プレホスピタル・ケア 2024/10/20 通巻183号 p4-5
目次
1.はじめに
新連載の第4回を担当させて頂きます留萌消防組合小平消防署の小林と申します。本連載「資器材をもう一度学ぼう」の4回目は「搬送器具」について執筆させて頂きます。
2.搬送器具とは
災害時の怪我人の搬送や要救護者の避難搬送など、さまざまな場面で搬送器具は使用されています。今回は救急車で使用する搬送器具として「スクープストレッチャー」に焦点を当てて紹介させて頂きます。
3.スクープストレッチャーの特徴
2つに割り傷病者を動かすことなくすくい収容できることが一番の特徴です。脊髄損傷を疑うなどの安静に搬送したい傷病者や大腿骨頸部骨折等の体動により強い痛みを訴える傷病者に対し最小限の動きで収容することができます。また、傷病者の体型に合わせ長さ調節が可能です。
4.スクープストレッチャーの仕様
私の消防署で所有しているスクープストレッチャーはファーノ・ワシントン社製のスクープエクセルモデル65EXLです(写真1)。

(写真1)スクープエクセルモデル65EXL
仕様
・長さ(最長)202cm・厚さ7cm
・長さ(最短)165cm・重量8.9kg
・長さ(折畳時)120cm・最大荷重227kg
・幅44cm
5.使用方法
①傷病者の体格に合わせてスクープストレッチャーの長さを適切な長さに調節する。(写真2)

(写真2)適切な長さに調節する
②傷病者を最適な方法を用いてスクープストレッチャーに収容する。(写真3)(写真4)(写真5)(写真6)

(写真3)2つに割り収容

(写真4)ログロール収容

(写真5)ログリフト収容

(写真6)毛布等による収容
③ベルトで傷病者を固定する。(写真7)

(写真7)ベルト固定
6.ポイント
・傷病者の背中や頭部(髪の毛)が挟まりやすいので注意する。(写真8)
・結合後は、ツインロックが確実に結合されているか左右に広げ再確認をする。(写真9)
・搬送する際、どちらかの隊員は進行方向に背を向けて搬送しなければならないため、後方
の障害物や段差等に注意する。進行方向を向いている隊員も随時伝えながら搬送する。
・2つに折り畳んでコンパクトに収納することができる。(写真10)

(写真8)背中や頭部(髪の毛)が挟まりやすいので注意する

(写真9)ツインロックが確実に結合されているか再確認

(写真10)折り畳み時
7.おわりに
スクープストレッチャーは取り扱いが非常に簡単な資機材であり、傷病者を動かすことなく収容できることから多くの救急現場で搬送方法として選定されると思います。今回は、搬送器具の中からスクープストレッチャーに焦点を当てて紹介しましたが、他にも様々な搬送器具があり、傷病者にとって最良な搬送器具を選定しなければなりません。そのためには、それぞれの特徴を理解することが大切です。
著者

著者
氏名:小林隼也(コバヤシシュンヤ)
所属:北海道留萌消防組合小平消防署
出身:北海道天塩郡遠別町
消防士拝命:平成23年4月1日
趣味:キャンプ


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