210802_VOICE#62_目的と目標

 
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主張
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月刊消防 2021/3/1, p84

月刊消防「VOICE」


目的と目標


みなさんの仕事をする上での「目標」って何ですか? 「静脈路確保成功率が消防本部で1番になる。」「救助技術指導会の地区予選を突破し全国大会へ出場する。」「予防技術者検定を3区分制覇する。」
同じ消防職員であっても、目標は置かれている状況により人それぞれ違うため、三者三様の答えがあると思います。また、目標は環境の変化によって変わっていくものです。それでは、みなさんの仕事をする上での「目的」って何ですか?

目的と目標、それぞれの言葉の意味を辞書で調べてみると、目的とは、「成し遂げようと目指す事柄」。つまり「最終的に目指す到達点」を意味しています。目標とは、「目的を達成するために設けためあて」。つまり「目的を達成するために設けた手段」を意味しています。

某人気ロールプレイングゲームを例として考えてみましょう。(わからない人はごめんなさい。)



主人公が平和に暮らしていると、魔王が攻めてきます。すると世界中に魔物が現れるようになり、平和が脅かされます。主人公は、魔王を倒し、世界平和を取り戻すために旅に出かけ、その旅の中で強い仲間を加え、最強の武器を手に入れます。魔王を倒し、世界平和を取り戻してエンディングとなります。この場合の「目的」は、世界平和を取り戻すことです。そして世界平和を取り戻すための「目標」として、まず「魔王を倒す」が挙げられ、そのために「最強のパーティーを作る」「最強の装備を手に入れる」などが挙げられます。しかし、ひとたびプレイを始めると、世界平和のことなどそっちのけで、最強のパーティーを作り、最強の武器や防具を手に入れ、魔王をどうやって倒すのかということに夢中になってしまいます。言い換えると、目標に夢中になりすぎて、目的を忘れてしまっていると言えます。目標にばかり目が行き、目的がおろそかになってしまうのは、ゲームの中だけでしょうか?

私は3年前に、消防署勤務から警防課へ異動になり、仕事のフィールドは災害現場からパソコンへと変わりました。消防署勤務の時は、毎日訓練や研修を行い、自隊のレベルアップや、自分のスキル、知識の向上を目指していました。しかし、警防課へ異動したことで、目標は組織としての救急、救助レベルの標準化、活動しやすい環境の整備などに変化しました。目標の対象が、自分や隊中心だったものから組織中心に変化したことに気が付きました。目標の変化に気づいたとき、はっとしました。「地域住民を守りたい。」という思いをもって消防職員になったにもかかわらず、いつしか目の前の目標にばかり目が行くようになり、目的と目標が混同してしまっていたのです。

所属する隊や、環境によって、目標は変わると思いますが、誰でも、どんな状況でも、目的は一緒だと思います。いや、一緒でなければなりません。長く仕事をしていると仕事に慣れ、目の前の業務や目標にばかり目が行き、いつしか大事な「目的」が頭から薄れていませんか?どんなに難しい目標を達成することができても、目的が達成できなければ意味はありません。目的を達成するために、どのような目標を設定すればよいのか、改めて見直し、目標だけを一人歩きさせないということも大切なことかもしれません。


我々の目的は、最強のパーティーを作る事でも、最強の装備を手に入れることでもありません。世界平和を取り戻すことです。最高の隊を作り、最高の資器材と環境を手に入れ、一緒に地域住民を守りましょう。

 

新井 章彦

読み仮名
あらい あきひこ
所属
富岡甘楽広域消防本部 警防課

出身地
群馬県甘楽郡甘楽町

消防士拝命年
平成11年

救命士合格年
平成19年

趣味
キャンプ、バーベキュー

主張
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