220917最新救急事情(226-1)新型コロナ患者の心停止は予後が悪い

 
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最新救急事情

プレホスピタルケア 2022/02/20日号

最新救急事情(226-1)

 
 

目次

はじめに

新型コロナの2年間で多くのことがわかってきた。今回は病院外心停止についてまとめてみる。

病院外心停止

 
はじめに、病院外心停止と新型コロナの関係を論じたメタアナリシス論文を紹介する1)。2021年5月までに発表された論文の中から、新型コロナ感染の有無で予後を調べたものである。第一の評価項目は生存退院もしくは入院30日後に生存していること、第二の評価項目は自己心拍再開、卒倒時の目撃のあるなし、卒倒が自宅かどうか、バイスタンダー心肺蘇生の有無、放電可能な心電図か、救急隊が到着するまでの時間である。
分析対象となったのは10の論文。病院外心停止は7545例あって、そのうちの18%, 1341例が新型コロナに感染していた。新型コロナ感染患者は非感染患者と比較して生存率が低下し(感染1.9%:非感染6.5%)、自己心拍再開率が低下し(22%:27%)した。救急車の到着は遅延し(15分:13分)、除細動不可の心電図波形が多かった(93%:82%)。新型コロナに感染していると自宅で心停止になる割合が増え(94%:89%)たが、目撃のある心停止の割合(55%:56%)とバイスタンダー心肺蘇生を受ける割合(53%:51%)には有意差は見られなかった。
 
メタアナリシスによる同様の解析はもう1編発表されている2)。ここでも感染患者は死亡率が高く、自己心拍再開率が低く、救急車が到着する時間が長く、除細動できない心電図波形の割合が高いとしている。加えてコロナによって気管挿管が減り上気道確保デバイスが選ばれるようになった。コロナ前の時期では上気道確保デバイスを使用する割合が12%であったのに対し、コロナ流行後では37%へ上昇していた。
 
新型コロナに感染している場合は肺炎を起こしている可能性がある。単なる心筋梗塞や致死的不整脈の発生に加えて肺炎があれば、蘇生率は低くなるのは当然だろう。
 

病院内心停止

 
次に病院内心停止も見てみよう。ニューヨークの病院でコロナ前後での死亡率を比較したものである3)。蘇生拒否患者を除くと、コロナ後としては2020年3月1日から2020年6月30日までの病院内心停止患者450例、コロナ前として2019年1年間の病院内熾天使患者334例とした。この時点で2020年の4ヶ月の心停止患者数が2019年の1年間の心停止数より多いことに驚く。このコロナ前後で平均年齢はいずれも66歳であった。またコロナ前では白人が15%いたのだが、コロナ後は7%と有意に減少した。
心停止発見時、除細動可能心電図だったのはコロナ前17%コロナ後7%で減少した。コロナ前に比べてコロナ後では高いBMI患者の割合が高くなり(前28%:後31%)が高くなり、糖尿病の割合が増え(38%:58%)、冠動脈疾患患者の割合が減った(25%:22%)。心停止後に蘇生し退院できた割合は減少した(1.5%:7%)。
 

心筋梗塞患者

 
同様の結果は心筋梗塞患者を対象とした報告にも見られる。アメリカからの報告である4)。病院外で発生したST上昇型心筋梗塞患者に対する新型コロナ感染の影響を調べたものである。評価点は病院内死亡率とした。対象患者は、病院外発症として370施設で経験したST上昇型心筋梗塞7万6434例。このうち、患者背景を同じくするために感染例551例と非感染例2755例を選んだ。これに対し病院内発症として353施設、4015例のうち感染例252例、非感染例756例を選んだ。病院外心停止では新型コロナ感染の有無で心臓カテーテル実施率に差はなかったが、病院内発症では感染群で心臓カテーテル実施率が有意に低かった。病院外発症の心筋梗塞では死亡率は、感染患者では15.2%、非感染患者では11.2%で有意差あり。病院内発症患者ではその差はさらに開いて感染患者では78.5%, 非感染患者では46.1%であった。
病院内発症の心筋梗塞で、感染患者で心臓カテーテルの実施率が低いのは、それだけ全身状態が悪かったためだろう。
 

パンデミック3年目

 
2020年、2021年と新型コロナに振り回されてきた。過去の大きなパンデミックは2年から3年で終息しているので、もう新型コロナも落ち着くのかと思っていたら、この原稿を書いている現在、世界は新型コロナウイルスの新しい変異株であるオミクロン株の対応に追われている。南アフリカではすでにデルタ株からオミクロン株に感染株が置き換わっている。オミクロン株はスパイク蛋白の変異が従来のものと比べて30程度あり、これが感染のしやすさに繋がっているようだ。ただ重症化は少ないとの報告もある。ワクチンの効果も含めて、この原稿が世に出る頃には多くのことがわかっているだろう。

 

文献

 
1)Eur J Emerg Med 2021 Dec 1;28(6):423-31
2)Scquizzato T: Prehosp Emerg Care 2021 Sep 14; 1-12, Online adenad
3)Healthcare (Basel) 2021 Oct;9(10):1315
4)JAMA 2021 Nov 16;326(19):1940-52

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