260730_今さら聞けない資機材の使い方_149_サブストレッチャー使用で搬送中も胸骨圧迫を行う_堺市消防局_東山晃典

基本手技

近代消防 2025/12/15 (2026/01月号)p42-5


サブストレッチャー使用で搬送中も胸骨圧迫を行う

東山晃典

堺市消防局南消防署

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1.はじめに

先般、メイントレッチャーが入らない駅構内の心肺停止事案において、発生場所から救急車内収容まで時間を要し、布担架での搬送途上に胸骨圧迫の中断が繰り返され胸骨圧迫比率(Chest Compression Fraction, CCF)の低下が著しい事案を経験しました。堺地域のプロトコルでは、布担架搬送中は一度心肺蘇生(CardioPulmonary Resuscitation, CPR)を中断し10秒間搬送、その後傷病者を一度床面に降ろしてCPRを1サイクル実施して再度10秒間搬送となっているためです。

メインストレッチャーで搬送するのなら胸骨圧迫ができます。メインストレッチャーが入らない施設でもサブストレッチャーが入るなら胸骨圧迫を継続しながら搬送できるのではと思い検証を行いました。

2.サブストレッチャー上での心肺蘇生

検証前の事前訓練にて、CPRを行いながらのサブストレッチャー移動は救急隊3名だけでは危険と判断したため支援隊2名を含めた5名で実施しております。

サブストレッチャー上でのCPRではクロスのタイプ(001)での転落防止のベルトのかけ方が一番安定していると感じました。

現場にて仰臥位の状態でCPRを実施し、ラリンゲルチューブを挿入、その後ショック体位にし、非同期CPRとします。頭側の隊長が呼吸管理を行い、支持役2名が左右から頭側を保持しています。そこに胸骨圧迫に専念する者を1名、足側に舵取り役を1名配置します(002)。メインストレッチャーに接続する際には胸骨圧迫を一時中断します(003)。

001

サブストレッチャー上でのCPRではクロスにベルトをかける

002

配置図

003

メインストレッチャーに接続する際には胸骨圧迫を一時中断する

3.サブストレッチャーと布担架の比較

搬送開始からストレッチャーまでの搬送時のCCFについて

①バッグバルブマスクを使用した同期CPR(004)を行いながらの布担架搬送(005)。(動画1)

②ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPR(006)を行いながらの布担架(007)。(動画2)

③バッグバルブマスクを使用した同期CPR(008)を行いながらのサブストレッチャー搬送(009)。(動画3)

④ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPR(010)を行いながらのサブストレッチャー搬送(011)。(動画4)

の4パターンについて比較しました。

今回の検証で気管挿管ではなくラリンゲルチューブを使用した理由は搬送時の挿管チューブのずれを考慮したためです。

前提条件として発生場所は3階部で、エレベーターを使用し、階段は使用しません。サブストレッチャーは既に作成済みであり、作成時間は含まれません。ラリンゲルチューブは挿入、固定まで完了済み。搬送開始からメインストレッチャーへ移乗するまでの時間を対象とします。

また、今回検証に使用したシミュレーターは・正しく行われた胸骨圧迫の割合・圧迫深度・適正なリコイル・適正な手の位置・胸骨圧迫中断の頻度と長さを判定することができますので検証に加えています。

https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/149/149_01.html

動画1

バッグバルブマスクを使用した同期CPRを行いながらの布担架搬送

https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/149/149_02.html

動画2

ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPRを行いながらの布担架

https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/149/149_03.html

動画3

バッグバルブマスクを使用した同期CPRを行いながらのサブストレッチャー搬送

https://www.ff-inc.co.jp/kin_v/sikizai/149/149_04.html

動画4

ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPRを行いながらのサブストレッチャー搬送

004

布担架。バッグバルブマスクを使用した同期CPR

005

布担架搬送。バッグバルブマスクを使用した同期CPR

006

布担架。ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPR

007

布担架搬送。ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPR

008

サブストレッチャー。バッグバルブマスクを使用した同期CPR

009

サブストレッチャー搬送。バッグバルブマスクを使用した同期CPR

010

サブストレッチャー。ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPR

011

サブストレッチャー搬送。ラリンゲルチューブを挿入した状態で非同期CPR

4.結果(表1)

CCFは、布担架よりもサブストレッチャーを使用した方が向上し、さらにラリンゲルチューブなどを使用し非同期にて胸骨圧迫をすることにより更に向上しています。しかし、胸骨圧迫スコア、深さ・リコイルについては布担架仕様の方が高い値を示しました。

表1

結果

5.考察

胸骨圧迫スコアがサブストレッチャー使用時に数値が低下している点については、布担架は床で安定した状態で胸骨圧迫を行っているの対しサブストレッチャーは移動しながら胸骨圧迫を行っているためスコアが低下したためです。深さとリコイルについても低下している点については移動しながらの胸骨圧迫のため体力の消耗が原因だと考えています。この移動しながらの胸骨圧迫については体力だけでなくスキルも求められるため実際にやる場合は訓練が必要です。

サブストレッチャー使用のメリットとデメリットを表2に示します。サブストレッチャーを設定するには約10秒程度時間がかかりますが、これは支援隊に作成を任せることで解消すると考えられます。

サブストレッチャーを有効に使用できる現場状況はいくつも考えられます(表3)。場所として平面で舗装されている長い道、例えば駅のプラットホーム等です。他にメインストレッチャーがエレベーターに入らない施設やマンション、長い廊下を有する共同住宅で有効に使用することできると考えます。体重の傷病者であればチェアーポジションで搬送すれば、布担架での搬送より容易に傷病者を搬送することができます。

使える場面は限られているかもしれませんが、活用することを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか!?(012)

表2

サブストレッチャー使用のメリットとデメリット

表3

サブストレッチャーを有効に使用できる現場状況

012


サブストレッチャー搬送。選択肢に入れてみてはいかがでしょうか

 

名前:東山 晃典(ひがしやま こうすけ)
所属:堺市消防局 南消防署 第1警防課 救急係
出身地:大阪府堺市
拝命年月日:平成25年4月1日
救命士合格年:令和5年3月
趣味:ロードバイク
基本手技
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