説明している。この記載の相違については、生理学的観点からも国際基準から見ても思春期までが妥当なのだが、小児用パッドが8歳までなので区切ったと言っているようだ。「ようだ」というのは、成人BLSと小児BLSの双方に年齢区分が書かれているものの、なぜくどくど説明しているのか分からないためである。小児BLSで「小児科」が2回、「施設」が5回も出てくることから、小児科(病院および学会)への配慮もあるのだろう。
 救急システムについては、指導上の留意点の欄に「各地域の医学的見地に基づいて救急医療サービスの質を管理する体制」という言葉が2回出てきており、MCが救急システムの根幹であることを強調している。
 AHAガイドラインを読んだ救急隊員からは「本当にできるのか」と言われたラリンゲアルマスク(チューブ)による非同期CPR。心マと人工呼吸を全く同期せずにお互い独立したリズムで行うようにAHAでは述べている。それに対して日本版では「適切な換気が可能なら非同期で行う」とかなりテンションが低い。きっと日本版を作成中にいろいろ反論が出たのだろう。

医療者向け小児BLS

 脈拍が一分当たり60回を切っていてチアノーゼなどが見られれば心マを開始する。心マは胸の厚みの1/3までとし、AHAで述べている1/2は解剖学的観点から深すぎるとしている。また心マのみのCPRは小児の場合はやむを得ない場合のみで人工呼吸ができない時には「せめて胸骨圧迫を実施」という否定的な論調になっている。心マ要員の交代は5秒以内となっているのだが、これはちょっと長過ぎる気がする。

応急手当

 今までこの項で連載したのと違う点は2つである。
 一つ目、外出血の止血で、圧迫するガーゼが血でべちゃべちゃになった場合には「それらを取り除き、新たなガーゼや布で圧迫し直す」としている。この連載では血で濡れてもその上からさらに押さえるとしていた。この理由として、ガーゼが濡れるのは「出血点に有効な圧迫が加わっていないことが原因であろう」としている。多分言いたいのは「押さえる場所が悪いのだから、ガーゼを剥ぐってもう一回出血点を確認しろ」ということなのだろう。
 二つ目、創の処置で、傷を洗い流した後はAHAでは抗生剤軟膏を付けることになっていたのだが、日本版では軟膏の話は書いていない。何でもかんでも抗生剤を塗りたくるのは耐性菌の発生を促しているようでちょっとなと思っていたのだが、ガイドライン委員も同じことを考えていたようだ。

これから移行期間へ

このように、今までこの連載で述べてきたことがほぼそのまま日本版に取り込まれており、著者としてはかなりほっとしている。また日本版にはものの言い回しから書いた人の心情を推し量る楽しみもある。この秋には救急隊員への移行処置が始まりそうである。文章で書くと変更点は膨大なような印象を受けるものの、実際には単純化のおかげで覚えることはそんなにない。すきっと覚えて救命率の向上を目指そう。

引用文献
http://www.qqzaidan.or.jp/qqsosei/guideline.htm


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06.7.6/9:05 PM

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