260119救急隊員日誌(249)人間力

救急隊員日誌
月刊消防 2025/05/01, 47(05)通巻551号 p63
アスパラ

私は25歳の消防士であり、救急救命士である。後輩への指導がうまくいかない時や、ひとりで過ごす時間の中で、人として大切なこと、すなわち人間とは何かについて考えることがある。皆さんは、人間とは何であると思うだろうか。人それぞれに異なる答えがあるだろう。

そもそも、なぜこのように人間について考えるようになったのかと言えば、高校野球の経験が大きく影響している。私は2年生の春に背番号をもらい、ベンチ入りを果たした。しかし、1つ上の代が引退し、私たちの代が中心となった秋の大会ではベンチ外となり、これが自分自身を根本から見直す機会となった。野球に限らず、人としての自分を見直そうと決意し、最初は手探りだったが、行動を重ねるうちに人間の大切さと奥深さに気づくことができた。

私が考える人間とは、「人として当たり前のことを、誰よりも当たり前に行動する」ことである。挨拶、礼儀、靴を揃えることなど、さまざまな要素があるが、最も大切にしているのは、落ちているゴミに気がついたら拾うことである。つまり、「気づくが重要である。落ちているゴミに気づけない、または気づいても拾わない人間が、消防士や救急救命士として、火災、救助、救急の現場で細かい変化に気づき、それに対応することは難しいだろう。この「気づく」があれば、さまざまな場面に応用することができると考えている。火災や救助、救急現場では、刻一刻と状況が変化する。現場や傷病者の状況の細かい変化に対して、いかに迅速に察知し、先手を打てるかが重要である。細かい変化に「気づく」、傷病者の不安な気持ちに「気づいて寄り添う」など、「気づく」はさまざまな場面で重要な要素である。

落ちているゴミを拾うことは、この「気づく」を日常的に鍛えるトレーニングになっているかもしれない。さらに、私はゴミを拾うことで「運」も拾っていると感じている。かの大谷翔平選手も「ゴミではなく、徳を拾っている」と言っている。験担ぎのようなものではあるが、物事が良い方向に進むよう願っている。

行きつけの居酒屋のトイレに貼られていた「意識が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる」との親父の小言。酔っ払いながらも、これに感動し、小便が終わった後も読み込んでいた、数年前の夜を思い出す。自分のゴミ拾いが間違いじゃないと確信した瞬間である。

結びとして、皆さんも人間について少しでも考えてもらえれば幸いである。私は今日も、消防士として、救急救命士として、一人でも多くの人を救えるよう、人間を磨き続ける。そして、今日も救急現場で市民の命を救うために、自分の貯めた「運」を存分に使うつもりである。

 

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