五感で伝わるもの

 
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主張

神辺 弘実(かんべ ひろみ)

埼玉県 西入間広域消防組合 消防署救急係

消防士拝命 平成6年4月

救急救命士取得 平成18年4月

出身地 埼玉県

趣味:なし

 

消防職員に採用されてから23年、救急救命士として11年が経ち多くの救急現場を経験してきた。研修所や救急現場で身に付けてきた五感について紹介したい。

私が救急救命士になる前、真冬の夜に救急出場した。高齢者のため主訴はなく布団で横になっていた。傷病者は大丈夫と言うが、私は隊長の指示でバイタル測定と同時にパルスオキシメーターを装着した。

傷病者の手先は冷たくSpo2はエラーで表示されない。この傷病者は、酸素投与を必要としているのか分からないまま救急車へ収容した。救急車内では手先も温かくなりSpo2を測ることが出来た。

この症例では幸いにもSpO2の値は正常であったが、私は救急隊員として五感が使えていなかったと感じる。手先は冷たかったが、顔色や脈拍の強さ、呼吸音など五感を感じる事が出来なく、酸素投与を実施するか判断が難しかった。

血圧計やパルスオキシメーターで測定値を確認しても、得られる情報は数字だけである。血圧は正常。酸素飽和度も正常。しかし傷病者は、何かを訴えようとしている。数字だけではこれ以上の判断はできない。 では、自分の判断の根拠となるものは何か。それは五感である。

私が11年前に入所した研修所では、日中、教授・教官の指導を受け、観察要領から特定行為までの訓練を行い、夜間は研修生同士で病態を考えながら訓練をする。昼夜行われる訓練で私を含めた研修生は五感を身に付けていった。

最初に行う観察は、傷病者の顔色を見ながら意識状態の確認を行い、手で皮膚の湿潤や体温を感じながら橈骨動脈で脈拍数と強さを確認する。

これを行うことで、早期に病態の把握と適切な処置が行える。

また、酸素投与とパルスオキシメーターの装着、どちらが早期に必要か判断にも有効である。私は、五感を使いながら活動をしていくうちに、主訴の少ない高齢者にも早期の判断と酸素投与が行えるようになっていった。

西入間広域消防組合では、平成28年4月に埼玉医科大学病院と協定を結び「派遣型救急ワークステーション」を開設した。救急出動がかかれば医師や研修医と共に救急車へ同乗し出動する。ワークステーションから出動した救急救命士は、同乗した医師の幅広い視点を参考にしながら病態の把握と病院選定を行う。病院へ搬送後には検査結果や病態を検証し、最初に感じた五感と照らし合わせ、自分の判断と一致するか考えることができる。

これから私達が行っていく救急は、入ってきた情報に気付かないまま処置をして病院へ搬送してしまうのではなく、初心にかえり五感をフルに活かし傷病者から得た情報を医師に報告し搬送することが大切である。






主張
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