赤平正淑、藤田孝幸、水越敦之、八木洋幸、奥平浩之、兼古稔、玉川進:隊員の肩に付ける輸液ホルダー。プレホスピタルケア 2011;24(1):65-67

 
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救急の周辺

 

赤平正淑、藤田孝幸、水越敦之、八木洋幸、奥平浩之、兼古稔、玉川進:隊員の肩に付ける輸液ホルダー。プレホスピタルケア 2011;24(1):65-67

 

11020隊員の肩に付ける輸液ホルダー

赤平正淑(あかひら まさよし)

私たちの工夫 投稿

隊員の肩に付ける輸液ホルダー

 

赤平正淑(1)藤田孝幸(1)水越敦之(1)八木洋幸(1)奥平浩之(1)兼古稔(2)玉川進(3)

(1)富良野広域連合富良野消防署占冠(しむかっぷ)支署
(2)北海道上富良野(かみふらの)町立病院外科
(3)旭川医療センター病理診断科

著者連絡先
赤平正淑(あかひら まさよし)
akahira.JPG
富良野広域連合富良野消防署占冠(しむかっぷ)支署
〒079-2201北海道勇払郡占冠村中央
電話 0167-56-2119
FAX 0167-56-2738

akahira

はじめに

平成18年4月から救急救命士による『薬剤投与』(エピネフリン)が医師の具体的指示下で認められた。これによって、救命処置としての静脈路確保の重要性が高まった。

一方、現在の救急活動は3名体制が多く、傷病者搬送時には隊員の手がふさがっている状況がほとんどである。そのため、現場で静脈路確保を実施した後の移動の際では隊員が輸液バッグを持つことはまず不可能であり、関係者に輸液バッグを持ってもらうか、クレンメを閉めて輸液バッグを担架に載せるのが一般的だが、前者は関係者の協力が得られない場合があり、後者は血栓による輸液路の閉塞の危険性がある。

我々は、これらの欠点を解消すべく「隊員の肩に付ける輸液ホルダー」を考案し運用しているので紹介したい。

作成

(1)部品(図1)

市販されている以下の4つを用いる。

図1
作成に用いる部品

1:締め紐取り付け金具
2:ワンタッチバックル
3:多目的回転式フック
4:カラビナ

(2)組み立て(図2)

図2
組み立て

 

(3)装着

救急衣や感染防御衣の肩章のボタンを利用する。直径15mm以内のボタンなら使用できる。

肩章のボタンを縫いつける際には「1:締め紐取り付け金具」の厚さを考慮して少し余裕を持たせること。

図3
ボタンに挟み込み肩章を被せる

「1:締め紐取り付け金具」の穴にボタンを挿入した後、下方に引っ張り固定する(図3)。

 

図4
輸液バッグをぶら下げたところ

「4:カラビナ」に輸液バッグをぶら下げる(図4)

図5
使用しないときにはひもで固定する

輸液バックをぶら下げないときには「4:カラビナ」に紐を通しマジック式階級章に挟み込むことでぶらつきを防ぐ(図5)。

考察

今回の肩に付ける輸液ホルダーの利点は以下のとおりである。

(1)関係者等の協力が不要
(2)ガートル架が不要
(3)輸液滴下の目視が容易
(4)軽量
(5)隊員相互の着脱が容易

特に威力を発揮するのは階段や狭い通路での搬送時である。

問題点として

(1)輸液中は下方に引っ張られ、重量感がある。
(2)傷病者の直近に位置するためチューブの弛みが生じる。

また、シミュレーションの際に、移動時の布担架使用やメインストッレチャーの立脚時にチューブの『折れ』や『抜去』が見られた。これはこのホルダーの特性に慣れてないことが原因であり、シミュレーションを重ねることで問題は解消された。現在までの現場での使用ではチューブの「折れ」はごく少数であり、「抜去」は起こっていない。

おわりに

今回製作した「隊員の肩に付ける輸液ホルダー」を救急現場というシナリオのない厳しい状況下の中で使用する救急隊員のアイテムとして活用していただければ幸いである。





 

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