231219最新救急事情(239)難治性心停止へのアプローチ

 
  • 250読まれた回数:
最新救急事情

月刊消防 2023/04/01号 p66-7

あなたのおかげです。ありがとうございました。

難治性心停止へのアプローチ

目次

はじめに


英語の文献を見ると、病院外難治性心停止という表現が出てくる。Refractory out of hosiptal cardiac arrestの訳で、定義は「10分以上の心肺蘇生もしくは3回以上の除細動が必要とする心停止」のことである。5年前の2018年に出た総説1)によれば、難治性心停止に対しては機械による心肺蘇生、対外式心肺蘇生法、標的温度管理、早期侵襲的治療を行う必要があるとしている。今回はこの総説に従って、何を行うべきか、5年間で進展はあったのか紹介したい。


Load and go

この総説が出たのは2018年である。前半の方で「パラダイムシフト」と称して、Stay and play(現場で何でも行う)からLoad and go(すぐ病院へ行く)への転換を勧めている。現場で粘って薬剤投与と除細動を繰り返すことはやめて、すぐ医療機関に行くことである。日本でも一時期は現場で何でも行う流れがあり、このことを戒めたものだろう。


薬剤

難治性の心停止に対して特に効く薬はない。そんな薬があるなら難治性にはならないからだ。アドレナリンに関してはこの連載で何度も触れている通り、自己心拍再開率は上げるが生存退院率は変わらないかやや上昇、神経学的後遺症の軽い人の率は上げない。また致死性不整脈に対する抗不整脈薬としてはリドカインよりアミオダロンの方が優れているものの、この薬にも生存退院率や神経学的後遺症の軽い患者の率を上げる力はないとされている。



自動心臓マッサージ器

バンドで胸を締め付けるオートパルスや、ピストンで胸を押すルーカスが代表的である。いずれの機械を使っても生存退院率や神経学的後遺症の軽い患者の率を上げることはできない。自動心臓マッサージ器が導入された当初には逆に生存退院率を下げるという報告があったが、これはこの器械に不慣れなことが影響しているとこの総説1)では述べている。



体外式心肺蘇生

患者に人工心肺を取り付けて蘇生を行うというもの。人工心肺なので、脳さえ大丈夫なら心臓がなくても肺がなくても生きていける。2021年12月20日発行のプレホスピタルケアで取り上げた時点では、生存率も神経学的に良好な患者の割合も高くなるとしていた。
2023年1月には世界最高の臨床医学雑誌であるNew England Jounal of Medicineに新たな論文が発表された2)。難治性心停止患者に対し、対外式心肺蘇生70例、通常の心肺蘇生64例を検討した前向き無作為割付試験である。結果として、30日後の神経学的に良好な患者の割合は体外式で20%, 通常で16%と有意差はなかった。
この研究によって、体外式心肺蘇生も評価は「金食い虫だが効果はある」から「金食い虫で効果もない」と変わる可能性がある。


標的温度管理

低体温療法と言われていたもの。この治療法は、歴史が長いのに未だ一定の方法が確立されていない。当初は深部体温を30℃くらいまで下げていたが、合併症の多発で温度は引き上げられてきて、現在では発熱を避けて平熱を維持するようになっている。しかし33℃を選ぶケースもある3)。
さらに温度を管理する期間はもっとバラバラで、小児の論文では24時間より72時間の方が予後は良いとしているものの、確実性は非常に低いとしている4)。


血管形成術

今回取り上げる項目で唯一治療効果が認められるのは、急性心筋梗塞に対する早期の血管形成術である。病院外心停止の原因の60%を急性心筋梗塞が占めるためで、ST上昇型心筋梗塞に対しては特に有効とされる。この総説が引用している、過去の研究結果をまとめたメタアナリシス論文5)では、蘇生後に心筋梗塞と判断された患者の生存率および神経学的に良好な生存率のいずれも上昇させるとしている。


難治性は治らないから難治性

5年前の沿って現状を見た。5年経って進歩しているものはなさそうだ。対外式心肺蘇生には希望を持っていたのだが、お金をかけても結果が出ないのではこれから広がっていくとは思えない。難しいものだ。


心肺蘇生後の生存率に男女差はないらしい

最後に面白い論文6)を見つけたので紹介する。心肺停止で搬送されてくるのは男性が多いし、女性は寿命が長いから、女性の方が生き残るのかと思っていたらそうでもないらしい。
対象は28論文、症例数は約200万例。女性と比べて男性は病院外心肺停止を起こす年齢が低く、卒倒を目撃される割合が高い。また除細動の放電可能なリズムを呈することが多かった。単純なデータの比較では退院時もしくは入院後30日の生存率も神経学的良好な率も男性の方が高かったが、男女の因子を等しくするマッチング後では男女間で有意差はなかった。


文献

1)Curr Cardiol Rev 2018;14(2):109-14
2)N Eng J Med 2023 Jan 26;388(4)299-309
3)Belur AD: Cardiol Ther 2022 Dec 17 online ahead
4)Cureus 2022 Nov 18;14(11):e31636
5)Resuscitation 2014 Nov;85(11):1533-40
6)Ann Intensive Care 2022 Dec 19;12(1):114

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました