能祖公二、樋掛弘一、今井博、日村義彦:口頭指導用CPRイラストの作成と電話帳掲載への取り組みについて。プレホスピタルケア 2002; 14(2通巻44):27-31
口頭指導用CPRイラストの作成と電話帳掲載への取り組みについて
釧路市消防本部 能祖公二・樋掛弘一・今井博・日村義彦
<はじめに>
救命率の向上を図るため、全国でCPAに対する電話による口頭指導が取り入れられ、その効果も多数報告されている。しかし、口頭指導は言葉だけによるものであり、心肺蘇生法を全く知らない人に対しては正確に実施できるか不安が残る。
そこで我々は心肺蘇生法の知識がなくてもイラストを見ることによって心肺蘇生法の手技精度の向上、時間短縮等が図れると考え、口頭指導用のイラストを作成した。
しかし、単に各家庭や事業所にイラストを配付しても紛失等でいざという時使用できない出来ない可能性がある。
そこで、その活用方法として、多くの家庭に配付されている電話帳に着目し、ハローページに掲載されている防災情報(通称レッドページ)を有効利用するためイラストを掲載すべく関係機関に対し取り組みを行ったので報告する。
<経過>
取り組み経過については、はじめに平成12年2月に北海道防災消防課及び釧路支庁地域政策課に掲載可能を確認し、以降担当窓口は釧路支庁地域政策課となり、具体的な打ち合わせを行った。
同年8月電話帳の配付区域である関係4町村(釧路町・白糠町・音別町・阿寒町・鶴居村)に口頭指導にイラストを用いることへの有用性について調査を依頼する。
同年10月地域政策課よりイラストは口頭指導の目的だけでは掲載できず、あくまで応急手当の普及啓発用とすること又、管内町村の了解も必要と連絡を受ける。
同年11月釧路市及び関係町村による調査の結果、イラストの有用性が確認された。(別途発表)
平成13年1月管内町村にイラストを提案し了解を得る。
先に管内に調査依頼したこともあり、異義なく了承された。
同年2月イラスト原稿完成し釧路支庁へ提出。
同年4月イラスト原稿は掲載4ヶ月前までにNTTへ提出しなければ間に合わないとのことで、釧路支庁より提出。
同年8月電話帳発行予定。(表1、2)
<掲載内容>
イラストの作成に取り組む前に、応急手当について電話帳に掲載している都市を調査したところ京都・長野・鳥取の3府県あった。しかし、イラストが小さく分かりづらい等、いずれも口頭指導に用いるのは難しく、新たに独自のものを考えなければならなかった。
具体的には、いざという時誰でも探し易いように、大きめのタイトルを上部に配置し、下部には普及啓発用の語句を配置した。
また、向かって左半分にCPRのイラストを配置、目線が必要以上動かないように上から順番に手技が流れていくよう配慮した。(図1)
イラストについては心肺蘇生法を全く知らない人や高齢者等が見ても理解しやすいものとしなければならないため、試行錯誤を繰り返し、特に心臓マッサージについては、圧迫位置や手の組み方が分かりやすいようにと工夫を重ね最終的に立体的なものとした(図2)。
イラストは普及啓発用の説明等を入れたため、当初我々が考えていたものより小さくせざるを得なかったが、口頭指導に利用するには概ね納得のいくものが出来たと考える。
<考察>
当市の過去3年間のCPA発生場所は、住宅を含めた屋内の発生率が約83%あり、電話帳の配付率がほぼ100%であることを考えると、充分にイラストを活用出来る可能性がある。
また、過去1年間の口頭指導を見ると、心肺蘇生法の全てを実施していたものは6件33%あり、一部及びなにも実施していなかったものが12件67%あった(図3)。
実施できなかった理由は、動揺等いろいろ考えられるが、イラストをみることで実施してもらえる可能性がある。
また、経費についても内容が防災情報ということで掲載無料であり、今後他都市が掲載に取り組む場合のやり易いと思われる。
さらに、救急講習の場で今回作成したイラストを使い講習の効果を高めたり、電話帳掲載について広く市民に知らしめることも可能である。
今後は実際に使用して例の追跡調査や心肺蘇生法が改正されるのに伴い、内容を再検討し、更に良いものを作り上げていきたい。
<結語>
口頭指導用のイラストを作成し、電話帳掲載への取り組みを行った。
今回我々が作成したイラストは、有用性も確認砂れており、電話帳を活用することで一人でも多く救命できればと考える。
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