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救助の基本+α 狭隘

◎はじめに

「救助の基本+α」シリーズの狭隘編を投稿させていただくことになりました、今治市中央消防署消防士田鍋真平と申します。

はじめに私たちが管轄している今治市は面積419.14k㎡であり、人口は161,861人と愛媛県で2番目に人口の多い市であります。今治市のゆるキャラ、バリィさんは2012年のゆるキャラグランプリ1位を獲得しています。タオルの生産は日本一であり、国内生産量の約5割を占め「今治タオルブランド」は国内のみならず、世界的な知名度を誇っています。

◎狭隘空間における救助・救急・医療活動(Confined space Rescue and Medicine, CSR/M)

大規模地震の発生時には、建物の倒壊や家具の転倒等により、多くの人的被害が想定されます。その中でも倒壊した建物や瓦礫の下などの狭隘空間といわれる状況下で、被災者が取り残され、助けを待っているという事案は過去の災害でも多数発生しており、しかも発災後、時間経過した後でも救助後の救命率が高いといわれています。この狭隘空間内における活動では様々な技術が必要となります。今回はその中のパッキング、フルスケッドを使用した救出方法を主に紹介したいと思います。

◎活動を行うにあたり決めておくべき事項

ICにより隊員の役割分担を行う。

役割・IC(Incident Command, 現場指揮者)

・セーフティーオフィサー:ICの死角となる場所に位置し作業には加わらず監視の徹底を行う。(ICが兼ねる場合もある)

最重要の役目であるため絶対に省略してはいけない。活動を中断させる権限を持つ。

・ボード管理:主にICの近くに位置し各場所から得た情報を集約する。参謀的な役割を担う。

・隊員管理:隊員の体調や進入時間を管理し、内部から得られた情報をICへ伝える。

・パーシャル:パーシャルアクセス(部分的接触)により、バイタルや情報収集を行い、活動を通して要救助者の励ましを行う。

・進入隊員:活動目標、計画をしっかりと立て内部の詳細な情報を得る。時と場合によっては独自の判断も必要となる。

ゾーニングを行いホットゾーン、ウォームゾーン、コールドゾーンを設定する。

(倒壊建物の1.5倍までをウォームゾーンとし警戒線を張る。(状況により変化する))

・ゾーンごとによるPPE(Personal Protective Equipment, 自己防衛装備)脱着の設定をする。

・ゾーニングを活用し医師・看護師の待機場所、指揮本部、前進指揮所、活動隊員の休憩場所を設定する。(活動隊員の休憩場所を設定することで心身のストレスを緩和することができる。)

緊急脱出時の合図の統一(例:警笛3回など)

環境測定、危険度判定を行う。(マーキングの実施等)

建物警戒:ウェッジ(楔)、木切れ、マークなどを使用することにより建物の変化がわかりやすくなる。(写真13)

↑写真1

↑写真2

↑写真3

☆活動を通して不用意な発言は避ける

◎パーシャルアクセス(部分的接触)

地上に出ている身体の一部分もしくは声のみによる観察(写真4,5)(手や足が出ているとは限らない)

写真4

手のみの接触

写真5

足のみの接触

・内部の情報、皮膚の状態、脈など多くのことを知ることができる。

・可能であればライト、水分、毛布などを提供する。

(ライト等、視覚による刺激によりPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)になる可能性もあるので注意が必要である)

・接触時まずは自己紹介を行い、助けに来たことを伝える。

・ボイスコンタクトにより安心感を与える。未来的、希望的な勇気付けも効果的である。

・進入隊員が要救助者と接触後、中と外の情報伝達も行う。

・活動を通しての声かけにより要救助者との信頼関係を構築する。

◎進入

○PPE(自己防衛装備)

・ヘルメット、ヘッドライト、ゴーグル、耳栓、防塵マスク、ホイッスル

プロテクター、ケブラグローブ、ブーツ(原則安全靴)

↑写真6

PEE

シャツ、裾は入れずガムテープなどで留めておく。ベルトの引っ掛かりを防ぐほか、粉塵が内部に侵入するのを防ぐことができる。

○ライト

・多くが暗闇での活動となるため電池切れや、故障する可能性が高く、予備の電池、ライトを持っていく必要がある。要救助者用のライトも用意する。

必ず取り出せる位置に収納しておく。足部のポケットや胸ポケットは避けたほうが

よい。

○コールドゾーンでICが進入隊員の確実なPPE装着と活動目標を確認し、再度隊員管理者が進入前にPPEの最終確認を行う。

○ガイドロープは身体に結び付けず原則手で持ち進入する。ロープの絡まりなどで身動きが取れなくなるのを防ぐ。(写真7)

