250917_今さら聞けない資機材の使い方_137(1)_換気不良と口腔内吸引はビデオ硬性喉頭鏡を妨げる_ 大分市消防局_西野博俊

基本手技

 

近代消防 2024/11/11 (2024/12月号)p83-5



換気不良と口腔内吸引はビデオ硬性喉頭鏡を妨げる

西野博俊・岩神大・木津龍太郎・秦宏太郎

大分市消防局

稲垣伸洋

アルメイダ病院

目次

1.はじめに

大分市消防局では2019年4月から本市においてビデオ硬性喉頭鏡の運用(001)を開始しました。運用開始時は認定救命士が70名でした。2022年4月の段階では92名になっています。2020年2月に大分市で新型コロナウイルスが発生したこと、その二ヶ月後の2020年4月に日本臨床救急医学会から消防機関によるガイドラインの通知文が発表されましたことから、本市における気管挿管の実施件数が大幅に増加しました(002)。気管挿管成功症例数を新型コロナウイルス発生前後3年間で比べると、145件から560件で400件以上の増加となっています(003)。

001

大分市で使用しているビデオ硬性喉頭鏡

002

訓練風景

003

本市における気管挿管の実施件数

2.目的

ビデオ喉頭鏡は広く使われてきているとはいえ、気管挿管できない例も存在します。私たちの経験からは、バックバルブマスク(BVM)換気に困難を伴う例や挿管前に口腔内吸引が必要な例で不成功になる率が高いように感じていました。今回の研究では私たちの経験を正確な数字とすることと、改善策を提案することを目的としています。

3.対象と方法

本市の救急搬送データ及び救急救命処置録を用いました。検討項目は以下の2点です。

(1)ビデオ喉頭鏡を使用する際、BVM換気が良好・不良で成功率の差があるのか。

(2)ビデオ喉頭鏡で気管挿管を行うまでに口腔内の吸引実施及び未実施での成功率に差があるのか。

調査時、換気状況及び吸引状況が不明な症例は対象外としました。

検定はF検定を用い、p<0.05を有意としました。

3.結果

2020~2022年の3年間で心肺停止症例は1152件。このうちビデオ硬性喉頭鏡を使用した気管挿管380件を対象としました(004)。

(1)BVM換気(005)

サンプル数379件。

換気良好時は、総数242件で成功症例188件、不成功54件で成功率は78%でした。

換気不良時は、総数137件で成功症例88件、不成功49件で成功率は64%でした。

換気不良で有意に不成功率が高くなりました(p=0.0056)

(2)口腔内吸引(006)

サンプル数380件。

吸引未実施時は、総数219件で成功症例177件、不成功42件で成功率81%でした。

吸引実施時は、総数161件で成功症例101件、不成功60件で成功率63%でした。

口腔内吸引が必要となる例では不成功率が有意に高くなりました(p=0.00011)

004

対象症例数

005

BVM換気と成功率

006

口腔内吸引と成功率

007

不成功原因の内容

4.考察

今回の結果は既存書で述べられているにはに記載されている短所としての内容が9割を占めていました。つまり、不成功の原因は救急救命士の技術不足によるものではなく、不成功になり得やすい状況下でビデオ硬性喉頭鏡を使用しているためと思われます。つまり心肺停止傷病者接触時のBVM換気や口腔内の状態把握に着目することで正しく喉頭鏡を選択でき、結果として気管挿管の成功率を上げることができると考えます。

今後の課題として、現場と救急車内で実施した場合の成功率などケースごとの比較検証が必要となるでしょう。また今回の研究結果を本市の救急救命士の再教育体制などに反映させ共有していくことも重要です。

文献

谷川攻一ほか:ビデオ喉頭鏡(エアウェイスコ-プ): 気管挿管のポイントとトラブル対策。2011年。へるす出版

プロフィール

名前:西野博俊(にしのひろとし)
所属:大分市消防局南消防署大南出張所
出身地:大分県大分市
消防士拝命年:平成18年
救命士合格年:平成30年
趣味:テニス
基本手技
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