210725救助の基本+α(56)消防訓練棟での訓練 城陽市消防本部 山本秀樹・藤岡正章

 
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基本手技

月刊消防2021/3/1, p40-43

 

救助の基本+α

消防訓練棟での訓練

目次

著者

氏  名  山本 秀樹
読み仮名  やまもと ひでき
所  属  警防課
出 身 地  京都府城陽市
消防士拝命 平成16年
趣 味  野球

 

消防本部移転関係主担当者

 

氏  名  藤岡 正章
読み仮名  ふじおか まさあき
所  属  総務課
出 身 地  京都府京都市
消防士拝命 平成14年
趣  味  読書

 

 

1 はじめに

今回は、令和2年4月1日に竣工し運用を開始した城陽市消防本部の新庁舎(001)とともに新設された地上6階建ての消防訓練棟(主塔)について紹介させていただきます。
複雑多様化する災害現場に対応できる実践的訓練を確立するため、副塔を消防本部新庁舎に併設し、メイン訓練を主塔に位置付けることにより、消防職員のみならず消防団や自衛消防隊、また一般市民も対象とした様々な実践的訓練を実施できる消防訓練棟としています。

001
令和2年4月1日に竣工し運用を開始した城陽市消防本部の新庁舎

 

2 城陽市消防本部の紹介

本市消防本部が管轄する城陽市は京都と奈良の中間に位置し(002)、古くから交通の要衝として位置づけられ、「ごりごり五里五里のさと」と呼ばれてきました。北部の久津川周辺には、車塚をはじめとする古代の古墳や遺跡が数多く分布し、南部の長池周辺には江戸時代の大和街道の宿場町としての形態が残されています。現在の市街地は、近世の農村集落から久津川、寺田、富野荘及び青谷の4ヶ村の合併を経て、京都・大阪都市圏の影響を受けながら発展してきました。また、今後、管轄内では、新名神高速道路の全線開通やプレミアムアウトレットの建設など、さらに大きく発展していくことが予想されます。
そのような城陽市の新しい消防活動拠点となるのが本市消防本部の新消防庁舎であります。

002
城陽市。京都と奈良の中間に位置する

3 消防訓練棟の紹介

地上6階建ての消防訓練棟(003)は、ロープブリッジ渡過、ロープブリッジ救出(004)、はしご登はん、引揚げ救助といった消防救助技術大会に向けた訓練を実施する施設(東近畿地区指導会の会場に準じた施設)や工場(作業場内)転落救出(005)、宙吊り救出、ガードレール・U字パイプ・鉄柵等、現場を想定した工作物による都市型救助(006)、山岳救助対応訓練に対応した救助全般の訓練施設(007, 008)に加えて、迷路型火災訓練室(009)、一般家屋(瓦、ベランダ、屋根)進入放水・救出訓練(010)、実燃焼型訓練(火災調査実験含む)が可能な濃煙熱気室(011)、高所・低所救出訓練、共同住宅型火災・救助対応訓練(012.013.014)、はしご車対応中高層建築物救出訓練(015)などの火災・救助においての訓練を実施することができます。
また、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備、連結送水管(016,017)といった消防法第17条に準じた消防用設備等を設置し、警防分野だけでなく予防分野においても訓練や研修会が実施できる施設となっております。(018, 019)

写真3 新消防訓練棟

写真4 消防救助技術大会に向けた訓練

 


写真5 工場・作業場転落救出訓練

 


写真6 ガードレール下転落救出訓練

 


写真7 山岳救助対応訓練

 


写真8 山岳救助対応訓練

写真9 迷路式暗中検索救助訓練


010 一般家屋(瓦、ベランダ、屋根)進入放水・救出訓練

写真11 実燃焼型訓練

 


012高所・低所救出訓練、共同住宅型火災・救助対応訓練(1)

 


013高所・低所救出訓練、共同住宅型火災・救助対応訓練(2)

 