↑写真7

進入

進入時に要救助者の存在が明らかであれば最初の進入時に最低限必要な資器材(要救助者用のPPE、シート等)を計画的に携行する。

進入隊員に傷病者までの経路、ハザード(上部の確認も行う)、狭隘空間の大きさ、作業場所、セーフティーゾーン、避難経路等の情報が必要である。

進入隊員の人数は、基本的には2名程度で、必要最小限とする。

カメラなどを用いることにより外の隊員により分かりやすく情報を伝えることができる。

ICまたは、管理ボードは進入隊員の時間、体調管理を行う。(写真8)

進入隊員は体力、精神面共に負荷の大きい状態であることを認識しておく。

ICは無理をさせない活動を心がける必要がある。

疲れる前に休ませる。

狭隘空間の大きさによってはヘルメット、プロテクターを外すことも考慮する。

↑写真8

隊員管理ボード

◎観察(JPTECの全身観察の要領で行う)

○パーシャルアクセスでのボイスコンタクトと同じ要領で接触を行う。

○できる限りの範囲で観察を行う。(バイタル測定は1分計測で行う。短縮しての計測では1回の違いにより大きな差が出る。)狭隘空間内では急いでの活動は困難であるため、正確な情報を得る。継続的な観察、詳細な観察をすることで、救出プランが変わってくるので重要である。

○瓦礫災害の病態を把握しておく

(クラッシュシンドローム(挟まれ時間の確認)、コンパートメントシンドローム、

低体温症、脱水症・・・etc)

○精神的ケア(会話の重要性:会話によって脈、血圧を維持していることも!!)

・あせった会話をしない!!

○測定器具は搬送中の故障なども考え、なるべく2系統用意し、要救助者の頭部側に集結させる。

狭隘空間内では身動きが取りづらいため、触れられる位置から観察していくことも考慮しておく。(写真9,10)

↑写真9:足からの観察

↑写真10:上半身のみの観察

◎管理ボード

○主にICの近くで行う。遠ければ活動を把握することが困難になり、近ければ倒壊

時の危険があるため、危険度の低い場所を判断する必要がある。

○参謀的な役割も兼ねているボード管理の近くに器材を集結させることにより活動

がスムーズになる。

○主に内部の状況、図面等(退出してきた隊員により記載)、傷病者の情報、活動隊

員の情報、ハザードを記載する。(写真11,12)

○外にいる隊員は管理ボードの情報が主となるため、正確で具体的な情報が必要で

あり、常に新しい情報にアップデートする。

○大規模災害時は様々な機関との連携活動となるため、誰が見ても分かりやすいよ

うに記載する。(他機関に現場を引き継ぐ可能性も考えておく。)

書き変えのしやすいホワイトボードを使用することが多いが、すぐに消えてしま

う、雨天時には書くことができない等のデメリットがある。残しておきたい情報は写真を撮る、紙に書くなどの対処が必要である。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

↑写真11:管理ボード

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↑写真12:管理ボード

◎パッキング(保温・保護)

狭隘空間内ではコンクリートにより要救助者の体温が奪われ低体温になる可能性が高い。パッキングを行うことで要救助者の身体がコンクリートに直接触れることを防ぎ、保温を行うことができる。更に瓦礫上を移動する際の要救助者の保護にもなるため、とても重要な手技である。また保温は救助隊により行える医療処置でもある。

1シート準備

180cm×180cmのシート使用

(様々なサイズで行えるようにしておく。)

2中心に向かって両端から巻いていく

3均等に三つ折りをする(もしくは二つ折り)

