プレホスピタル・ケア 2024/6/20号p10-11
資器材をもう一度学ぼう
第2回
ビデオ喉頭鏡
目次
1.はじめに
連載の第2回を担当します、留萌(るもい)消防組合小平(おびら)消防署の伊勢田(いせだ)浩平(こうへい)と申します。数ある資器材の中から「ビデオ喉頭鏡」について執筆しましたので参考になる部分がありましたら幸いです。
2.ビデオ喉頭鏡とは
一般的名称はビデオ硬性挿管用喉頭鏡といい、特殊な形状のブレードやスコープ先端にカメラなどを配置することで直視型喉頭鏡よりも声門部の視認を容易に行える器具です。
3. 使用方法
消防が使用できるビデオ喉頭鏡の機種は数種類ありますが、大半の消防が採用している(であろう)エアウェイスコープに限定しました。イントロック抜去後は、直視型喉頭鏡を用いた気管挿管と同じ流れなので割愛します。
【準備】
- 本体にイントロックを装着
→イントロック着脱リングを押し下げた状態で装着し、イントロック固定リングを「LOCK」の
位置まで回して固定する(写真1)
- 挿管チューブのカフ付近に潤滑剤を塗布し、ガイド溝に沿って差し込み、フックに固定する(写真2)
→カフの脱気が不十分だったり、ガイド溝の横から入れるとカフに穴を空けやすい
→挿管チューブがガイド溝を滑るか確認する
- 挿管チューブの先端をスコープの先端と同じ位置に合わせる(写真3)
- スイッチをONにし、画面及び先端ライト点灯の確認
→予期せぬ電池切れを想定し、予備電池を用意しておく
【挿管】
- 開口する(直視型喉頭鏡と共通で重要手技)(写真4)
→大きく開口したいので手前ではなくなるべく奥歯に指を掛ける
→下顎側の指に力が入ると大きく開口できない
- イントロックの先端を目視で確認しながら口腔内に挿入(写真5)
→画面を見ながら挿入すると歯牙や口唇等を傷つける恐れあり
→胸郭が厚いなど状況に応じて斜めから挿入するが、本体を起こす際には正中位置に戻す
- イントロックの先端を一旦食道部入口まで挿入させ、頭側に引き戻しながらゆっくり挙上させ喉頭蓋下に位置させる(喉頭蓋谷ではなく喉頭蓋を直接持ち上げる(写真6))
→イントロックを硬口蓋~軟口蓋~咽頭後壁へと気道の後面を沿わせるように挿入する
→食道部入口まで挿入せずとも喉頭蓋下に位置する場合もある
- ターゲットマーク中央を声門に合わせたら、声門位置にマーカーが到達するまで挿管チューブを進める(写真7)
→マーカーのない挿管チューブであれば声門位置にカフ上1~2㎝まで進める
- カフにエアー(10ml)注入後、挿管チューブをイントロックのフックから取外し、挿管チューブを保持しながら本体を胸部方向へと回転させてイントロックを口腔内から抜去する
→イントロックを口腔内から抜去する時、挿管チューブが一緒に抜けないように挿管チューブを保持する手は顔面に密着させる(写真8)
4.ビデオ喉頭鏡の利点と欠点
利点:頭頸部を動かさなくても挿管可能(スニッフィングポジション不要)、チューブガイドにて誘導できる(スタイレット不要)
欠点:口腔内に出血等があると光源やカメラが遮られ視野の確保が困難になる(今回使用したイントロックには吸引ポートがあり咽頭部の吸引が可能(写真9))、ブレードの厚みにより開口制限があると挿入困難になりやすい
5.終わりに
気管挿管で最も注意しなければいけないのが食道挿管ですが、画面上で声門を直視できるビデオ喉頭鏡は緊迫した現場においてとても心強い資器材だと感じます。その反面、カメラ部分が汚れてしまうと何も見えなくなります。ビデオ喉頭鏡に限ったことではないですが、その資器材の特性を把握し、状況に応じて使い分けることが大事だと思います。
著者

氏 名 伊勢田浩平(いせだ こうへい)
所 属 北海道 留萌消防組合小平消防署
出 身 地 北海道苫前郡羽幌町
消防士拝命 平成15年4月1日
趣 味 買い物、節約
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