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玉田伸二、鈴木晶、近江誠一、西山英世、野上義、表哲夫、柴野信夫:特集ショック・循環不全(1)事例アナフィラキシーショックの経験-VIPからの検証-。プレホスピタルケア 1994;8(2)30-3



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玉田伸二、鈴木晶、近江誠一、西山英世、野上義、表哲夫、柴野信夫:特集ショック・循環不全(1)事例アナフィラキシーショックの経験-VIPからの検証-。プレホスピタルケア 1994;8(2)30-3

特集 ショック・循環不全

アナフイラキシーショックの経験−VIPからの検証−

旭川市消防本部
  玉田伸二・鈴木晶・近江誠一・西山秀世
旭川赤十字病院救命救急センター
  野上義・表哲夫・柴野信夫

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はじめに

 全身性にじんま疹の発生後、アナフイラキシーショックに陥った事例を経験し、ショックの治療原則であるVentilation,Infusion,Pump(以下VIP)と略す)の観点から我々の行った応急処置を検証した。さらに、院内における治療との比較検討も行ったので報告する。事故概要 平成6年11月9日午前9時頃、63歳の男性が、通勤後間もなくじんま疹が発生したので薬を飲み病院に向かった。その途中、エレベーター内で意識がもうろうとなり、付近の人が救急車を要請した。
時間経過
  覚知:午前8時58分
  現着:午前9時00分
  現発:午前9時15分
  病着:午前9時19分
  現着時の状況

 ビル3階の床で、2人の人に上体を支えられ半坐位をとっていた。傷病者は開眼しており、うつろであったが受け答えのできる状態であった。また、発汗しており、四肢末梢は暖かく全身に紅斑と膨疹がみられた。
 観察結果
  顔貌等:紅潮、発汗、全身皮膚に紅斑と膨疹(図1および2)
  意識:JCS1
  呼吸:20回/分(正常音)
  脈拍:65回/分(総頸値、橈骨動脈は触知微弱)
  血圧:76mmHg(上腕動脈の触診)
  SpO2:95%
  心電図:不整脈無し(図3)
  その他:便失禁有
  主訴:虚脱感、若干の呼吸困難、前胸部痛、前頭部痛、口渇および便意
現病歴:4〜5年前からじんま疹が発現するようになり、会社の近医皮膚科
  で治療を受けていた。じんま疹の原因は不明であった。

 今回の発症の2〜3週間前、屋内で仕事中に急にじんま疹が発生し虚脱感に襲われたが、近医から処方された内服薬で症状は治まった。今回は、発疹発現時に持ち合わせの薬がなかったため、かなり以前に処方された薬効の強い抗ヒスタミン薬を半分量だけ服用した。

応急処置アレルギーによるショック状態と判断し、ショック体位をとり、酸素5リットル/分の投与を開始した。さらに、受け答えができたので、病歴等を聴取するとともに、状況の説明と励ましを与えながら搬送した。
 院内経過
  ・救急外来搬入(午前9時20分)
  意識:JCSl
  脈拍:68回/分
  血圧:60mmHg(収縮期圧のみ)
  呼吸:24回/分(喘鳴等無し)
  その他:全身発疹、便失禁少量
  処置:酸素吸入、ショック体位の継続。静脈路確保による酢酸加リンゲル
     液およびアルブミン製剤(PPF)の輸液。塩酸エピネフリン1アン
     プルの200倍希釈液(5μg/ml)の静注、以後昇圧効果を確認しなが
     ら追加。ステロイド剤静注、尿カテーテル挿入。心電図等の諸検査。
  血圧:9時30分、83/41mmHg
     9時35分、107/55mmHg
 ・ICU入室(午前10時)
    主な検査結果を表1に示した。午前11時には発疹はほぼ消退した。

表1 ICU入室時の検査値(10時32分)
PH・・・・・・・・・・・・・・7.35
PaCO2・・・・・・・・・・・42mmHg
PaO2・・・・・・・・・・・・187mmHg
BE・・・・・・・・・・・ -2mmol/リットル
WBC・・・・・・・・・・・・・7400/μリットル(翌日14710/μリットル)
Plt・・・・・・・・・・・・・24×10