搬送しやすいようなるべくコンパクトにしておく。

4広がらないようガムテープで止める

シート内もしくは手首にガムテープを通しておけば搬送しやすい。

5パッキング方法一人ログロール

要救助者、遠側の足を交差させる。

6シートを展開し要救助者に近付ける

大柄な人の場合は頭部側を優先する。

7要救助者を保持する。

首の後ろにしっかりと手をいれる。できる限りの頚椎保護を意識する。

8首、腰、膝を保持しシートを引き寄せる

要救助者から遠い側のシートの巻きを広げる。

可能であれば要救助者にも協力してもらう。

9シートの上に傷病者を戻す

10シートを広げガムテープで固定する

首、腰、膝の空間を利用するとシートを抜きやすく、奥側を上に持ってくると留めやすい。

11パッキング完了

ブルーシートのみでの引きずりの可能性もあるためガムテープは長めにしっかりと貼っておく。

12観察資器材は頭の位置に固めておく

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観察を容易に行うことができる。

13★アルミックシートを貼り付ける

保温力は増すがアルミックシートの強度の問題がある。

14★毛布を貼り付ける

保温力は増すが厚みが増すため搬送、パッキング時には障害となる。

パッキング終了時に温かくなったか要救助者に確認し、必要があれば毛布などを上からかけることも考慮しておく。パッキング途中に退出命令がかかった場合でも要救助者の上にブルーシートをかけておくなどできるだけの配慮をする。

(必要以上の加温にも注意しておく必要がある)

◎スケッドストレッチャー

狭隘空間内では障害物が多く搬送することが困難である。スケッドストレッチャーを使用することにより要救助者を包み込み、保護しながら、瓦礫等の障害物上を引きずることができる。

1フルスケッド

狭隘空間で搬送しやすいよう縦に丸めて搬送する。(狭隘空間での展開)

1-2ハーフスケッド

・収容方法1

1-1一人ログロールの要領

なるべく要救助者の近くに置く。

1-2要救助者を戻す

・収容方法2(救助者の上に要救助者を乗せる)

2-1

2-2

・収容方法3(引きずり)

3-1

3-2

・スケッドストレッチャー上では滑って力が入りにくいため、補助者が足を保持する。

・一人の場合は瓦礫の引っ掛かりなどを利用する。

・足部のベルト

1基本

2応用(足をそろえる)

3足を重ねる

4パッキング+フルスケッド

※23の方法では足に痛みを伴う可能性があるので注意が必要である。

ハーフスケッド

1ハーフスケッド

2パッキング+ハーフスケッド

事前準備をしっかりしておくことでスムーズな活動を行うことができる。狭隘空間進入前にセーフティーゾーンで手技を確認しておくことも必要。

救出

1二人法

前と後ろ

2二人法

前だけ

3二人法

足を保持しての手技

※1の方法では要救助者の全体を見ることができるが、脱出時に奥の隊員が脱出不可

能となる可能性がある。

2の方法では脱出時には両救助隊員とも脱出できるが、要救助者の足側の観察がで

きないと共に障害物などが引っかかったときの対応も不可能となる。

32と同じであるが、高さのない場所でも行える方法となる。

・段差クリア

1

下にいる隊員の膝、肩を利用して段差を乗り越える。

2

バランスを取り、すらしながら上げる。

3

下の隊員は下から押し上げ、上の隊員は頭部側を下に押さえる。

4

容体変化はないか観察を行う。

・シートでの救出

1応用

シートの頭側に石やカラビナ、ガムテープ等を入れる。

2

折り込み取手を作成する。

3

結索を行う。

4

救出

・進入時に使用したガイドロープ等を使って行うことができる。

狭隘空間内ではスケッドストレッチャーでは通れない。スケッドストレッチャーがひっかかって動かないという状況に陥る可能性が高い。スケッドストレッチャーを外してブルーシートのみでの救出も行えるようにしておく必要がある。(瓦礫の上に毛布などで養生しておくと搬出時に楽になる)

また、スケッドストレッチャーは救出だけではなく、瓦礫が多くある場所、小さい段差のある場所に敷くことで障害物クリアに使用したり、骨盤骨折時にも締め付けることで応急的な動揺防止に使用したりと様々な用途で使用できる。

◎まとめ

最後に狭隘空間活動下では常に危険が付きまといますが、そのような状況下でも正確な判断をすることでリスクを減らすことが可能です。そのためには、普段の訓練で、知識や経験を得ることが重要になってくると思います。

今治市消防本部では昨年度の、震災対応訓練施設完成に伴い、大規模災害に向けての訓練を組織全体で行っています。私自身、所属の先輩から指導を受ける立場ですが、今回の執筆は改めて勉強になる良い機会となりました。活動内容については他にも様々な方法や技術が存在しますが、少しでも皆様のお役に立つことができたらと思っています。

田鍋真平(たなべしんぺい)

生年月日:平成5年2月23日(25歳)

所属:今治市中央消防署消防救助係

出身:愛媛県今治市

消防士拝命年:平成26年4月

資格:潜水士

趣味:模索中

月刊消防2018/7月号p22-27

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