健康教室2025/07/10 健康教室2025年8月号 p56-8
応急処置アップデート THE MOVIE II 05
頭部外傷
目次
はじめに
今回は頭部外傷です。重症だとすぐ救急車ですが、軽傷だと病院に行かせるかそのまま様子を見るか悩みます。些細な外傷でも保護者に連絡するようにしましょう。
動画解説

001
自分の手に負えないと思ったら躊躇せず救急車を呼びましょう。養護の先生が呼ばれて到着した時点でも意識障害があったり辻褄の合わないことを話しているような場合も救急車を呼びます。

002
止血不能の出血も救急車です。ですが、通常の出血は押さえ続けると止まります。すぐ下に骨があるから圧迫止血がよく効きます。頭部や顔面からの血流量が多いことから受傷直後に多く出血することと見た目が派手なことで大出血に見えますが、実際はそれほどの出血はありません。

003
学校の先生にとって大切なのは、失神の有無を確認することです。受傷時にかかった力が大きいほど失神している可能性が高まります。
児童生徒は嘘をつきます。疑わしい場合は周りの人にも確認しましょう。

004
失神を起こした後回復し、その後急激に意識レベルが悪化する病態があります。そのため、どんな軽微な頭部外傷でも保護者に連絡するようにします。
解説
頭は養護の先生にとっては非常に厄介な外傷です。すぐ生命に直結することはもとより、今は元気でも8時間後に意識がなくなり死亡する可能性もあるからです。ここでは脳震盪と急性硬膜下血腫について解説します
A.脳震盪1)
1. 原因(005)

脳震盪とは脳に外力が加わることで短時間の意識障害を起こすものです。外力により血流量が下がり、意識が消失するものです。また脳は柔らかいので、外力よって脳神経の損傷が起こることもわかっています。
2.脳震盪後遺症(006)

身体の変化、睡眠の変化、気持ちの変化、記憶力の変化が挙げられます。
3.なぜ長期の回復時間が必要なのか(007)

脳震盪で弱くなった血管が元どおりに回復しないうちにまた外力が加わることで容易に急性硬膜下血腫を起こす可能性があるためです。
B.急性硬膜下血腫
脳震盪を起こし意識が回復したのち、6-8時間後に意識が混濁し、放置すると死亡する疾患です。
1.意識清明期(008)

急性硬膜下血腫が厄介なのは、意識清明期があるからです。脳震盪を起こした時に細い血管が破れ徐々に出血します。血の塊がある程度大きくなると意識障害を引き起こし、放置すると死亡します。
2.脳震盪を必ず確認すること
脳震盪は本人が覚えていないことも本人が隠すこともあります。周囲の人たちにも状況を確認し、疑わしい場合には保護者を通じて病院を受診させます。
文献
1)日本スポーツ振興財団:脳震盪ハンドブック
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/images/NewNoushintou/Noushintou-handbook.pdf
養護の先生が経験した症例
高校3年女子A子。体育祭の団体種目「十文字綱引き」で、勝敗がついた合図のピストルが鳴ると同時に、みんなが綱から手を離したため、手を離すタイミングが少し遅かったチームにいたA子が勢いよく後ろにひっくり返り、転倒し、グランドに後頭部を強打しました。
救護テントからは、何人も転倒する様子が見えましたが、A子が頭を打つ瞬間を見ることはできませんでした。その後、競技が進み、A子は、友人と担任に支えられ救護テントまで歩いてきました。実は、さっきの十文字綱引きで転倒して後頭部を地面に打ったとのこと。後頭部の痛みと少し視界がぼやける感じがすると訴えます。すぐに受傷部位を確認したところ、少しの腫れがあったが、出血はなし。意識があり、会話ができる状態でした。瞳孔の左右差もありません。眼振も吐き気もなし。手や足のしびれもありませんでした。しかし、頭を打った直前と直後のことをあまり覚えていないとのこと。しばらく頭部を冷やして、安静にして様子を見ることにしましたが、頭を打った直前と直後の記憶がないというのが気になり、担任から保護者に連絡してもらい、保護者が迎えに来て、近くの脳神経外科を受診しました。受診後、担任から、「『病院ではレントゲンを撮り、異常なしだった。今日はそのまま家に帰り、安静にして様子を見る』と保護者から連絡があった」との報告を受けました。


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