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210729救急隊員日誌(202)「世界ふしぎ発見!」効果 

月刊消防 2021/03/01, p65
空飛ぶクルマ

「20代くらいの女性が腹痛を訴えていると思います。日本の方ではないかもしれません。」との通報内容により出動した。たまたま通りかかった人が、お腹を痛そうなジェスチャーをしていたため、心配になり通報したのであった。私は、隊員に出動途上で、外国人コミュニケーションシートの準備と多言語音声翻訳アプリの使用を考慮した活動を指示した。

現場に到着すると日本語が通じない。「Do you speak English?英語話せますか」「Which country are you from?お国はどちらですか」。私は片言の英語であれば話せるので質問したが伝わらなかった。周りに通訳や友人等の関係者も見当たらなかったため、持ち物から何か分かる情報があるか調べて見たところ、隊員の一人が持っていた持ち物の中に、ベトナムで使用されている通貨「ドン」を見つけた。過去にTBSで放送された「世界ふしぎ発見!」でベトナム特集を見た記憶があり、ベトナムに興味が沸いて調べたことがある隊員であった。多言語音声翻訳アプリ「ボイストラ」でベトナム語を選択することで意思疎通が可能になった。その後、この外国人搬送事案を署内や消防本部で共有することで、救急隊のみならず、消防隊も勉強することに繋がった。この隊員は、「世界ふしぎ発見!」を見たことで興味が沸き、調べ、知識が深まり、救急現場の活動の幅が広がったのである。

この些細な出来事が、他の隊員にも影響を及ぼした。

「ドン」を見つけた隊員から自慢話を聞かされた別の隊員。「よし、俺も」と熱心に勉強し始めたらしい。「物が二重に見える」という通報内容で一緒に出動した際に、隊長である私は急性緑内障発作や白内障など眼に関する病態を頭に思い浮かべていた。しかしその隊員は「くも膜下出血」の頭の病気を疑いますとの報告。果たして傷病名は「くも膜下出血」であった。

またこれも自慢話を聞かされていた別の隊員。「歯の痛みが治まらない」という通報内容で出動した際には、隊員が傷病者から「左下の奥歯に痛みがあり、歯科医院を受診してレントゲンを撮ったりして調べたが、虫歯や歯周病などの治療が必要な状況ではなかった」と聴取し、「急性心筋梗塞」を疑いますとの報告。結果、傷病名は「急性心筋梗塞」であった。

どんなところでも向上するチャンスがある。テレビ番組でも、救急車が必要かと思うような通報内容の事案の中にでも。常に興味や問題意識を持ち、心のアンテナを伸ばしていれば、普段は聞き過ごしていることも貴重な発見となっていくだろう。

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