190424_Voce(39)_世代と伝承

 
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主張

月刊消防2019年4月号p57

世代と伝承
出川徹
消防吏員拝命から25年が過ぎ、指導救命士となり、地域MC事務局や救急隊員を指導する立場となった私の思う事をお伝えしようと思います。

目次

【作ってきた世代】と【与えられた世代】

 私が救急専従隊に任命された平成8年は、現在のような情報社会ではなく知識の習得は症例検討会や学会参加、救急隊員メーリングリストが最新の教科書でした。救急過渡期であり、先輩方とともに救急システムの構築に携わってきました。いわば「作ってきた世代」です。しかし近年の作った経験のない職員は「与えられた世代」であるように感じます。
救急検証を行うと「プロトコルにこう書かれているから」、「プロトコルからは逸脱していない」という返答は少なくありません。あくまで活動原則ですから、より傷病者に有益と判断した場合は、原則通りの活動とならない場面もあるでしょう。そのために医学分野の助言を医師に求めるのです。
すでにシステムが整備され、遂行するべき業務として与えられたことで、そこから逸脱しないことを目的とする傾向があります。私の経験上、趣旨を理解しないままルールだけを守ろうとすることは非常に窮屈であり、窮屈であるが故に愚痴や批判となってしまいます。「決まっているから」ではなく「なぜ決まっているか」を理解することが重要です。

【組織の柱を伝承する】

 現状で運用されているシステムの作成経緯を伝え残していくことは、組織がどのように考え現在に至ったかの「組織の柱」を共有することでもあります。
今の時代、自発的に知識や技術を習得する機会は多くありますが、個人として得たものが先行し、組織の柱と違えば活動は混乱します。混乱した活動で一番不利益を被るのは住民となります。
経緯を知れば、ルールの修正箇所も見え易く、新しい技術を取り入れる根拠にもなり得るでしょう。昇任などの機会をとらえ伝承することもできるでしょうし、「極意書」や「秘伝書」といった資料を作成してみるのも良いかもしれません。何よりシステムを構築してきた先輩に聞いてみてください。今はインターネット等で答えが出ることも多く、聞かなくても解決できてしまう時代です。こういった部分はコミュニケーションが希薄となる一因かもしれませんね。先輩も聞かれれば嬉しいものです。聞けば意外と脇道にそれた話から解決策や新しいアイデアも見つかることもあるのでは。面倒と思わず、私のようなおじさんも頼ってください。

【Pride】

 平成8年、所属で救急専従隊が発足し、自己啓発のため米国の消防署でパラメディックを見た先輩が持ち帰ってきた言葉は、「【Pride】 You expect the best of yourself in all that you do. No task is too small to demand less than perfection. (誇り 諸君の努めに最善を尽くせ。いかなる職業にも完璧はない。)」で専従隊員全員が見えるところに掲示されていました。【Pride】を掲示した先輩もすでに現場を離れていますが、今でも知識と技術を伝承して頂いています。良いシステムを構築しても、時代やニーズが変われば最高ではなくなります。住民の期待に応えるため、努めに最善を尽くせる消防でありましょう。
名前 出川 徹(でがわ とおる)45歳
所属 出雲市消防本部警防課
出身地 島根県出雲市
消防士拝命 平成4年4月
救急救命士資格取得 平成13年11月
趣味 釣り


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主張
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