4/μリットル
Ht・・・・・・・・・・・・・・41%
CVP・・・・・・・・・・・・・14cmH20

・退院:翌日午前中に、後遺症なく無事退院した。

考察 アナフィラキシーショックの病態は、血管の透過性亢進ないし拡張によって起こる浮腫と循環血液量減少性ショックである。発生機序を大別すると、IgE抗体を介するI型アレルギーによる狭義のアナフィラキシーと、I−gE抗体を介さないアナフィラキシー様反応とになる2)。いずれにしてもI型アレルギーの症状が出現する。原因は、薬物、食物、ハチ刺傷、ハウスダスト、運動、物理的な刺激など様々である。

 診断は一般に、問診や免疫グロプリン価、好塩基球、リンパ球、好酸球などの血液検査、皮膚反応、誘発試験などによって行う3)。

 アナフィラキシーの治療は、血圧低下、気管支収縮、喉頭浮腫など生命に危険を及ぼす症状に対する処置が優先され、その第1選択薬はエピネフリンである4)。循環血液量の減少に対しては、エピネフリンで血管透過性元進を抑えた上で、中心静脈圧をモニターしながら十分な輸液を行う。さらに、アレルギーの進行を食い止めるため、ステロイド、抗ヒスタミン薬などが用いられる。

 本事例においては、院内経過で述べたように、エピネフリン静注後、血圧低下は著明に改善された。

 次に、ショックの初期治療におけるVIP、すなわちV(換気)、I(輸液)、P(心機能改善)から、今回の搬送途上の処置について検証してみた。Vに相当するものは酸素供給であり、今回はマスクにより5リットル/分の酸素投与を行った。これにより組織レベルの低酸素の改善がなされたと思われる。Iに相当するものは、今回はショック体位をとることにより静脈還流の増加をはかることであった。Pに相当するものは、酸素投与とショック体位による心拍出量増加が心筋への酸素供給を増やし、ポンプ作用改善につながったと思われる。加えて激励による不安除去で心拍数が安定し、心臓への負担も軽減されたと思われる。一方、院内の治療をVIPに照らしてみると、救急隊と同様の酸素療法(V)、酢酸加リンゲル液およびアルブミン製剤による循環血液量の増量(I)、エピネフリン、ステロイドによる心血管機能改善(P)が行われていた。

 このように、搬送時の処置も院内における処置も同じようにVIPと良く対応していることがわかった。これらを種々のショックの病態に応じて適用していけば良いと思われた。

 この事例では、原因は判明していないが、入浴時しばしば肛門付近に発疹ができるようであり、また冷たい風にあたってから急に発症したと言っていたことから、物理的な刺激ということも考えられる。さらに、症状改善のための抗ヒスタミン薬が、逆に刺激になっていることも否定できない。本人の談では、ストレスがたまっているときによく起こるとのことであり、ストレスとの関係も考えられる。また、父親が喘息であったことから、遺伝的な要因もうかがわれる。

 今回、発症してから病院搬入まで、幸いにもアナフィラキシーに特徴的な呼吸器の症状が発現しなかったが、喉頭浮腫や気管支けいれんなどによる呼吸困難が生じることもあるので、注意深い観察と迅速な搬送が望まれる。まとめ

 本傷病者は退院後、元気な姿を見せてくれた(図4)。そして、酸素を投与してから楽になったことや、励まされたことで大変心強くさせられ安心したことを語っていた。酸素投与と体位管理の効果を認識したが、それにもまして激励の重要性を再認識した。

 アナフィラキシーの搬送事例は、搬送件数としては少ないが、一旦発症すると短時間で致命的となる極めて緊急度の高い病態である。いかに早く観察判断し適切な処置をするか、そして適切な医療機関を選択するかが重要である。

 今回VIP療法に対比して処置を考えたがここで再びまとめてみたい。

1 酸素投与(0xygen)
2 体位管理(PostureまたはPosition)
3 激励(Encouragement)

 これらを私見としてOPE(Operate)と呼んでみたい。これは「手術する」という意味のほかに「効果がある」という意味を持っており、積極的に活かしていきたいと思う。

【引用文献】
1)清野誠一:ショック・循環不全.救急救命士標準テキスト416;1991.
2)岩本逸夫,巴早苗:アナフィラキシーとは.Emergency Nursing7(2)10〜11;1994.
3)原口義座:アレルギー.改訂救急救命士標準テキスト512;1994.
4)上嶋権兵衛:ショック・循環不全.改訂救急救命士標準テキスト 391:1994.


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https://ops.tama.blue/

06.10.29/9:21 AM





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