260316_今さら聞けない資機材の使い方_144_在庫管理システムを活用した効率的な救急資機材管理_飯塚地区消防本部_芳野光介・藤春翔・田熊清治・鮎川勝彦・株式会社麻生情報システム

基本手技

 

近代消防 2025/06/15 (2025/07月号)p60-3


在庫管理システムを活用した効率的な救急資機材管理

芳野 光介・藤春 翔・田熊 清治

飯塚地区消防本部  

鮎川 勝彦 

飯塚病院

株式会社麻生情報システム

目次

1.はじめに

当消防本部は令和に入り、庁舎の再編がありました。以前は1本部3署8派出所の11施設でしたが、現在は1本部1署3分署2出張所の6施設に減り、3署から1署になったことで、本署救急係の事務の負担が増えています。この状況を打開すべく、麻生情報システムが新たに開発したシステムを試験導入しました。

本システムは、救急消耗品を救急現場で使用しているタブレットを用いてクラウドで一元管理し、在庫数の把握や使用期限切れによる廃棄などを防ぐための管理システムであり、物品の管理を全て業者に任せるシステム(Supply Processing & Distribution、SPD)とは異なります。このシステム導入によって何がどう変わったかをお伝えします。同様のシステム導入を考えている担当者の参考になれば幸いです。

2.導入前の課題

システム導入前は繁忙署の管理者(飯塚消防署救急係)が救急出動の時間の隙間に在庫管理業務をしてきました。管理者が紙の伝票を受け取り内容をExcelに転記するものです(001)。しかし、「いつ」「誰が」「何を」「いくつ」持っていったのか管理しきれず、棚卸時に在庫数が合わなかったり在庫が切れていることが度々ありました。この業務を救急件数の少ない署に受け持たせる案もあったのですが、「件数が少ない=管轄地域の端の署」でありその署を保管庫とすることは現実的ではありません。

001

システム導入前の在庫管理業務

3.企業提案を受ける

当消防本部では平成24年から株式会社麻生情報システムによる救急業務総合支援システム(Ambulance service total assist system, ATAS)を導入しています。その後その麻生情報システムから「ATASと同じタブレット端末で使用できる在庫管理システムの商品化に向けて協力をしてほしい」消防本部に依頼がありました。

調べてみると備品管理システムは世の中にたくさんありますが、「消防向け」「消防専用」というものはありませんでした。裏を返せば、汎用的な製品がありすぎてどれが最適(消防向き)なのかわからい状況でした。そのため、複数製品を単純に比較して導入するのではなく、私たち自身が「消防向きの在庫管理はどんなことを重視すべきなのか」を考えることから始めました。

また、完成形のイメージがふわふわしていたため、簡易プログラムで検証し、気づきをもとに改善していく「共同開発」とすることにしました。

4.現在のシステム

002に実際の在庫一覧の画面を示します。全署所の在庫数が写真ですぐにわかります。また、在庫数が一定数を下回ったときや使用期限が近い物品には、右上「アドレナリン」のように表示及び色が変わり知らせてくれます。

003に発注・入庫登録の画面を示します。業者へ発注し納品後の作業は、次の①から③の流れになります。

①まず、本署救急係が業者から届いた資機材の検品の際にバーコードを読み取り、②数、使用期限を登録をします。この時点で本署資機材庫にある在庫数が、全救急隊は把握が可能になります。

③各署所救急隊の持出登録を004に示します。持ち出す際は、タブレットに持ち出す品名、数量を登録するだけです。登録すると、リアルタイムで在庫数から差し引かれます。各署救急隊が持ち出す際は、右下ポップアップ画面に配付を選び数量を入力するだけです。写真付きで管理が出来ますので、慣れていない隊員でも分かりやすく、物品の間違いを防ぐことができます。

使用した際は、病院到着後に使用を選び数量を入力し在庫から消し込みます。

システム導入後の在庫管理業務を005に示します。このシステムを導入したことによって業務を分散することが可能になり、業務時間が半分近くになったと感じています。

002

在庫一覧の画面

003

発注・入庫登録の画面

004

各署所救急隊の持出登録

005

システム導入後の在庫管理業務

5.業者に要求し反映されたこと・反映されなかったこと

(1)棚卸時に在庫数があわない問題を解決できるシステム

備品管理システムの導入にあたって、1人1人がしっかりと記録をするかどうかがポイントと考えました。なぜしっかり記録しないのか、どうやったらミスなく記録してくれるのか。それは現場側の使いやすさにかかっていると考え、マニュアルを見なくてもわかる、見やすい、手間がかからない、間違えにくいものにするよう要求しました。

(例)物品の写真を使った見やすいレイアウト(006)→入力する際に物品を間違わないため

(2)在庫を可視化して全体把握ができる

(3)期間や署所別に検索が可能な使用歴一覧の機能(007)

これにより年間使用実績が把握でき予算作成時に役立ちます

(4)使いやすさに重点を置き、入力項目を少なくする(008)

(5)導入時の価格が高額にならないよう在庫管理に特化する

発注処理等などの機能は省くことで、導入・運用時にかかるコストを抑えます

(6)柔軟性のある構造

正解の形が見えていないため、検証→改修が大前提であり、容易に改修ができるように。

(7)タブレットだけでなく消防署内にあるパソコンでの使用

これはシステムの関係上、タブレットでの使用に限られているため実現しませんでした。

006

物品の写真を使った見やすいレイアウト

007

使用歴一覧

008

少ない入力項目1

6.使用者へのアンケート調査

導入2ヶ月後から3カ月(5月、6月、7月)間使用し、救急隊員74名に10項目のアンケート調査を実施しました。アンケート対象者を009に示します。

アンケート結果を010-014に示します。

本署に集中していた入力作業を各隊で分担することにより、本署救急隊員の労務負担軽減につながった。と考えられます。またこのシステムでは本署は各隊の在庫数、各隊は資機材庫の在庫数が把握できることで、数の調整や本署へ取りに行ったけど在庫が無いということがなくなったなどの声がありました。使用期限が短いブドウ糖を救急件数の多い署へ渡すことができ、廃棄を防ぐことができた。という事例もありました。

その一方で導入によって、各署所の救急隊の負担が増えたとの声や40歳代を中心に捜査が難しいと思うと回答がありました。

010

アンケート対象者

011

質問:労務負担軽減

012

質問:在庫管理効率化

013

質問:負担増加

014

質問:操作の難しさ

7.これからの改善点と発展

記入項目については、管理者は細かく入力して欲しい、現場側は手間がかからないよう極力入力したくない、という矛盾があり、落としどころを探っていく点が難しく、現在も検証しながら継続して調整中です。

システムについては

(1)入力方法の更なる容易化、操作性の改善

1度に数種類の物品を持ち帰る際に、一つ一つ入力する必要があるため、一括入力を要求しています。

(2)アプリの高速化

アプリの立ち上がり、画面の切り替わりに遅れがあります。 

消防に特化した在庫管理システムですので、在庫のあるものをどんどんデータ化していく予定です。例えば酸素ボンベの耐圧期限や庁舎及び消火隊AEDのパッドやバッテリーの使用期限管理にも同システムを活用できます。

著者

芳野光介

よしの  こうすけ

飯塚地区消防本部飯塚消防署桂川分署

消防司令補

出身

福岡県嘉穂郡桂川町

拝命

平成19 年4月1日

救急救命士合格

平成31年4月22日

趣   味

ゴルフ

 

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