月刊消防 2025/05/01, 47(05)通巻551号 p63
アスパラ
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私は25歳の消防士であり、救急救命士である。後輩への指導がうまくいかない時や、ひとりで過ごす時間の中で、人として大切なこと、すなわち人間力とは何かについて考えることがある。皆さんは、人間力とは何であると思うだろうか。人それぞれに異なる答えがあるだろう。
そもそも、なぜこのように人間力について考えるようになったのかと言えば、高校野球の経験が大きく影響している。私は2年生の春に背番号をもらい、ベンチ入りを果たした。しかし、1つ上の代が引退し、私たちの代が中心となった秋の大会ではベンチ外となり、これが自分自身を根本から見直す機会となった。野球に限らず、人としての自分を見直そうと決意し、最初は手探りだったが、行動を重ねるうちに人間力の大切さと奥深さに気づくことができた。
私が考える人間力とは、「人として当たり前のことを、誰よりも当たり前に行動する」ことである。挨拶、礼儀、靴を揃えることなど、さまざまな要素があるが、最も大切にしているのは、落ちているゴミに気がついたら拾うことである。つまり、「気づく力」が重要である。落ちているゴミに気づけない、または気づいても拾わない人間が、消防士や救急救命士として、火災、救助、救急の現場で細かい変化に気づき、それに対応することは難しいだろう。この「気づく力」があれば、さまざまな場面に応用することができると考えている。火災や救助、救急現場では、刻一刻と状況が変化する。現場や傷病者の状況の細かい変化に対して、いかに迅速に察知し、先手を打てるかが重要である。細かい変化に「気づく」、傷病者の不安な気持ちに「気づいて寄り添う」など、「気づく力」はさまざまな場面で重要な要素である。
落ちているゴミを拾うことは、この「気づく力」を日常的に鍛えるトレーニングになっているかもしれない。さらに、私はゴミを拾うことで「運」も拾っていると感じている。かの大谷翔平選手も「ゴミではなく、徳を拾っている」と言っている。験担ぎのようなものではあるが、物事が良い方向に進むよう願っている。
行きつけの居酒屋のトイレに貼られていた「意識が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる」との親父の小言。酔っ払いながらも、これに感動し、小便が終わった後も読み込んでいた、数年前の夜を思い出す。自分のゴミ拾いが間違いじゃないと確信した瞬間である。
結びとして、皆さんも人間力について少しでも考えてもらえれば幸いである。私は今日も、消防士として、救急救命士として、一人でも多くの人を救えるよう、人間力を磨き続ける。そして、今日も救急現場で市民の命を救うために、自分の貯めた「運」を存分に使うつもりである。
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