210611VOICE#61_人を知ること

 
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主張

月刊消防 2021/2/1

月刊消防「VOICE」
~人を知ること~

 私が過ごしたこの14年間では、昔の常識が今の非常識となる機会が多くありました。技術的な部分で見ても火災・救助・救急のどの分野も進化しているため、遅れを取らないよう私自身必死にしがみついているのが現状です。


 そんな時代の変化がある中、消防士のハラスメントや不祥事をよく報道で目にします。その時にいつも思うことが「消防士である前に人としてどうなのか」ということです。知識・技術の前に社会人として、人としての進化や我慢も必要ではないかといつも感じます。問題の大半は人が絡んでおり、小さな出来事の積み重ねが最終的に取り返しのつかない事態に繋がるのではないでしょうか。

ではどうすればトラブルを回避できるのでしょうか。そのヒントが普段の職務態度やコミュニケーションの中にそれは隠されていると感じてる中、自分の親族が救急隊の対応に怒りを覚えた事例がありましたので紹介します。

私と年齢の近い親族が地方へ外出中に階段から転落し救急搬送後、腰椎圧迫骨折と診断された事例がありました。その時の救急隊の対応に疑問を覚えました。同伴していた親族が「車来ているのですが救急車に乗った方がいいですか」と尋ねると「乗っていくに決まってるしょ」と雑に返されたり、救急隊が傷病者へ「頭は打った?」と尋ねてきたので「突然転んだのでどこを打ったのかよくわかりません」と答えると「頭を打ったかどうかも覚えてないの?」と冷たい口調で言われ、その後の担架への移動も「ドン」と雑に置かれたそうです。

この事例では高度な医療知識や技術は全く関係していません。相手の気持ちを汲み取る努力を少しするだけで良かったのです。災害種別や部隊、相手を問わず「人を知る」ことについて重点を置くべきです。解剖生理や病理だけではなく、どんな場面でも相手の性格や気持ちを知る努力が必要です。その積み重ねがいずれトラブル防止の一環ともなり、よりよい消防活動へと繋がるのではないでしょうか。

そのためには普段の職務で癖付ける必要があります。ささいな会話から何を考えているのか、自分の発言や行動に対し何を感じているかを表情の変化や言動の違いで読み取るようにしましょう。そうすることで不快にさせることはなく、過激な言動も減り、的確なコミュニケーションが取れます。

また、消防職はチームです。知識・技術が突出した人間でも、自分のことだけを考え、他人は駒と考える傲慢な人間には誰もついていきません。ついてくる隊員がいなければチームが機能せず、傷病者にとって不利益となります。そもそも最も身近な隊員のことを知ろうとしない人がどうやって現場で初めて出会う人を知ることができますか?そこに気づけるかどうかが非常に大切だと私は考えます。

私たちが相手にしているのは「人」です。「人」を知り、知ったことから次の行動を考える、このことを常に意識していかなければなりません。その結果がトラブルの防止となり、技術や知識の習得、新しいことへの挑戦と多岐に渡る充実した道に繋がるのではないでしょうか。今一度原点に立ち返りましょう。


【プロフィール】


 青木 信也 (あおき しんや) S60.10.31生 (35歳)
 所属 : 北海道 留萌消防組合 留萌消防署庶務係
 拝命 : 平成19年 4月 1日
 階級 : 消防士長
 出身 : 北海道苫前郡苫前町
 趣味 : 野球、ゴルフ、ロードバイク、DIY

 

主張
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