014高所・低所救出訓練、共同住宅型火災・救助対応訓練(3)

 


015はしご車対応中高層建築物救出訓練

016屋内消火栓設備をもちいた消火訓練


写真17 連結送水管を用いた消火訓練

 

写真18 小学生消防署見学 設備の紹介

写真19 小学生消防署見学。防火設備の紹介

 

4 『城陽市消防本部安全の日』

城陽市消防本部では毎年7月3日を、本市消防職員が安心・安全を実現する責務を深く認識するとともに公務災害防止を誓う『城陽市消防本部安全の日』として定めており、安全管理に基づく各種点検・訓練を実施するとともに、令和2年度は7月1日から7月3日の3日間で消防本部の移転に伴い、新たに竣工した新庁舎の消防訓練棟の機能を確認し、安全かつ適正なロープブリッジラインの設定及び訓練方法に関する技術を習熟するとともに、要救助者の搬送方法、低所における引揚げ救助技術の習得を目的とした訓練を実施しました。(020, 021)

 

020要救助者の搬送方法の習得を目的とした訓練

 

021低所における引揚げ救助技術の習得を目的とした訓練

 

5 消防訓練棟を設計する上で工夫した点

消防訓練棟を設計する上で、最も工夫した点は、敷地全体から庁舎とのバランスを考え消防訓練棟を配置して、いかに多種多様な訓練をさまざまな方向から展開できるか、ワンパターンな訓練にならないよう、一つの想定訓練内容によって、最低3パターンは訓練展開できるような仕様とすることに工夫を凝らしました。また、この消防訓練棟は、「市民のため1分1秒でも早く火を消し止める」、「人命を救助する」ことを念頭に本市の街に応じた訓練をどのように展開していくかを試行錯誤し、職員皆の知恵と技術を形にしたものになります。

6 消防訓練棟で訓練を行う隊員の声

新しく竣工した消防訓練棟の運用を開始して隊員からは、「救助大会に向けた訓練施設が本番会場に準じた作りとなっているため、大会本番を違和感なく実施できる。」、「濃煙熱気室での実燃焼型訓練が実際の火災現場での活動に直結するもので、より実践に即した訓練ができ、現場経験が浅い隊員の経験値を高めることができた。」、「迷路型火災訓練室ではさまざまな形に区画を変えることができるため、火災現場で同じ区画の現場がないことと同様にバリエーション豊かな訓練が実施できた。」、「建物のあらゆる場所に自己確保を捕れる支点が施されており、高所作業でも安心して訓練が実施できる。」、「マンション型訓練室は、城陽市の特性に合わせた形状の施設となっているため、実現場とリンクする部分が多く現場で実践できる戦術を深めることができた。」というような声が聞かれ、消防隊員・救助隊員にとってバリエーション豊かな施設となっており、本市の消防体制の強化に大きく繋がっております。また、「屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、連結送水管設備、避難器具といった消防用設備等に準じた設備を設置していることから、市民や事業所の方々に対し口頭や映像だけでなく実物を見たり操作したりしていただくことで、より一層効果を実感していただくことができた。」というような声もあり、消防職員だけでなく市民や事業所の方々も含めた広い範囲で有効的な活用ができる施設となっており、市民の消防防災意識の高揚にも良い影響をもたらしていると実感しております。

7 おわりに

今回、ご紹介させていただいた消防訓練棟は、全国のさまざまな消防本部(局)様の訓練施設を参考にさせていただき完成することができました。特に事前に見学等でお世話になりました消防本部(局)様にはあらためて感謝申し上げます。また、今後、消防訓練棟の建設を検討されている消防本部(局)様がございましたら、気軽にお問合せいただければ対応させていただきます。微力ではございますが、本市の消防訓練棟が全国の消防職員の皆様が災害現場で活躍する基盤となる消防訓練施設の参考になれば幸いです。(022)

 

022令和2年度救助隊員の資格を得るための救助教育(集合写真)

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