月刊消防 2025/11/01号 47(11), 通巻557号 p64-5
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試験で高得点を取るために
はじめに
今回は救急とは全く違う話である。
読者諸兄のほとんどが公務員試験を通ってきて現在の立場にいる。また救急救命士国家試験を通ってきた方もおられるだろう。その前は大学であったり高校であったりと、数多くの試験を受けてきたはずだ。
以前、救急救命士試験の合格者から、「青文字で書くと記憶しやすい」と聞いたことがある。だが最近読んだ本には赤が記憶に残ると書いてあった。どちらが本当なのだろう。
赤は単純作業に、青は創造的作業に
最初は天下のScience に2009年に発表された論文1)。5つの研究が行われている。そのうちの一つが、背景色を変えて単語をどれだけ覚えられるかという試験である。被検者は208人。これを3つの群、背景色「赤」・背景色「青」・背景色「茶色」に分けた。被検者は背景色だけ異なる単語を2分間で36個見せられ、20分後にどれだけ思い出せるか試験を受けた。その結果、背景に赤を使った群がもっとも成績が良く、次に茶色、最後に青であった。他の実験では、赤は青に比べて回避動機を誘発すること、青は赤に比べて創造力を刺激することを示した。
2016年には追試の結果が発表されている2)。被検者は125人。パソコンモニターに文字が2列写し出され、間違い探しのように上と下が同じか違うか答えるものである。問題数は20。文字の背景色は赤・青・灰色の3種類とし、書かれている文字数は短い(文字数20-50)・長い(文字数50-100)の2通りを作った。結果は、文字数が短い場合は赤が青・灰色より有意に正答率が高かった(赤>青>灰色だが青と灰色では有意差なし)。一方、文字数が長くなると青が他の二色より正答率が有意に高かった(青>赤=灰色)。反応時間と正答率には相関はなかった。
次に、創造性について同様の試験を行った。被検者は81人。これは中国の論文なので、共通の当てはまる漢字を答えるというものである。例えば、「昼◯」「深◯」「毎◯」があれば正解例は「夜」となる。背景色は赤青灰色の三色、問題は簡単なものと難しいものを用意した。結果は問題の難易度にかかわらず青が赤と灰色より有意に優れていた。また赤と灰色には有意差がなかった。
この結果について筆者らは・単純な課題には赤い背景は青い背景より有益である・赤が有利なのは回避行動に基づく・難しい課題や創造性が求められる課題では青い背景が赤い背景より有益である・難しい課題で求められる高い覚醒度(青)により回避行動(赤)が相殺される・劣った色と灰色に差がなかったことから、色は効果があるか効果がないかのいずれかであり、この色を使ったから記憶できなくなった(干渉)ということはない、としている。
徹夜は間違ったことを覚える可能性大
一夜漬けで徹夜。多くの読者は経験があるだろう。私も一度だけ高校の英語の試験前日でしたことがある。試験の時には眠くて正解が思いつかず、それ以来一夜漬けはやっていない。
徹夜はどれほど悪いのか。慢性の睡眠不足よりもっと悪いのか。睡眠時間と成績について調べた論文3)がある。研究対象は中学生60名。コントロール群は8時間睡眠を7日間続けた。慢性睡眠不足群では1日5時間睡眠を7日間。徹夜群は普通に日常生活を怒ってもらい、試験の前日は完全に徹夜してもらった。試験は、自動車窃盗セットと強盗セットという2つ写真セットを見せられ、その後の写真の内容と矛盾(誤情報)する読み物を読むというものである。これにより、情報が「写真のみ」「物語のみ」「写真と物語で同じ」「推論」の4つのパターンが出てくる。それらの正答率で睡眠の効果を見るものである。
写真の情報を「正しい」として覚えている率はコントロール群、慢性睡眠不足群、徹夜群で有意差は見られなかった。しかし、読み物(誤情報)を」正しい」と思っていた割合は徹夜群はコントロール群に比べて有意に高かった。これは、徹夜によって間違った情報が記憶される危険が高いことが示された。
手で覚える
今はメモは手書きではなくスマホやパソコンでも行われる。写真を撮って終わりということもある。論文4)では手書きでメモを取る方がパソコンでメモを取るより概念的な問題での成績が悪いことが示されている。
論文は3つの研究からなる。対象は研究により幅があり67人から151人である。模擬授業でビデオを見せ、手書きまたはノートパソコンでノート作成をする。実験の前段階として、ノートパソコンでの単語数は平均で309単語、手書きでは173単語とパソコンでは明らかに単語が多かった。
最初の実験は事実に対する質問で、これはパソコン群、手書き群で差は見られなかった。しかし概念応用の質問では手描きが有意に優れていた。また手書き群でも単語数を多く書いた方が概念応用の成績が良かった。
2つ目の実験では、パソコン群に対して「自分の言葉でメモを取ること。講師の話をそのまま書き留めないこと」を指示した。しかしこの指示があってもパソコン群では講師の話をそのまま書き留める傾向が強かった。
3つ目の実験は、講義の1週間後にどれほどの内容を覚えているかというテストである。直前にメモを見返すことを許さなかった場合は2群で成績に差はなかったが、メモを見返すことを許した場合は手描き群がパソコン群に比べて事実質問・概念質問の両方で良い成績を収めた
筆者らは、手で書いた場合は頭の中で一度情報を処理してから自分の言葉で紙に展開するのに対して、パソコンやスマホの場合は情報を逐次転記するためと考察している。さらに筆者らは授業におけるノートパソコンの使用は、教育に悪影響を及ぼす可能性があるとしている。
文献
1)Science 2009 Feb 27:323(5918):1226-9
2)Front Psychol 2016 May 26;7:784
3)J Sleep Res 2016 Dec :25(6):673-82
4)Psycol Sci 2014 Jun:25(6):1159-68
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