月刊消防 2023/08/01, p58
月刊消防「VOICE」
題名『師事し、師事されるということ』
氏名 瀬沼 耕一(45歳)
所属 埼玉西部消防局入間消防署
みなさん、はじめまして。
何者でもない私が、ご縁で投稿依頼を受けて何を書こうかと色々と振り返り、今日までの感謝を込めて書き残します。
~救急隊員となり、救命士を目指すまで~
就職氷河期、地元の消防本部に内定をいただき入職まであと少し。というタイミングで、長く闘病をしていた祖父が自宅で倒れました。今では迷走神経反射だったのだろうと思いますが、顔色が青ざめていく祖父を目前に私は慌ててしまいました。いつの間にか母が救急車を呼び、電光石火のごとく現れた救急隊の姿に心を奪われてしまいました。桜が咲く頃、私は防火衣を着た姿を祖父に見せることができましたが、救急服姿の私を見ることなく亡くなりました。漠然とですが、この経験から救命士を目指したのだと思います。
~師との出会い~
入職から5年目、希望が叶い救急隊員となりました。実は学生時代からシカゴの救命センターを舞台としたドラマが大好きでした。主人公の研修医は外科志望でしたが鬼指導医に反発しながらも成長し、沢山の師と出会い誰もが認める救急医に成長するのでした。その姿を自分に重ねたのか毎週楽しみに観つつ症例も学んでいました。(ちなみに私はハンサムな小児科医が好きでした。)
そんな私にも様々な形で関わってくださった師がいます。部下として上司を支えるという姿を語らずとも教えてくれた先輩方。若さ故か勢いばかりの私に常に謙虚であれと教えてくれた師。現場の問題点を救急隊員自ら研究するという情熱を教えてくれた師。そして、厳しくも暖かく【救急のいろは】を教えてくれた師からは、救急隊員の鑑のような接遇を学びました。さらに、「救急隊員は貴重な仲間」というご意志のもと、地域に救急隊員教育を根付かせて下さった故・岡田芳明先生をはじめとする防衛医科大学校病院救急部の皆様。未熟者であった私は沢山の師に出会い、徐々に自立していったのだと思います。
~『師』とは教え導き、手本となること~
「川の流れはやがて海に出ますから今は騒がずに我慢です。」ご紹介した師の教えです。私だって、ここまで順風満帆ではなかったですし、失敗し叱られた時こそ、その理由を考え腐らずに先輩や師の背中を追いかけたものです。夢や希望が思うようにならなくとも、努力を重ねていれば必ず報われると信じましょう。
文末となりますが、偶然にも現在、指導救命士養成課程に入校中なのですが、最近では同僚や後輩から少しずつ相談を受ける立場となりました。(加齢に伴う目の錯覚かもしれませんが、私を師事してくれているのかもしれませんね。)そんな彼ら彼女らが師となり、未来の救急隊員を連れて傷病者のもとへ駆けつける姿を想像すると頬が緩んでしまいます。その想いが現実のものとなるよう、市民から信頼される救急隊員に育ててあげることが、私の次の目標です。
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