2000/12/22(Vol.37)号「どきどきする話」

 
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2000/12/22(Vol.37)号「どきどきする話」

どきどきする話

読者のみなさん、おはようございます。ここ興部は雪が少ないですね。旭川は連日の降雪で50cm以上雪が積もっています。名寄から下川に入ると雪が急に少なくなり、こちらではアスファルトが出ているところも多くてびっくりしました。でも、流氷がやってくると寒くなるのでしょうね。32号で触れた新しい医師室は、壁はできましたが配線が済んでいないため、今日も国保病院の事務室で書いています。町議会がもうすぐ始まり予算も決まるとのことで、休みというのに事務職員4人が出てきて仕事をしています。

今回は続けて心臓の病気の方がやってきました。初めは中年のご婦人で、急に心臓がドキドキし出したというので救急車を呼んでの来院。家で何のきっかけもなく急にめまいがし、心臓がドキドキしたと言います。来院時にはすでに具合が良くなっており、脈を取っても心電図検査をしても異常はありません。話によると、数日前にも、また1年前にも同様のことがあったようです。本人には「何ともないから帰っていいが、また再発するよ」と言って帰しました。ところが2時間後にまたドキドキしたと言って今度は自家用車で来院しました。今回も診察では全く異常はありません。脈も1分当たり70回で正常です。ドキドキを抑える薬を持たせて帰しました。

この症例で一番考えやすいのが発作性頻拍症です。心臓の脈の速さを決めるペースメーカーは心臓の右上にあります(洞結節といいます)。しかし、ペースメーカーとなりうる場所は他にいくつかあり、それらは脈の速いものが遅いものを制して心臓全体の脈の速さを決めるようになっています。心臓の右上の脈が最も早く、心臓の下に行くにつれて脈が遅くなるので、結果として心臓の右上が全体の脈の速さを決定しているのです。

ところが、心臓のどこかでとんでもなく速い脈を打つ場所が出現すると、元々のペースメーカーはその場所の早さに負けて、心臓全体がドキドキするようになってしまいます。心臓がむやみにドキドキすると心臓に血がたまらないうちに血を押し出す空うちのポンプ状態になってしまい、全身に十分な血が回らないので、めまいがしたり脱力感があったりします。通常は放っておけば治りますが、長時間続く場合や自覚症状が強い場合、頻回に発作を起こす場合には薬を処方します。老人で動脈硬化が強い場合にはこのドキドキが狭心症や心筋梗塞を起こすきっかけ、もしくは心筋梗塞の結果でもなることがあるので、精密検査を勧めます。

もう一人は高齢の男性で、左胸から脇にかけて30分間痛みが続くと言って来院しました。この方も来院時には痛みは治まっており、少し熱っぽくてだるいと言います。心電図検査では異常はありません。

この痛みは中年女性に多く、心臓神経症と呼ばれるものです。狭心症や心筋梗塞の不安を訴えますが、見た目には重篤感はありません。心臓が原因の痛みは胸の真ん中が痛くなり、背中や左肩に伝わっていきます。

狭心症は運動時や明け方に胸の真ん中から左肩にかけて3分以内の痛みを訴えるものです。心筋梗塞はもっと長時間ですが、心臓に血が回らず筋肉が腐っていくだけにその痛みは激烈で(まれに痛くないものもある)、心電図検査ではごく初期を除いて必ず異常が見られます。患者には心配いらないことを伝え、風邪薬を持たせて帰しました。

先月お伝えした今井睦は、コンビニで声をかけられたといって大変喜んでいました。借金王もしくは真っ赤と異名を取る彼は今まで使っていたiMacからiBookに乗り換え、新たにデジカメとCDRも購入しました。iMacは私の知人に半額で売ることになりました。興部国保病院に持ってきたiBookは青みがかった灰色でとてもきれいです。デジカメは電池が切れそうでした。

次は自分のホームページを作りたいと言ってました(?)ので、近い将来このメルマガでURLを紹介できると思います。今井睦への励ましのメールはビッグマウス(mkma72@d2.dion.ne.jp)まで。

また、32号でお伝えした救急の勉強会(OPS, Okoppe ProgressiveSociety)でも参加申し込みをいただきました。ありがとうございました。私がこの町に出張してくる限り続けようと思っております。都合のつかないときには欠席して構いません。細く長くやりたいと思っています。

00-12-17 AM9:50

玉川 進

旭川医科大学第一病理学講座


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