241031_VOICE#97_彩り

 
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主張

月刊消防 2024/02/01, p57

月刊消防「VOICE」


     
『彩り』(いろどり)

「心がすべてである。あなたはあなたの考えたとおりになる。」

この世には不変の法則がたくさんあります。「りんごは下に落ちる。」、「見える光の速さは変わらず一定だ。」など、不変の法則は誰にも変えられません。それと同じように、他人と過去を変えることはできません。変えられるのは自分と未来だけです。過去の経験を学びにし、未来の自分へと意味づけをすることが重要であると考えます。そのようにして、目には見えない心の彩りが一つひとつ付け加えられると思います。

私は日記を書くことを習慣にしています。素直に自分の感情や考えを文章化し表現しています。また、心に響いた言葉などに出会うと記すようにもしています。最初は、負の感情を溜め込まず吐き出すことを目的に始めたのですが、今はとても役に立っています。特に効果的なのは「○年目の職員には、こう言ってモチベーションをアップさせよう。」とか「○○の失敗した職員にはこう言おう。」と、過去に自分が経験した感情を基にアドバイスできるのが大きな利点です。また、救急現場でも、傷病者の心に寄り添った活動に繋がり、円滑な現場活動に寄与しています。さらに、世の中には、たくさんの彩りが満ち溢れていることを回想できる点も大きな魅力です。日記はまさに私にとってのバイブルです。

「三つ子の魂百まで」「石の上にも三年」と先人たちは、最初の三年が大切だということを、現在の私たちに遺してきました。私の父は「あんたの場合は、石の上にも五年じゃけえ。」と年数に限らず試練や苦難に耐え抜くことの大切さを教えてくれました。

人が育つには、「教育」「経験」「環境」の三つの要素が大きく関わってきます。どの組織も最初の三年間は職場内研修により教育を受けさせ、火災・救急等の現場経験を積ませているでしょう。その一方で、環境についてはいかがでしょうか。仕事をする上での考え方やスタンスは最初の職場環境に強く影響を受けてしまいがちです。もしも、ぎくしゃくした人間関係や心理的安全性が低い職場環境だとしたら、どのようなマインドを形成していくでしょうか。私自身は、日記に過去の彩りを文章化しているため、それを今に描写し、若手職員の心に寄り添った環境づくりを心がけています。もちろん、全部が全部「過去の自分の気持ち」イコール「若手職員の気持ち」ではありませんが、私のような中堅職員が、若手職員の心に歩み寄る姿勢こそが重要であると考えます。消防のやりがいを示し、やる気に満ちた若手職員を増やすのが私の夢です。人材育成とは、人を育てるのではなく人が育つ土壌を作ることであると考えます。

最後に、若手職員の「心の声」を傾聴すること、「環境」を継続的にリファインしていくことが内発的動機付けを促し、自ら考え行動できる職員に成長させ、やがてワークエンゲージメントの高い組織に繋がっていくのではないでしょうか。
名前      加藤 崇文(かとう たかふみ)

所属      広島県 備北地区消防組合 三次消防署 救急小隊

出身地     広島県三次市

消防士拝命年  平成20年

救命士合格年  平成28年

趣味      サウナ 
主張
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