230523雑誌「健康教室」特集「救急処置のヒヤリ・ハットに専門家がアドバイス!」事例5 生徒が意識を消失 ●高等学校養護教諭

 
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救急の周辺

 雑誌 健康教室 2022年9月号

特集
救急処置のヒヤリ・ハットに専門家がアドバイス!
事例1 給食後にドッジボールをしたら… ●山口県在住 元養護教諭
事例2 体育大会の練習で女子生徒が口腔内を損傷 ●川原由理子
事例3 テニスボールが目を直撃 ●奈良あゆみ
事例4 げんこつで殴られ目を強打 ●横溝玲子
事例5 生徒が意識を消失 ●高等学校養護教諭
事例6 気管カニューレが抜去し呼吸困難に ●中国地方 特別支援学校 養護教諭
解説 「ヒヤリ・ハット」事例に学ぶ〜M-SHELL理論で振り返ってみよう〜 ●大沼久美子
解説 養護教諭へのヒヤリ・ハットへのアドバイス ●玉川進 

 

事例5

情動失神

 

目次

症例の概要

 

・中学生

・急に倒れて頭を打った

・管理職に相談し救急車搬送

・意識なし呼吸ありの訓練をしていなかった

 

1.アドバイス

 

1)初めての失神の時には救急車を呼ぶこと

2)呼吸あり・意識ありでは安全なところへ運び回復体位を取らせます

 

2情動失神

 

失神については応急処置アップデートthe movie 2021年●月号で起立性失神について扱っています。症例の失神は血管迷走神経性失神の中の「情動失神」と呼ばれるものです。精神的なストレスにより迷走神経が興奮し、心拍数が低下、まれには心停止が起きます。また交感神経の緊張が低下するため全身の血管が拡張し、血圧が低下します、その結果、脳血流が減少し意識消失をきたします(001)。

 

3.失神回避動作 1)

 

めまいやふわっとした感覚になったら、筋肉を緊張させます。効果のある筋肉は

===============

下肢>腹筋>上肢

===============

の順です。手をグーパーグーパーするだけでも有効ですので、朝礼で倒れやすい年代の学校、例えば中学校などでは授業や印刷物で周知してもいいかと思います(5-001)。

 

 

5-001

効果が認められている失神回避動作

 

5.倒れた後は回復体位

 

回避行動でもフラフラ感が治らなければしゃがみこむようにします。しゃがみこみにより下肢の血流が脳へ回りフラフラ感が取れます(5-002)。それでも倒れてしまった時は、安全な場所に移して回復体位を取らせます(5-003)。初めての失神の場合は、背景に重大な疾患を抱えている可能性もありますので、意識がすぐ回復したとしても躊躇せず救急車を呼びましょう(004)。

 

5-002

倒れそうな時はしゃがみこむこと

 

5-003

倒れたら回復体位

 

6.こんなことがありました

 

情動性の失神は自分がそれに近い経験をしたことがあります。初任の時に、出血のひどい生徒がいて、なかなか止まらない流血をしばらく見ていた時、急に自分の血の気が引いていき、目の前がチカチカして立っていられなくなり、慌てて近くの椅子に座った…という、情けない経験をした事があります。

別件では、突き指(実際には骨折だった)の処置を立ったまま行ってしまい、その児童が気を失ったという失敗例がありました。

 

文献

 

1)一般社団法人日本蘇生協議会:JRC蘇生ガイドライン2020. 医学書院、東京、2021, pp350-3

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