月刊消防 2025/12/01, 47(12)通巻558、p78
月刊消防「VOICE」
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科学的根拠に基づく救急活動(EBM)を追求する
白山野々市広域消防本部
髙田 康平
消防職員として業務に従事していると、法律や条例等を意識することが多々あると思います。特に予防業務においては、消防用設備等の設置基準や防火管理基準などの関係者に対する指導は、担当者の想いや感覚で判断するのではなく、根拠となる法律や条例等を基に行います。すべてが根拠を示した上での業務が重要です。
みなさんは「EBM」という言葉を聞いたことがありますか?これは「Evidence-Based Medicine」の頭文字を取った略語で、「根拠に基づく医療」を意味します。医療者のこれまでの経験や勘等に基づく医療を行うのではなく、臨床研究等によって示された科学的根拠に基づいて医療を行うというものです。EBMを救急隊員教育に取り入れることは、指導者の説得力を増し、隊員の理解度が上がり、処置に対する責任感が強くなります。救急現場での判断は救急隊長に委ねられることが多く、この判断についても根拠を持つことが非常に重要です。以下にEBMを追求することの利点を紹介します。
院外心停止現場での早期アドレナリン投与が有効だということは広く知られています。しかし、早期アドレナリン投与は傷病者に対して具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか。ある研究によると、アドレナリン投与の1分の遅れは、傷病者の生存率を4%低下させることが示唆されています(Circulation. 2018 May 08; 137(19): 2032–2040)。時間の経過とともに生存率が低下していく現実を、数字を用いて示すことで、1秒でも早くアドレナリンを投与しなければならないという意識が強く芽生えると思います。また、現場で早期アドレナリン投与を達成するための現場活動を追求することとなります。
心室細動に対する電気ショック直前の胸骨圧迫中断時間(Pre-shock pause time)が10秒以内であることが、傷病者の予後に良い影響を与えることが示されています(Resuscitation. 2014 Mar;85(3):336-42.)。電気ショックを行う前には、AEDによる心電図の解析及びエネルギー充電のために、胸骨圧迫を中断しなければなりません。さらに感電危険に対する安全確認を行った後に電気ショックを行います。何も意識せずに活動していれば、Pre-shock pause timeを10秒以内に留めることはできないでしょう。Pre-shock pause timeを10秒以内に留める必要がある根拠を活動隊員全員が理解し意識することで、はじめて達成できることとなります。Pre-shock pause time を10秒以内に留めなければならないという目標時間を、数字を用いて示すことは、隊員の意識改革に有効です。
科学的根拠を学ぶためには、医療系の論文を読む必要があります。しかし、多くの論文は英語で記述されており、それだけでも日本の救急隊員にとって大きな障壁となるでしょう。しかし、現代は翻訳ソフトやAIが発展しており、これらを活用すると英語論文を読むことにそれほど苦労はしません。医療の発展は日進月歩です。常に更新される医療にアンテナを張り、学び続けることが重要です。EBMを理解し救急現場活動で実践することは、傷病者にとって大きな利益をもたらします。
プロフィール
名前 髙田 康平
読み仮名 たかだ こうへい
所属 白山野々市広域消防本部
出身地 石川県白山市
消防士拝命年 平成22年
救命士合格年 平成29年
趣味 ジョギング、スポーツ観戦
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