220905 今さら聞けない資機材の使い方 (106)テープスリングとターポリン担架を使った巨躯傷病者用担架 尼崎市消防局 福澤和久

 
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基本手技

 近代消防2022/02/10  2022年3月号 p78-80

●今さら聞けない資機材の使い方 106

テープスリングとターポリン担架を使った巨躯傷病者用担架

目次

著者

 

    

 

氏名:福澤和久
読み仮名:ふくざわかずひさ
所属:尼崎市西消防署
出身地:兵庫県尼崎市
消防士拝命:平成20年
救命士合格年:平成31年
趣味:3人の子供と遊ぶこと

はじめに

本市消防局の救急隊は、3人体制を基本として救急活動を行っており、巨躯傷病者に対しても同じ体制で活動しているため、マンパワーが不足し、搬送が困難な場合があります。そこで、資器材及びマンパワーを駆使し、どのようにして搬送すればよいのか、考察していきたいと思います。

2.ターポリン担架とヘビーキャリングシートの比較

本市消防局では、体重が160kgを超過している巨躯傷病者を救急現場から救急車へ搬送する際は、各署所に常備している耐荷重350kgのヘビーキャリングシート(001)を使用するという活動方針を定めています。ターポリン担架の耐荷重と比較すれば、かなり有用性が高いように思えますが、メリットだけでなく、デメリットもあります。

 


001 ヘビーキャリングシート

 

まずは、一般的なターポリン担架とヘビーキャリングシートの諸元を比較してみたいと思います。

 


002 ターポリン担架

003 ヘビーキャリングシート

 

ターポリン担架(002)
諸元
全長約200㎝
全幅約70㎝
耐荷重約160㎏
持ち手6~8か所

ヘビーキャリングシート(003)
諸元
全長274㎝
全幅150㎝
耐荷重350㎏
持ち手12か所

諸元を見比べてみると、ヘビーキャリングシートの方がターポリン担架に比べ搬送にマンパワーを要するといったデメリットはあるものの、大きさや耐荷重といった性能については巨躯傷病者の搬送に対して優れているように思えます。

しかし、実際に使用した場合はどうでしょうか、ヘビーキャリングシートはシートサイズが大き過ぎるため、屋外等の広大な場所で使用する場合は効果的ですが、自宅内などの狭隘な場所で使用する場合は活動スペースが不足し、シートがたわみ、傷病者を地面に引きずってしまうことがあります。救急隊員は引きずらないために担架の持ち手を自身の肩の高さまで持ち上げて搬送しなければなりません(004)が、両上肢を挙上した状態では力が入りにくく、搬送することが非常に困難です。

004

ヘビーキャリングシートがたわみ、傷病者を地面に引きずる可能性がある

 

3.テープスリングとターポリン担架を使った巨躯傷病者用担架

そこで、既存の資器材を活用し、ヘビーキャリングシートのような高い耐荷重を維持しつつ容易に巨躯傷病者を搬送する手段を考察しました。

 

005テープスリング数本で

 

006 ターポリン担架を支えるイメージ

 


007 表面

008 裏面

 

考案した応急担架の問題点としては、テープスリングの形状から凹凸が発生し、傷病者に不快感を与えることや、搬送者の手に負担が掛かること、また、テープスリングを保有していない消防本部では、実現するためには代用品が必要となります。

4.実施検証結果

応急担架を使用した搬送手段は、救急現場が狭隘である自宅内等の場合に有効であると考えます。訓練、研修等において実施検証したところ、マンパワーがあれば巨躯傷病者を容易に救急現場から救急車まで搬送できることが判明しました(009,010)。

問題点については列挙したとおり、今後の検討課題を残すものです。

今後も、救急活動を実施する上で、既存の資器材を応用的に活用し、安全で、より効果的なものへと改良することにより、最小の経費で最大の効果を上げることを目的とし、今後も考察を重ねて参ります。

009 取っ手の持ち方

010 搬送の様子

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