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月刊消防2001 7月号「最新救急事情」第26話

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この原稿は東京法令出版の「月刊消防」並びに「プレホスピタルケア」に投稿された各原稿を、AEML会員のために、非公開ページにて公開するものです。掲載にあたって承諾いただきましたAEML会員の皆様に感謝申し上げますとともに、自分たちの学習資料として存在するページであることを認識し、他への持ち出すなどの行為は厳に謹んでください。


月刊消防2001 7月号「最新救急事情」第26話

山岳と救急活動

山岳峠道における救急活動に対しては常に悪条件が予想される。その中での救急活動は、救急隊員の力では限界がある。しかし、傷病者のために最善を尽くすべく、「今出来る事」「今後に向けてやらなければならないこと」を再確認し行動する必要がある。

事例:北海道上士幌町

上士幌町三国峠は(町境界まで)上士幌消防署より54.18キロメートル、上川消防署より52.20キロメートルとほぼ同距離であり、出動より現場到着までに要する時間は40〜50分を要する。過去3年間を見ても最も現場到着に要した時間で55分であった。

通行人より「三国峠にてワゴン車が橋の欄干に衝突し、負傷者が数名いる」との通報。現場把握できないまま7時20分出動した。同時に上川消防救急隊も出動した。三国峠頂上まで走るが事故現場はなく、上川町側へ10km程走行し現場到着となった。現場はワゴン車が橋の欄干に衝突し傷病者4名という状況であった。既に、上川消防救急隊が先行しており処置済みであった傷病者2名を引き継ぎ搬送協力した。

「乗用車対ワゴン車の衝突による事故発生」との通報により18時41分救急隊出動。追加情報なく30分後現場到着。ワゴン車が道路中央で運転席側前方を大破。運転手1名下腿部を負傷しているが、救出可能な状態。乗用車は前方を大破し運転手1名大腿部より挟まれ、救助隊が到着するまでは救出不可能な状態であった。

観察ではワゴン車の傷病者は下退部に変形が見られ強い疼痛を訴えるが意識レベルJCS-1であり、下退部の固定処置を施し車内へ収容した。乗用車の傷病者は完全に大腿部より挟まれている状態で意識レベルJCS−200、脈拍70回で橈骨動脈にて触知可能。浅速呼吸のため酸素投与を開始。12分後救助隊到着。救助開始25分後救出完了。車内収容後様態急変し、JCS−300、下顎呼吸。CPAとなりCPRを開始。2次病院への搬送を考えるが、現場より1時間強時間を有する事から、乗用車の傷病者のみ直近病院へ搬送を依頼し収容する(覚知から病院収容要時間98分間を要した)。病院収容後も院内にて処置協力をすべく救急隊員の補充をし、ワゴン車の傷病者を引き続き帯広市内へ搬送開始し収容する(覚知から病院収容要時間138分間を要した)。

これらの事例以外にも山岳峠における救急活動について、通報者は、第3者からの通報が多いため事故詳細は殆どが不十分な内容であり、通信業務による情報収集要領の徹底が要求される。また夜間出動の事例では、体制整備不足により救助隊を要請し出動までに時間を要したことから、救助活動が遅れてしまったことがある。人員不足はどこでも苦慮しているところであるが、最大限努力し全ての救急出動に対して夜間出動体制の見直しが重要である。

通報の問題

山岳峠の救急活動は患者にとっても救急隊にとっても困難なものとなる。交通量の多い山岳地帯では携帯電話が通じるが、交通量が少ない、もしくは急峻な峠では電話圏外となる1)。この場合、事故にあった患者本人はもちろん、第三者による通報も現場から離れて行われるため場所も患者の状態も不正確となる。不確実な情報を、患者の状態や事故現場の特定まで含めて確実なものにさせるためには、通信員の的確な質問が欠かせない。

また、携帯電話が通じた場合でも直近(もしくは管轄)の消防に連絡が入るとは限らない。登山者の場合には登山記帳場で消防署の電話番号を書いた紙を渡せば済むが、自動車だとそれもできない。事例の峠では消防無線すら不穏状態となるため、車両を何台か出動させ、無線中継業務にあて交信する体制をとっている。

距離の問題

遠い。覚知してから現着まで時速100km以上飛ばして30分かかっている。それから救助に時間をとられて、結局死亡している。もし市中での事故だったなら確実に助かったと思えるだけに残念である。

搬送で威力を発揮するのはヘリコプターである。国も全国にヘリを配備するなどそれを後押ししているが、まだ目に見えるまでは至っていないようだ。98年時点でのヘリの救急災害活用についてのディスカッション2)が公表されているが、3年たった今も何も変わっていないように思える(特に医師の意識の点で)。ただ救急隊員の意識は学会や通達を通じて変わってきているので、出動件数は飛躍的に伸びるかも知れない。

医療行為の問題

だが、もしヘリを依頼するにせよ患者の生命を長時間預かるのは救急隊員である。救急救命士の配備は当然として、救急隊員個人個人の資質を向上させなければならない。このような山岳峠を抱える自治体はえてして小規模で、出動件数もわずか、特定行為に至っては年に数える程度ということが多いだろう。日頃から病院と仲良くして生涯研修を重ねていく必要がある。また、確実な情報ならドクターカーを依頼するのも一つの手である。

結論

1) 山岳での事例は通信員の能力が問われる。
2) 救急隊員資質向上が必須である。

本稿執筆にあたっては北十勝消防事務組合上士幌消防署 杉山知宏 救急救命士の協力を得た。

参考HP
1)http://www.nttdocomo-h.co.jp/sitemap.html
2)http://www1.odn.ne.jp/ahsjapan/panel.html


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