130525出過ぎた行動

 
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130525出過ぎた行動

作)ゆうたん

 真夏のある休日の夕刻、一台の乗用車が署の前に止まり、運転手が玄関へ向かってきた。

 夏は海水浴客も多く道を尋ねてくる人も多いことから、この日もそんなものだと思っていた。

「この辺に病院はないでしょうか?」と尋ねられたので、署の近くに診療所があることを伝えた。その診療所までは署から車で2分程度の距離にあり、分かりやすい場所ではあるが念のためと案内図を手渡した。病院までの道を尋ねてきたということは、病気か怪我なのかなと尋ねてみると、子供が砂浜でバーベキューの焚火によって熱くなった石を踏み火傷をしたらしい。

 案内図を渡したがなかなか立ち去る気配も無いので、ちょっと子供の様子をうかがってみることとした。

 乗用車の後部座席には小学校低学年の男の子が母親に抱きかかえられていた。火傷をした足を見せてくれるようにお願いすると、右足の裏を見せてくれた。顔を近づけなければ分からないような小さな水疱があり、どうやらそこで焼けた石を踏んだらしい。痛いのかと尋ねても、さっきまでは痛かったが今はそれほどでもないと言う。

 「ではお気をつけて」

 そう言ったがやはり車は動かない。それどころか両親が車から出てきて、このまま救急車で病院へ連れていってくれないかと言い始めた。

 海水浴場から署まで自分の車で来ることができたのだから、署と目と鼻の先にある診療所まで行けないはずはない。しかも子供は元気で、火傷も処置の必要がない程度である。搬送を拒否するわけではないが、合点がゆかず「ご自分の車でこのまま行けませんか?診療所にはこちらからも連絡しておきますから」と伝えてみたが、やはり救急車で搬送して欲しいとのことだ。

 仕方なく救急車を車庫から出し乗用車に横づけし、車内へ母親が抱きかかえたまま収容。病院へ収容依頼する際に求められるバイタルを測定し、再度火傷部位の詳細な観察などを行うと、時間はすでに2分以上経過している。バイタル測定が終わり、診療所へ収容依頼の電話をし、了解を得て出発となったが、そのまま家族が直接乗用車で連れていっていればすでに診察室へ入っていると思われる時間が経過していた。救急車の真後ろを父親が運転する乗用車がついてきていた。

 夜間・休日等は、救急車で行かないとすぐ診てもらえないと思っている人は多く、文字通り軽い気持ちで救急車を呼ぶ人は後を絶たない。この両親も、救急車で行けばすぐ診てもらえると考えていたようだ。

 救急隊の私が様子を伺いに行ったことで、両親はこのまま救急車で連れていってもらおうと考えたらしい。出過ぎた行動を悔いながら、作らなくても良かったはずの報告書作成に執りかかった。


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13.5.25/1:22 PM

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