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181204最新救急事情(207)ラリンゲアルチューブの評価

月刊消防2018/12, p68-9

ラリンゲアルチューブの評価

久々のラリンゲアルチューブ(LT)登場である。私がこの連載でLTを取り上げたのは2015年だからそれから3年経っている。2015年の段階で日本では広く使われていたものの海外での普及は今ひとつだったらしく、ようやくここに来てめぼしい論文が出てきたので紹介したい。

生存率は成功率と関連する

初めはJAMAから。救急隊が使う気道確保道具は気管内チューブよりLTのほうが優れているというアメリカからの論文である1)。2015年から2017年にかけて27の救急隊が経験したLT1505例、挿管1499例について、72時間後の生存率を第一に、自脈再開・生存退院率・神経学的後遺症を第二の評価点としたものである。患者全体の平均年齢は64歳。一回の試技で留置に成功したのはLT群で90%、挿管群で52%であった。72時間後の生存率はLT群で18.3%, 挿管群で15.4%でありp=0.04ながら有意差を認めた。自脈再開率はLT群27.9%挿管群24.3%でこれも有意差あり。生存退院率、退院時に神経学的後遺症の軽かった患者の率も有意にLT群が優れていた。手技に伴う外傷発生率や気道浮腫、経過中の肺炎の頻度に差は認めなかった。

ところが、オーストリアからはLT挿入で生存率が低下するという論文が出ている2)。全患者数は2224例。現場から病院に入った後までの気道管理について、(1)バックバルブマスク(2)LT(3)挿管群(4)初めにLTを入れてその後挿管した群、の4群に分けた。これら患者の30日後の生存率は、(2)LT群のみが他の3群より低かった。また(3)挿管群と(4)LT後挿管群を比べると生存率に差はなかった。つまりLTで換気を維持するが死亡に繋がったのであり、LTは死亡率を1.97倍に高めるとしている。さらに(2)LT群は神経学的後遺症の程度が他群より重かった。逆に(4)LT後挿管群は他群より生存者の神経学的後遺症は軽かったと報告している。

初めの報告はLTが良いように書かれているが、問題は挿管の成功率が半分しかないことで、それが結果に現れただけのような気がする。同じ雑誌の同じ号にLTを含めた喉頭上気道確保器具(SGA)と気管挿管の比較をしたイギリス発の論文3)が出ているが、こちらは両者に差を認めていない。一回の試技で留置に成功したのはSGAで87.4%、挿管で79%である。次の論文については成功した症例を数えているため成功率には触れられていない。病院に入って気管挿管もせずもずっとLTということはそれだけ回復の望みの薄い患者を相手にしていたとも考えられる。

抜去事故に強い

LTは事故抜去に強い。人形にチューブ類を挿入し市販のチューブ固定器具で固定した。カフがあるものではカフに空気を入れて引き抜く力を測定したところ、挿管チューブは13ポンド(1ポンドは500g弱)で引き抜かれたのに対し、ラリンゲアルマスク(LMA)では16.6ポンド、LTでは21.7ポンド、i-gelでは8ポンドで引き抜かれた4)。LTのカフはそれほど大きくはないのだが、喉頭上デバイスでは最も奥の食道まで入っているから引き抜きに強いのだろう。カフから空気を抜いたときの測定値もLTが4種類で一番抵抗を示している。

挿管用のiLT

LMAには挿管のガイドとして用いるiLMという製品がある。iはintubation(挿管)の頭文字である。最初にLMAを患者に挿入し、換気するチューブに挿管チューブを入れて盲目的に気管挿管を行う器具である。LMAでそんなことできるならLTでもできるはずだということで、挿管用のiLTが発売されている。通常のLTと比較して咽頭カフの下の穴が大きく、そこをチューブが通って気管に入っていく仕組みである。

実際に試した論文が出ている5)。対象は18名の女性患者で、全身麻酔下に1年目の研修医13名がLMAもしくはLTを使った挿管をしてみた。その結果、全例で気管挿管に成功した。所要時間はLMAもしくはLTを挿入してから気管挿管が完了するまでの時間がiLTのほうがiLMより短かった。

LTより挿入しやすいAuraOnce LMA

LMAは特許権がとうに切れており、多くの会社から類似の製品が出ている。ここではアンブ社のAuraOnceLMAが論文となっている。このマスクは最初からL字型になっているもので、他社から出ている同じ形の製品よりマスクの部分が薄く平べったく、いかにも入りやすそうな形をしている。全身麻酔をかけた19名にLTとAuraOnceの二つを順序をランダムにして挿入したところ、初回でLT留置できたのが74%、2回で留置できたのが84%であった。これに対しAuraOnceは1回で全例留置できた6)。

LTであっても訓練が必要である。この論文では2度目の挿入では成功率が上昇し所要時間も半分になったとしている。

文献

1)JAMA 2018;320:769-78

2)Eur Heart Acute Cardiovasc Care 2018;7:423-31

3)JAMA 2018;320:779-91

4)Prehosp Emerg Csare 2018;May 1:1-4

5)Emergencies 2018;30:186-9

6)J Spec Oper Med 2018;18:90-6

当連載は次回以降、「プレホスピタル・ケア」にて掲載致します。玉川先生のファンの皆様はぜひ。「月刊消防」と会わせて、「プレホスピタル・ケア」もご覧下さい。(編集室)

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