250828_VOICE#107_『孫子』で災害と戦う

主張

月刊消防 2024/12/01, 46(12)通巻546、p74

月刊消防「VOICE」

 


『孫氏』で災害と戦う

『孫氏』は、中国春秋時代(紀元前五百年頃)に軍事思想家【孫武】が作成したとされる兵法書で、戦いにおいての兵の用い方や戦術などを説いた書物です。内容を一言でいうと、「必勝法」ではなく「負けないための戦略書」です。織田信長、徳川家康など歴史に名を連ねる戦国武将やApple創業者のスティーブ・ジョブズ、読売巨人軍の長嶋茂雄も『孫氏』を愛読していましたし、現在も多くの人に読まれています。

主に現場指揮者に向けた内容ですが、各隊長も参考になります。私も救助隊長をする日があり『孫氏』を参考にしています。項目は多岐に渡っており、それをどう仕事に当てはめ、解釈するかは自分次第です。それぞれの考え方で『孫氏』を上手く読み解いて頂きたいと思います。

第1章~第13章の構成で第1章「計篇」は特に参考になり、災害と戦う前に整えておくべき原則や基準が書かれています。

『孫氏』は人と戦うための兵法書であるため、第1章に私なりの災害対応の視点を加えて紹介します。


【孫氏(そんし)曰(いわ)く、兵は国の大事なり。死生(しせい)の地、存亡の道、察せざる可(べ)からざるなり。】

【故(ゆえ)に之(これ)を経(はか)るに五事を以(もっ)てし、之(これ)を校(くら)ぶるに(けい)を以(もっ)てして、其(そ)の情(じょう)を索(もと)む。】

解釈

災害は運命を決する重大事。市民の生死が関わり、隊員の身にも危険がおよぶ。事前によく考え慎重に明察しなければならない。

五つの原則(五事)を用い、7つの計(七計)で比較し、消防力の優劣を把握しなければならない。


【五事七計】は災害と戦う前のチェックリストです。

五事とは、「道」、「天」、「地」、「将」、「法」です。

道:現場指揮者(隊長)と隊員が気持ちを一つにしているか

天:天候や季節(四季ではなく地域特性)、日の出日の入りを把握しているか

地:土地柄、道、距離、地形を把握しているか

将:現場指揮者(隊長)は資質(知識・信頼・仁慈・決断力・厳格さ)があるか

法:組織のルールや活動要領がしっかり定められているか

以上が災害と戦う前に整えておくべき原則です。当たり前のようですが、五事をより深く知れば災害に負けないと思います。

続いて七計です。

一.隊員の士気が高まっているか

二.知識、能力をもった各隊長が配置されているか

三.「天」、「地」が有利となるか

四.ルールや活動要領が隊員に行き届いているか

五.隊員はよく鍛えられ、体力・気力があるか

六.隊員はよく訓練を受けているか

七.過去の失敗や成功例を熟知しているか

以上の七計で災害と消防力を比較します。


私は普段から五事を意識し、目標設定・天気予報・コミュニケーション・地水利・要領を大切にしています。また、七計で消防力と災害の優劣を図り、負けない戦いになるように心掛けています。

『孫氏』は他にも災害で使える内容が記載されています。これから隊長になる方は是非とも一度読んで頂きたいです。

プロフィール

柏原晋平
よみがな
かしはらしんぺい
所属
泉州南消防組合泉州南広域消防本部警防部警備課特別救助隊(警防第2課担当)
出身地
大阪府阪南市
消防士拝命
平成21年4月1日
趣味
旅行、サーフィン、釣り
主張
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