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220921最新救急事情(226-2)何でも比較のメタアナリシス論文

プレホスピタルケア 2022/02/20日号

最新救急事情(226-2)

 
 

はじめに

この連載で何度も取り上げているメタアナリシス論文。過去の論文を集めて融合させ、一つの結論を導くものである。さまざまな論文が出ているので、新しいものから何篇か紹介したい。

燕麦は肥満に有効

 
燕麦(えんばく)はオーツ麦とも呼ばれ、コレステロールなどの血中脂質を下げるため健康食品として食べられている。もっとも燕麦は馬の主食であり、私の小さい頃には家の周りで栽培されていた。猫好きの人なら「猫草」として売られている長い紡錘形のタネが燕麦である。
 
論文では燕麦が心血管疾患に与える影響を調べている1)。対象となった論文は59編ですべてランダム割付されている。患者の対象は高コレステロール血症を持つ肥満患者。燕麦食品摂取の有無で肥満に関する検査値がどう変化するか検討した。その結果、総コレステロール値・LDLコレステロール値・血糖値・BMI・体重・腹囲は全て低下した。
 
日本でも燕麦は健康補助食品として入手できる。肥満があって心血管系に不安を持つ方はメニューに加えてはいかがだろう。

 

唐辛子は死亡率を下げる

 
燕麦の次は唐辛子。たまにテレビで唐辛子で真っ赤になった食品を食べるシーンが出てくるが、あんな辛いものが体にいいわけないと思う。
 
唐辛子と死亡率を関連づける論文は、筆者2)によると調べられただけで4729編もあるらしい。私と同じこと考えている人がたくさんいるのだ。結果として、唐辛子をたくさん食べる人は食べない人より死亡率が0.87倍となり、死亡率は有意に下がる。心血管系の死亡率は0.83倍、癌による死亡率は0.92倍でこれも有意に下がっている。脳血管障害で死亡する率は0.78倍で低下するのだが有意差は見られていない。
 
私の小さい頃には「刺激物を食べると癌になる」と聞かされたがそれが嘘なのはわかった。でもやっぱりあんな辛いものが体にいいとは思えない。取り上げた研究は唐辛子の摂取量にばらつきが大きく、さらなる研究が必要と筆者らも述べている。

脊柱管狭窄症の治療

 
脊柱管狭窄症とは、主に腰椎の、脊髄(馬尾)が入っている管が狭まって、歩くと腰や足に痛みと痺れが来る病気である。加齢による骨の変形が基礎にあるので、慢性に経過し完全治癒は難しい。治療としてはリハビリ、手術、鎮痛薬などの局所注射、内服薬治療が行われる。それら治療法の優劣を検討した論文が出ている3)。対象となった論文は85編。結果として、リハビリは何もしないか偽薬投与に比べて痛みを優位に低下させる。しかしそのほかの治療法、手術・局所注射・内服薬は、何もしないか偽薬投与に比べて痛みの優位な現象は見られなかった。
薬もダメ、注射もダメ、手術もダメ、自分の努力が唯一痛みを軽減する方法だと結論づけているが本当だろうか。論文に書かれているからといって何でも信用することはないだろう。

新型コロナ患者にヘパリンを投与する

 
新型コロナは血管壁を冒し血栓を形成するため、脳や心臓に重大なダメージをもたらすことがある。患者にあらかじめ抗凝固薬であるヘパリンを投与すればダメージは防げるはずだ。
 
新しい病気なので、筆者ら4)が入手できたランダム割付論文は6編だけである。中等症患者の合計2854例を対象とした3編と重症患者の合計1191例を対象とした3編。中等度患者ではヘパリンを投与してもしなくても全死亡率に有意差はなかったが、新型コロナに関連した死亡率と人工呼吸導入率は有意に低下し、血栓症の発生とそれに伴う死亡率も有意に減少した。人工呼吸や透析などの臓器を補助する治療を行わない期間は有意に増加した。ヘパリン投与に伴う出血傾向は見られていない。これに対して重症患者ではヘパリン投与による改善は見られなかった。重症者の場合、すでに血管はボロボロになっていて、ヘパリンの効果は見られなかったのだろう。

高所からの転落

 
最後にメタアナリシスとは関係ない論文を一つ紹介する。去年の年末に神田沙也加さんが札幌市のホテルで死亡した。ホテルの高層階から飛び降りたとのことである。若い時はソロ歌手としてデビューしたものの売れず、その後はミュージカル歌手として活躍していた。その才能を自分で散らすのは誠にもったいないと思うのだが、本人の悩みは本人にしかわからないのだろう。
 
高所からの転落で助かる人はほとんどいない。台湾から、事故を含む高所転落の症例をまとめた報告が出ている5)。対象は2010年1月から2020年9月までに経験した症例で、2階以上の高さ(3.6m)から転落した371例。このうち発見から病院に到着する間に心停止を確認した101例では生存者はわずか2例(死亡率98%)で、それも神経学的に重大な後遺症を残していた。心停止を起こさなかった症例は270例。こちらの死亡率は11%であった。墜落の高さと病院前心停止の割合は高さが6メートルを超えると有意に相関していた。また病院外心停止を起こさなかった例については、外傷重症度スコアが生存率に有意に相関していた。

文献

 
1)Llanaj E: Eur J Nutr 2022 Jan 3, Online ahead
2)Am J Prev Cardiol 2021 Dec 8; 9:100301
3)Physiother Theory Pract 2022 Jan 2;1-46
4)Res Pract Thromb Haemost 2021 Dec 17;5(8):e12638
5)Pei-Hsiu Wang; Injury 2021 Dec 23; online ahead

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