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191004最新救急事情(211-1)食物アレルギーの経口減感作療法

プレホスピタルケア 2019年8月20日号

最新救急事情

食物アレルギーの経口減感作療法

お子さんが食物アレルギーを持ってるという読者も多いだろう。本誌8月号にも食物アレルギーで9日間に3回救急車のお世話になった10歳男児の例が載っている。

プレホスピタル・ケア 2019年8月20日号 9日間で3度のアレルギー発作を起こした小児の1例 神田貴章 伊予消防...

アレルギー患者の有病率は年々増加している。今回は食物アレルギーの根治的治療として期待されている減感作療法を取り上げる。

減感作療法とは

アレルギーの元となる物質(アレルゲン)をあえて摂取することでアレルギー反応を抑える治療である。小児の食物アレルギーは自然に消滅することが多く、その多くは3歳までに起こる。この年齢を超えてなおアナフィラキシーを引き起こすような重篤なアレルギーが治療対象となる。

減感作療法自体は古くから行われている。漆職人の新弟子は毎日少しずつ漆を舐めて漆アレルギーにならないようにしている。誰もが経験するのが虫刺されだろう。夏の初めに蚊に刺された場合は局所が腫れ上がりものすごく痒いが、何度か刺されて秋になると、刺されてもあまり腫れないしそれほど痒くもなくなる。初めて沖縄に行った時には現地の人たちが「蚊に刺されても腫れないし痒くもない」と言ってたいそう驚いた。

呼吸器系疾患では確立された治療法

花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息といった呼吸器系の疾患では治療法として確立している。この治療により免疫グロブリンIgEの産生量が減りIgGの産生が増えること、サプレッサーTが誘導されることなどでアレルギー反応が抑制される。
アレルゲンの投与は皮下注射で行われる。最初はアレルギー症状が出る量の1/10程度を投与し、週1回から2回のペースで少しずつ量を増やして注射する。体内に入るのが確実なので半年程度で維持量に到達でき、効果は数年持続する。アレルゲンを飲む方法もあり、こちらは初めから維持量を飲んでもらう。飲むのは簡単だが満足できる効果が得られるまでに数年かかることが多い。

食物アレルギーに対しては研究段階

呼吸器系のアレルギーでは治療法として確立しているこの治療法も、食物アレルギーではまだ研究段階とされる。対象がアナフィラキシーショックの既往をふくむ重症な患者を対象としているためである。アレルゲンの投与する場所ではアドレナリンを用意し、場合によっては心肺停止にも対応しなければならない。そのためこの治療を導入する際には同意書と倫理委員会の承認が必要となる。だがこれだけ厳しい条件をつけていたにも関わらず、2017年に牛乳アレルギーの子供が自宅で維持量の牛乳を飲んだ直後にアナフィラキシーショックになり低酸素脳症の後遺症が残ったことが報道された。

食物アレルギーに対する脱感作療法には2つの方法がある。一つは急速法と呼ばれるもので、入院させ1日2回から5回、アレルゲンを食べされるものである。アレルゲンは1回ごとに決められた量だけ増量する。もう一つは緩徐法と呼ばれるもので、病院で安全を確認した量から始め、毎朝1回、少しずつアレルゲンを増やして投与するものである。

相模原での治療結果

国立病院機構相模原病院での結果が出ているので紹介する1)。6歳以上の食物アレルギー小児130人を少なくとも1年間追跡したものである。経口減感作療法の効果が見られたのは108名(83%)であった。アレルゲンは61名が卵、30名が牛乳、17名が小麦粉である。観察期間にアレルギー反応が出た患児は44名(41%)であった。人数は卵17名、牛乳17名、小麦粉10名であり、再発の割合は卵<牛乳<小麦粉の順であった。108人中24名(22%)の患児では中等度から重症の症状が出ている。エピペンを使用したのは2名であった。

症状の再発は59%の患児で2年以降であり、これも中等度から高度の症状が出ている。

治療法としては危険すぎないか

アレルゲンの種類によって治療成績が異なるものの、2年間以上発作が起きないというのはありがたいし、2年大丈夫ならこの後もずっと大丈夫かもしれない。だが一旦症状が起きるとエピペンが必要になる可能性が高いのだから、治療するか迷ってしまう。Lancetにピーナツアレルギーに対して経口減感作療法を導入した論文のまとめが出ている2)。ピーナッツアレルギーは欧米ではメジャーかつそばアレルギーに匹敵するほどの大発作を引き起こすので、毎年多くの子供が命を落としている。論文では過去に出版された12の臨床研究を研究対象としている。経口減感作療法を導入すると、この療法を導入しない場合に比べてアナフィラキシーの危険性は3.1倍、アナフィラキシーになる頻度は2.7倍、エピペンを使う頻度は2.2倍になる。またこの治療によって発作時の患者のアレルギー重症度は2倍になる。これに対して患者自身が記載した生活の質は治療を受けて儲けなくても差はなかった。つまり医者がアレルギーを引き起こすだけで患者には利益が全くないように書いてある。

自分だったら危険を理解して治療に臨む。だが自分の子供に治療を受けさせるだろうか。Lancetを読むまでは受けさせてもいいかと思っていたが、天下のLancetにここまで言われてしまうと二の足を踏んでしまう。ここが「研究段階」と言われる所以である。

文献

1)Manabe T:Allergology internationa 2019:Epubl
2)Chu DK:Lancet 2019;Epub

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